第十八話 兄弟喧嘩
ガルディアはいつも以上にキレていた。
当たり前だ。自分の嫌いな兄が自分の大好きな兄を殺そうとしたからだ。
昔は違った。ガルディアは自分の兄二人が大好きだった。そう、あの時までは。
そんな事を考えていたガルディアに対し、ガルザルは容赦なんてしない。
「どうした!ガルディア!」
ガルザルは容赦なくガルディアに向かって斬りかかる。
「くそっ!」
ガルディアはまだ覚悟が決まっていなかった。
確かに、今はガルザルのことが嫌いだ。
でも、ガルディアには確かにあるのだ。三人で仲良く遊んでいた記憶も。
だから、ガルディアは口では殺すだのなんだの戦いながらも言ってはいるが全力を出せていなかった。
「お前、本気出してないだろ。」
ガルディアが斧ごと蹴飛ばされる。
「クソが…」
ガルディアも覚悟を決めるべきだ。
頭では理解してる。だが、体が全力を出してくれないのだ。どれだけ本気で魔力を込めて身体能力を上げようと、やる気のない攻撃では意味がない。
周りでは自分の仲間たちが全力の力で、自分のために戦ってくれている。
仲間が自分を期待し、信じてくれている。
だがら、ガルディアはその期待を裏切らないために再び立ち上がる。
「どうした?やっとやる気になったか?ガルディア。」
次の瞬間、ガルザルの目の前にはガルディアの黄金の斧が飛んできていた。
それを頭でぎりぎりかわし、目をその黄金の斧に奪われる。
そして、もう一つのガルディアの黄金の斧により
「斧スキル!ゴールデンブレイク!」
ガルディアの渾身の一撃がガルザルの腹部に命中していた。
「ぐがっ!」
次の瞬間、ガルディアの手には投げたはずのもう一つの黄金の斧がかえってきていた。
そのままガルディアは
「斧スキル!ゴールデンバースト!」
二つの斧の連撃。それはガルザルにとって致命傷となった。死んでもおかしくはない。
「まだ!」
ガルザルが最後の力を振り絞りガルディアに向かって走り出す。だが、
「もうやめにしよう。ガルザル。」
ガルザルの肩に手をおく獣族の青年が後ろに立っていた。そう、それは紛れもない自分の実の兄、ガディルだった。
「ガディル兄さん…」
ガルザルの動きが止まる。
そして、そこに歩み寄ってきていた、獣族の少年が言った。
「ガルザル兄ちゃん。ごめん。」
「なっ…」
戸惑っているガルザルにガルディアが続ける。
「俺のせいで喧嘩になったのにずっとムキになってまともに話そうともしなくなった。ガルザル兄ちゃんが話そうとしてくれた時も、俺は兄ちゃんに暴言を吐いて相手にしなかった。ほんとにごめん。」
その言葉を聞いたガルザルの目には涙が浮かんでいた。六年間の長い兄弟喧嘩。それが今やっと終わる。そう思ったことと、ガルディアの本心を聞けたこと。それが本当に嬉しかったからだ。
「俺の方こそ、本当にごめん。ガルディアもガディル兄さんも。ガルディアとは六年間も喧嘩していたな、俺もあの時、何も悪くないお前を責めてしまった。お前も、怒って当然だ。そして、ガディル兄さん、さっきは兄さんの仲間を殺して、兄さんも殺そうとした。本当にごめん。謝って許されることじゃないってことは分かってる。でも、謝らせてくれ。」
そこにガディルは
「俺を殺そうとしたことは許すよ。でも、俺の仲間を殺したことは許されることじゃない。だからお前は、その罪を忘れることなく過ごせ。殺した人のことを常に想え。いいな?」
ガディルの声は優しかった。
「本当にごめん。」
ガルザルは泣いていた。子供のように鼻水も流しながら泣いていた。
「ガルザル兄ちゃん。俺達は兄弟なんだ。喧嘩しても、やり直していけば大丈夫だ。きっと。」
「ガルディア、ガディル兄さん…本当にごめんなぁ。」
ガルザルは泣きじゃくっていた。子供のように。
ガディルの仲間をザベル達と殺したことは決して許されることではない。それでも謝る。そう決めたのだ。
だがそこに
「待ってください!ガルザル!」
ザベルが怒りながら兄弟の中に割り込んできたのだ。
「なんでここで諦めるんですか!まだコイツらを殺せるだろ!」
そこにユウガが現れ、ザベルの顔面をおもいっきり殴り飛ばした。
「ぐがっ!」
「うるさいんだよ!クソザベル!今ガルディア達がいいところだろ!邪魔すんじゃねえ!」
「私をクソと呼ぶとは…許されると思ってるんですか!」
そこにエリス来て
「コールドドライ。」
ザベルを凍らせた。
「もう!うるさいんだから!少し寝て反省してよね!」
そこにユウガが親指を立て
「ナイスだ。エリス。」
そして、ガルディアたち兄弟は
「帰ったらまた、改めて話そう!ガルザル兄ちゃんもガディル兄ちゃんも!」
「ああ!もちろんだ!」
ガルザルがそう答え、ガディルが頷く。そして、
「ガルディア、試練がんばれよ。」
「頑張れ!ガルディア!」
兄二人の応援に対しガルディアは
「ああ、もちろんだ!」
そうして、ガルディア達の長い兄弟喧嘩が幕を閉じた。




