シーン3 茶屋
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
佐々木源吾
新選組の隊員。
由太が茶屋へ入る。
そこには新選組の佐々木源吾がいる。
源吾:
「お」
由太:
「佐々木さん」
源吾:
「今日は団子か?」
由太:
「違う」
源吾:
「珍しいな」
由太:
「聞きたいことがある」
源吾:
「何だ」
由太:
「昨日、女の間者が捕まった?」
源吾の表情が変わる。
源吾:
「……なぜそんなことを聞く」
由太:
「知り合いかもしれない」
源吾:
「名前は」
由太:
「神無月静」
源吾:
「……」
由太:
「知ってる?」
源吾:
「知らん」
由太:
「嘘」
源吾:
「なぜそう思う」
由太:
「今、一瞬だけ目を逸らした」
源吾:
「……」
由太:
「知ってるんだね」
源吾:
「お前、本当に厄介だな」
由太:
「どこにいる?」
源吾:
「言えん」
由太:
「新選組が捕まえたの?」
源吾:
「違う」
由太:
「じゃあ誰?」
源吾:
「言えん」
由太:
「なんで」
源吾:
「お前を巻き込みたくない」
由太:
「もう巻き込まれてる」
源吾:
「由太」
由太:
「静さんが俺を拾った」
源吾:
「知ってる」
由太:
「飯食わせてくれた」
源吾:
「それも聞いた」
由太:
「家に置いてくれた」
源吾:
「……」
由太:
「俺さ」
源吾:
「何だ」
由太:
「ずっと誰かに養ってもらえれば、それでいいと思ってた」
源吾:
「お前らしいな」
由太:
「でも違った」
源吾:
「何が」
由太:
「静さんじゃなきゃ駄目みたい」
源吾が少し目を細める。
由太:
「だから教えて」
長い沈黙。
源吾:
「……新選組ではない」
由太:
「うん」
源吾:
「会津でもない」
由太:
「うん」
源吾:
「土佐だ」
由太:
「土佐?」
源吾:
「土佐藩の中でも、武市半平太を嫌う連中がいる」
由太:
「……」
源吾:
「静は武市の周辺に出入りしている。だから狙われたんだろう」
由太:
「どこにいる?」
源吾:
「そこまでは知らん」
由太:
「本当に?」
源吾:
「ああ」
由太は立ち上がる。
源吾:
「どこへ行く」
由太:
「土佐の人に聞く」
源吾:
「馬鹿!」
由太:
「なんで」
源吾:
「敵地へ一人で行く気か!」
由太:
「敵じゃないよ」
源吾:
「何?」
由太:
「俺、土佐の人と喧嘩したことないもん」
源吾:
「そういう意味ではない!」
由太:
「俺から見たら、まだ敵じゃない」
源吾は呆れる。
由太:
「佐々木さん」
源吾:
「何だ」
由太:
「ありがとう」
源吾:
「礼を言われる筋合いはない」
由太:
「じゃあ団子今度奢る」
源吾:
「逆だろ」
由太:
「今日は金ない」
源吾:
「やっぱりヒモじゃないか」




