第二十話 ガルディア・ファング
ガルディア・ファングは一つ後悔していることがあった。それは兄弟喧嘩の原因にもなってしまったことだ。
そう、それは六年前、まだガルディア達兄弟が仲良く過ごしていた頃だ。
いつもみたいに三人で遊んでいたガルディア達に突如として現れた存在。
そう、魔王信仰軍だ。六年前、魔王信仰軍が獣族の里なやってきてしまっていたのだ。そこには、軍団長も来ていた。
「久しぶりだなぁ、ここも。」
その軍団長に最初に話しかけたのはガディルだ。
「あなたは誰ですか?俺たちと同じライオンの獣族のようですが。」
「あぁ?俺は魔王信仰軍の八大軍団長の『獣王』ガルレオン・ファングだ。」
軍団長の家名はガルディア達と同じファングだったのだ。
「俺達も家名がファングって言うんです。これは偶然でしょうか?」
「あぁ?」
それを聞いたガルレオンはとてつもない速度でガディルを殺しにかかっていた。
だが、殺されなかった。なぜなら
「やっと出てきたなぁ!クソ兄貴!」
ガディルやガルディアたちの実の父であり族長であるガーラがガルレオンの拳を受け止めていたからだ。
「お前達は母さんの所へ!急げ!」
「は、はい!」
ガルディアたちは父に言われた通り、母の元へ向かった。幸い、ガルディア達の家にまだ魔王信仰軍は来ていなかった。
「ガルディア、ガルザル、ガディル!無事だったのね!さあ、すぐに避難しましょう!お父さんたちが魔王信仰軍を追い払ってくれるまで!」
「はい!」
三人は同時に返事をした。
その時、
いきなり家の扉が開けられた。そう、魔王信仰軍の団員たちが家の中に侵入してしまったのだ。それを見たガルディアは隠れてしまった。
兄二人が母を守ろうと剣をとった。
だが、ガルディアは隠れてしまったのだ。怖かったのだ。
仕方がないことだ。まだ六歳の子供にそんなことができるわけがない。
ガルディアが隠れてすぐ、戦いが始まってしまった。母は母自身の両親の形見である黄金の斧を二つ持ち弱いながらも、子供達を守ろうと戦った。
三人が戦っているのを隠れて見ていたガルディアのところに一人の魔王信仰軍の団員が近づき、剣を振りかぶった。もうだめだ。死ぬ。そう思った時死んだのはガルディアではなく、母だった。
「え…」
「母上!」
「母さん!」
ガディルとガルザルがすぐに他の団員を斬り伏せ、母の元へ走り出した。
母の意識がどんどん遠くなっていく。
自分のせいで母が死んでしまった。
そう絶望した時。
「ガルディア、ガルザル、ガディル、強く…生きるのよ。そしてね…ガルディア…今のことで絶対に自分を責めては…だめよ。これはね…お母さんが…したくてしたこと…だから。」
「ママ…」
その瞬間、自身の目の前で母が死んだ。
六歳の子供には受け入れることのできない事実だ。自身のせいで母が死んだ。そう思った時、
「おい!」
ガルザルが泣きながらガルディアに掴みかかっていた。
「何であの時隠れた!お前も一緒に戦えば!母さんは死ななかった!」
その時、ガディルが
「やめろ!母上が選んだことだ!それに!ガルディアはまだ六歳だ!戦えるわけがないだろう!」
「でも!」
ガルディアは絶対していた。自分のせいで母が死んだ。母は自分を責めるなと言った。でも、そんなことは無理だ。
その時、
「お前さえいなければ!お前さえ!」
ガルザルがガディルを振り払い、泣き叫ぶようにガルディアに掴みかかろうとする。
まさに地獄絵図だ。
その時、父が帰ってきた。
帰ってきた父は左目と右腕を失い体中血まみれだった。
「何が…あった…」
「父さん…」
「ぱぱ…」
「父上…」
ガルディアたちは事の経緯を話した。皆、ガルディアを責めることは無かった。ガルザルを除いて。
この一件からガルディアとガルザルは喧嘩ばかりするようになった。まるで、ガルザルはガルディアを母の仇だと思っているかのように責め続けた。
それが数年続いた。
だがある日、ガディルに諭されたのかガルザルが謝りに来たことがあった。
たが、ガルディアは謝りに来たガルザルに暴言を吐いてしまったのだ。
その日から、ガルザルは変わった。
今まではガルディアにだけ冷たく接していたが、誰に対しても嫌味を言ったり、喧嘩腰の姿勢で話しかけたりするようになってしまった。
この事をずっとガルディアは後悔し続けていた。
自分のせいで母が死に、兄が変わった。その事をずっと。
だから、もう二度とそんな悲劇を起こさないようにするためにガルディアは立ち上がった。負けると、そう思っていた。だが立ち上がった。
そして、その瞬間、ガルディアの体全体の毛が白く、いや、白銀に変化した。まだ制御ができていないのか、魔力がダダ漏れだ。
だが、それでいい。今は、白龍に勝てる力さえあればそれでいい。
次の瞬間、ガルディアは走り出した。白龍目掛けて。それに連動するかのごとく、ユウガも走り出した。そして、二人は並んだ。
白龍はそんな二人の攻撃に備え、ブレスの用意を始めた。
白龍がブレスを吐く。普通なら死ぬ。だが、彼らは違う。ユウガが自身の剣でブレスを、炎を斬った。ありえない。そう白龍が思った次の瞬間、白龍の正面にライオンの獣族の少年。
ガルディアが二つの、母の形見の黄金の斧を構えていた。いや、母の形見の斧は黄金ではなく、白銀のように輝いていた。
「白銀ブレイク!」
白龍にガルディアの渾身の一撃が叩き込まれた。白龍は決して倒れなかった。だが、
「見事。ガルディア・ファング、我はお主を認めよう。」
白龍はガルディアを認めたのだ。
その瞬間、ガルディアの全身の毛の色が元の色に戻る。
そして、ガルディアとユウガは二人並んで横たわる。
「ありがとな。ユウガ。」
二人は顔を見合わせ、笑った。最高の笑顔で。




