↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/96

シーン9 置屋・翌朝

(登場人物)

青井由太(19)

江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。


神無月静(26)

由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。


由太が朝食を作っている。


静:

「由太」


由太:

「なに?」


静:

「今日も町へ行け」


由太:

「買い物?」


静:

「ああ」


由太:

「小遣いは?」


静:

「昨日の倍」


由太が振り返る。


由太:

「そんなに!?」


静:

「ただし条件がある」


由太:

「何?」


静:

「危険を感じたら、すぐ逃げろ」


由太:

「言われなくても逃げるよ」


静:

「誰かに捕まりそうになっても逃げろ」


由太:

「当然」


静:

「斬り合いを見たら?」


由太:

「反対方向へ全力疾走」


静:

「よし」


由太:

「俺、こう見えて生き延びる才能には自信あるから」


静:

「……それだけは信用できそうだ」


由太が膳を置く。


由太:

「じゃ、食べて」


静:

「いただく」


味噌汁を一口。


静:

「……昨日より薄いな」


由太:

「昨日、水飲んでたから」


静:

「だから、それをなぜ覚えている」


由太:

「飼い主の好みを覚えるのはヒモの基本だよ」


静は由太を見る。


静:

「なるほど」


由太:

「何?」


静:

「お前の間者としての才能の正体が分かった」


由太:

「え?」


静:

「お前は人をよく見ている」


由太:

「だって、人の顔色読めないヒモなんて長続きしないじゃん」


静:

「……やはりヒモなのだな」


由太:

「立派なヒモ男児になります」


静:

「立派とヒモ男児は両立するのか?」


由太:

「するよ」


静:

「そうか」


由太:

「たぶん」


二人が笑う。


由太(モノローグ):


>この時の俺は、まだ知らなかった。

>町で聞いた話を静さんに伝えているだけのつもりだった。

>困っている人がいたら助ける。

>危ないと知ったら教える。

>それだけ。

>だけど――。

>のちの世で幕末って言われる時代では、

>「それだけ」が、とんでもないことになるらしい。


場面転換。


京の町。


新選組隊士たちが走る。


その横を長州藩士が何食わぬ顔で通り過ぎる。


さらにその横を――。


由太が大根を抱えて歩いている。


由太:

「あ、団子屋」


足を止める。


由太:

「一本くらいならいいよね」


その由太の背後で、一人の浪士が追っ手をかわして路地へ消える。


由太はまったく気付かない。


由太:

「おばちゃん、一本ちょうだい!」


ナレーション:


>後世の歴史書に、青井由太の名は残らない。

>だがこの頃から、京の歴史は――

>

>彼の周りで、ほんの少しずつズレ始めていた。

第2話、お読みいただきありがとうございます。

感想若しくは評価をいただけると光栄です。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。