シーン6 路地・夕方
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
桂小五郎(31)
長州藩士。京で活動する尊王攘夷派の中心人物の一人。
由太が買い物帰りに歩いている。
そこへ一人の男が現れる。
桂小五郎。
桂:
「少年」
由太:
「あ」
桂:
「久しいな」
由太:
「犬の人」
桂:
「その覚え方はやめてくれ」
由太:
「桂さんだったんですね」
桂の表情が変わる。
桂:
「……誰から聞いた」
由太:
「町中」
桂:
「私の名を知っていて、驚かないのか?」
由太:
「別に」
桂:
「新選組が私を探していることも?」
由太:
「知ってますよ」
桂:
「……!」
由太:
「四条と三条の宿は見張られてるみたいですよ。あと新選組は桂さんの顔をちゃんと知らないみたい。でも、この辺にいることはバレてる」
桂は黙る。
由太:
「あ、それから――」
桂:
「まだあるのか」
由太:
「昨日まで使ってた宿、行かない方がいいですよ」
桂:
「なぜだ」
由太:
「茶屋のお妙さんが『長州の人が急に来なくなった』って言ってたから。たぶん誰かが見張ってる」
桂:
「……」
由太:
「じゃ、俺、豆腐買わないといけないんで」
桂:
「待て」
由太:
「?」
桂:
「君は……何者だ?」
由太:
「ヒモです」
桂:
「……」
由太:
「正確には、ヒモ男児」
桂:
「意味が分からん」
由太:
「俺も最近、自分が何やってるのかよく分からなくなってきました」
由太は去っていく。
桂はその背中を見つめる。
桂:
「神無月静……。とんでもない者を拾ったな」




