第九話 修行の道
オガミがユウガに修行をつける際、黒い服とただの剣を渡し、ある条件を出した。それは
「儂は今からお前さんに剣を教えるが、まだ夜明けは使うな、あれを使えば簡単になってしまう。そして、今渡したただの剣で儂から一本取れ。」
「わかったぜ!師匠!それと、この黒い服は?」
「この服は、昔の儂が使ってた服と同じ服だ。」
「なるほど、俺が今まで向こうの世界の普通の服だったからくれたのか。」
「とりあえず、最初は剣の素振りから始めろ。」
「わかった!」
ユウガが素振りを始めると、
「まて!」
オガミが注意しだした。
「ただ無闇に振るだけじゃいかん。剣はきれいに、一太刀一太刀しっかり意識して振れ。」
「って言われても俺、剣使い始めてまだ四日目くらいなんだよ!」
「ふむ、そうか。だが、お前さんは半年後に魔王信仰軍の団長を一人倒すのだろ?」
「なんでそれを!」
「嬢ちゃんたちが言ってたからの。あいつらは魔王の封印を解くために動いとる。お前が全員倒して、止めることだな。」
「あたりまえだ!」
ユウガは威勢よく叫んだ。
「ふむ、威勢だけはいいな。」
剣の素振りが終わったユウガはオガミと共に家に戻っていた。
「お疲れ、ユウガ。」
「おう、エリスもな。エリスとエージも魔法の練習してるんだろ?」
「はい、私たちは上級魔法の練習と、魔法の出力を上げる修行を行なってます。」
「そうか、エージもエリスも頑張れよ。」
「はい。」
その時、外からオガミがユウガを呼んだ。
「師匠、ここから見る月は綺麗だな。」
「そうじゃな、ユウガよ、お前は何のために戦うのだ?」
「俺は…」
ユウガは異世界に来た四日間のことを振り返った。
エリスとゴブリンキングを倒した時のこと、初めてのダンジョンで魔王信仰軍の軍団長と戦った時のこと。
「俺は、強くなって誰かの役に立ちたい。人を助けたい。」
「そうか、ユウガよお前達を見てると昔の俺、いや、俺達を思い出す。」
「俺たちって?」
「話しただろ?魔王を封印した時のこと。」
「ああ。」
「その時の仲間だ。三人いたんだがな、みんな魔王との戦いで死んでしまった。」
「そうか…」
「俺は、その時のことを後悔していた。」
オガミは、昔のことを思い出し一人称が変わっていた。
「師匠…」
「だから、俺はお前を鍛える!俺は、お前に託す!お前なら魔王が復活したとしても倒せると信じておるぞ!ユウガよ。」
「ああ!師匠、俺は、師匠を超えて、魔王も超える!」
「儂の修行についてこれるな?ユウガ。」
「ああ!もちろんだ!」
そうして、オガミの優しく、厳しい修行が始まった。
「ユウガよ、あそこにいる魔物を斬ってこい。」
「分かった!」
ユウガは十匹ほどいるゴブリンたちに斬りかかった。
「火炎斬!」
「雷撃斬!たおしたぞ!師匠。」
「うむ、お前には剣の技を少し教えてやろう。今のお前はただ魔法を纏って斬ってるだけだからな。」
「わかった!」
「まずは斬撃を飛ばせるようにならなくてわな。」
「斬撃?」
「そうだ、遠くにいる敵を簡単に斬れるようにな。よーく見てろよ。あそこに飛んでる鳥形の魔物がおるじゃろう。あれを斬る。炎雷遠斬!」
オガミなそう唱え、何もないところを斬ると炎と雷の斬撃を飛ばした。
「マジかよ。斬撃って飛ばせるのかよ。アニメだけかと思ってたぜ。」
「まあ、ここは異世界だからな、似たようなもんだろ。」
「てか師匠、」
「なんだ?」
「師匠の炎は俺のと違って青いんだが、俺もできるのか?」
「できるとも、だが、今は無理だ。お前さんはまだ慣れてないからな。魔法を使った剣に。」
「そうか。」
「とりあえずやってみろ。」
「おう!」
そう自信満々に答えたユウガだったが、
「炎雷遠斬!ってあれ?」
「少し飛び出たぐらいだな。」
「なんでだよ!くそー!」
「まあ、最初はそんなもんだろ。」
それから何回も繰り返すうちにユウガは飛距離は短いものの斬撃を飛ばせるようになっていた。
「炎雷遠斬!よしっ!師匠ほどは飛ばねぇが斬撃は出せるようになったぜ!」
「教えた初日にできるようになったんだから大したものだな。」
ユウガは嬉しそうに笑った。
そうして、何日もの間剣の修行を続けたユウガだったが、
「クソ!師匠から一本も取れねえどころか俺が傷だらけじゃなぇか!」
その言葉を聞いたオガミは笑いながら答えた。
「当たり前だろ。今の儂は魔王と戦った時よりも強いんだからな。」
それを聞いたユウガが驚きながら聞いた。
「おいおい!おかしいだろ!何で歳を取ったはずなのに強くなってるだよ!」
「誰が年寄りだ!それに、その時よりは強いだけで全盛期は過ぎとるわ!」
「全盛期どんだけ化け物なんだよ…」
ユウガはオガミの実力に少し引いていた。
―「クソ!このままじゃ半年以内に一本取れる気がしねぇ!」
そう考えたユウガはオガミに提案した。
「なあ師匠。」
「なんだ。」
「俺のユニークスキルって制限付きのパワーアップなんだろ?」
「そうだが。」
「先に俺のユニークスキル鍛えてくれない?じゃないと師匠相手に一本取れる気がしねぇ。」
オガミは少し悩んだが答えた。
「まあいいだろ。お前が今倒すべき敵は儂や魔王じゃなくてただの軍団長だからな。それとユウガ、ただの軍団長に勝っても調子に乗るんじゃないぞ。お前はどんどん強くなれ。」
「分かってるよ。それと、ただのって軍団長って軍団長を小物扱いかよ。」
「まあ実際、今は分からんが全盛期の儂だったら軍団長を相手にしても三十秒程あれば倒せるだろ。」
その言葉に嘘偽りは無かった。
「師匠やっぱり化け物だろ。」
「っ!誰が魔物だ!師匠相手に!飯抜きにするぞ!」
「魔物じゃねぇよ!化け物って言ったんだよ!それと飯抜きは倒れるからやめてくれ!」
修行している間に師匠オガミと弟子ユウガの距離はどんどん近くなっていったのであった。




