シーン9 混乱の中
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
佐々木源吾
新選組の隊員。
武市半平太(35)
土佐藩士。京で活動する尊王攘夷派の中心人物の一人。
土佐藩士、新選組隊員
敵方の男が逃げようとする。
武市の部下が追う。
武市:
「待て!」
男:
「武市! 貴様!」
刀を抜く。
由太は静の前に出る。
静:
「由太!」
由太:
「……」
震えている。
男:
「どけ!」
由太:
「嫌だ」
静:
「由太、下がれ!」
由太:
「嫌だ」
男:
「斬るぞ!」
由太:
「怖いよ!」
男:
「ならどけ!」
由太:
「でも!」
声を張る。
由太:
「静さんの前からはどかない!」
静が息を呑む。
男が刀を振り上げる。
その瞬間、静が床に落ちていた刀を拾い、男の太刀を受ける。
静:
「馬鹿! 本当に死ぬぞ!」
由太:
「だから怖いって言ったじゃん!」
武市たちが男を取り押さえる。
静は由太を引き寄せる。
静:
「馬鹿者!」
由太:
「痛い!」
静:
「死ぬところだった!」
由太:
「うん」
静:
「なぜ!」
由太:
「分かんない!」
静:
「何だそれは!」
由太:
「身体が勝手に動いたんだよ!」
静:
「それで死んだらどうする!」
由太:
「静さんだって同じでしょ!」
静が黙る。
由太:
「いつも勝手に危ないことして!」
静:
「それは仕事だ!」
由太:
「俺だって今日は仕事!」
静:
「何の!」
由太:
「飼い主を助けるヒモの仕事!」
静:
「そんな仕事があるか!」
由太:
「今日からある!」
静は由太を睨む。
やがて。
静:
「……馬鹿」
由太:
「知ってる」




