シーン3 火災区域
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
町人
由太は人の流れに逆らって走っていた。
桶を運ぶ者。
泣く子供。
家財道具を抱える老人。
由太:
「静さん!」
当然、返事などない。
由太:
「神無月静さーん!」
町人:
「誰だそれ!」
由太:
「俺の飼い主!」
町人:
「今それどころじゃねぇ!」
由太:
「俺にはそれどころなんだよ!」
その時。
子供:
「お母ちゃーん!」
小さな男の子が道の端で泣いている。
由太は通り過ぎ――。
止まる。
由太:
「……もう」
戻る。
由太:
「おい、どうした」
子供:
「お母ちゃんがいない……」
由太:
「どこではぐれた?」
子供:
「あっち……」
由太が火の方を見る。
由太:
「あっちは無理」
子供:
「お母ちゃーん!」
由太:
「泣くなって」
子供:
「うわああん!」
由太:
「分かった分かった!」
抱き上げる。
由太:
「とりあえず安全なところ行くぞ」
子供:
「お母ちゃん……」
由太:
「探すから」
由太は走り出す。
由太:
>こういうのが、いけない。
>俺は静さんを探しているだけなのに。
>困ってる奴を見ると、どうしても放っておけない。
>たぶん――。
>それが俺の一番面倒なところなんだと思う。




