シーン5 京の町 翌日
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
京都の住人
由太がいつものように歩いている。
由太:
>ということで、俺は静さんから妙な仕事を頼まれた。
>ただし、俺としては仕事だと思っていない。
>買い物して。
>女の人と喋って。
>団子を食べて。
>帰って静さんに今日あったことを話す。
>それで小遣いが増える。
>……これ、かなり良い仕事じゃない?
魚屋。
女将:
「由太ちゃん、新選組が今朝、四条を走ってたよ」
由太:
「何かあったの?」
女将:
「知らないけど、浪人探してるんじゃない?」
茶屋。
お妙:
「長州の人たち、最近あっちの宿を使わなくなったんだって」
由太:
「なんで?」
お妙:
「新選組が張ってるからよ」
履物屋。
主人:
「昨日、薩摩の侍が十人分の草履を買ってったぞ」
由太:
「十人?」
主人:
「何かあるんじゃねえか」
子供:
「由太兄ちゃん!」
由太:
「どうした?」
子供:
「昨日、変な侍が裏の空き家に入ってった!」
由太:
「どんな人?」
子供:
「眉毛が太かった!」
由太:
「それだけじゃ分からないよ」
由太は笑いながら頭を撫でる。
その様子を、通りの向こうから静が見ている。
静:
>警戒されていない。
>いや――。
>そもそも、誰もこいつを「情報を集める者」だと思っていない。
由太は八百屋のお梅から大根を一本もらう。
お梅:
「静さんによろしくね!」
由太:
「ありがと!」
静:
>武器を持たない。
>政治を語らない。
>志を説かない。
>女に養われ、飯を作って暮らしている若者。
>だからこそ――誰も警戒しない。
静の目が鋭くなる。
静:
>天然の間者。
>……厄介な才能だ。




