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シーン1 池田屋事件から数日後
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
お光(26)
静と同い年の芸妓。明るく世話好きで噂好き。由太を弟分として可愛がっている。
京の町は、まだ血の匂いを纏っていた。
新選組が池田屋で長州浪士たちを斬った夜から、
花街の噂話は、もっぱらその一件で持ちきりだ。
置屋の座敷で、お光が扇子をぱたぱたさせながら言った。
お光:
「でさ、結局さぁ、桂先生はなんで池田屋に来なかったわけ?
怖じ気づいた、とか言う人もいるんだよ?」
由太:
「ひどくない? あの人、一応“長州の頭脳”なんでしょ?」
お光:
「だからこそ、“計算高く逃げた”って説もあるのよ」
畳にごろりと寝転がりながら、由太はあの日、自分が歩いていたルートをぼんやりと思い出していた。
由太:
>……あの日、俺、何してたっけな。
静は少し離れたところで黙って茶を飲んでいる。
由太は気付かないふりをしながら、記憶をたぐり寄せた。




