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シーン3 池田屋の前で
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
男・桂小五郎(31)
長州藩士。京で活動する尊王攘夷派の中心人物の一人。
夜。
桂が池田屋の近くにたどり着いたときには、すでに惨劇は終わっていた。
遠くに、抜き身の刀を携えた新選組の影。
血の匂い。負傷者の呻き。
炎に照らされる、京の夜。
桂は、暗がりに身を潜めたまま、屋根越しにその光景を見つめた。
桂:
「……間に合わなかった、か」
ふと、鴨川べりで吠えていた犬を思い出す。
豆腐屋の冷奴の涼しさを思い出す。
味噌汁をこぼして慌てる店員と、それを笑っていた少年の顔を思い出す。
桂は、静かに息を吐いた。
桂:
「いや——
“間に合わなかった”のではないな」
自嘲するように笑みを浮かべる。
桂:
「私は、”ほんの少し”に、救われたのかもしれん」
誰にも聞こえない声でそうつぶやき、
桂は闇へと姿を消した。




