シーン11 置屋・夜
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
静の頬の傷に、由太が薬を塗っている。
由太:
「痛い?」
静:
「少し」
由太:
「我慢して」
静:
「誰のせいで帰りが遅くなったと思っている」
由太:
「俺?」
静:
「お前だ」
由太:
「助けたのに」
静:
「あれだけ大騒ぎにすれば、後始末が必要になる」
由太:
「ごめん」
静:
「……」
由太:
「怒ってる?」
静:
「怒っている」
由太:
「すみません」
静:
「だが」
由太:
「?」
静:
「嬉しかった」
由太の手が止まる。
静:
「薬」
由太:
「あ」
続ける。
静:
「私は、誰かが助けに来るとは思っていなかった」
由太:
「なんで」
静:
「間者とはそういうものだ」
由太:
「嫌な仕事だね」
静:
「そうだな」
由太:
「辞めれば?」
静:
「簡単に言うな」
由太:
「じゃあ」
静:
「何だ」
由太:
「次に捕まったら、また助ける」
静:
「やめろ」
由太:
「なんで」
静:
「今回以上の騒ぎになる」
由太:
「じゃあ捕まらないでよ」
静:
「努力する」
由太:
「約束」
静:
「……ああ」
由太は薬を置く。
静:
「由太」
由太:
「なに」
静:
「今日は、よくやった」
由太:
「……」
静:
「どうした」
由太:
「初めてちゃんと褒められた気がする」
静:
「そうか?」
由太:
「もっと言って」
静:
「調子に乗るな」
由太:
「じゃあ小遣い増やして」
静:
「減らす」
由太:
「なんで!」
静:
「新選組に団子を奢る約束をしたそうだな」
由太:
「誰から聞いたの!?」
静:
「佐々木だ」
由太:
「いつの間に!」
静:
「情報とはそうやって集めるものだ」
由太:
「俺の悪いところだけ覚えてない?」
静:
「飼い主はヒモをよく見るものだ」
由太:
「それ、俺が言ったやつ!」
静が笑う。




