第十五話 獣神の試練
獣神の試練へ挑戦することが決まったユウガ達は夜、里の真ん中の広場へ集まっていた。
そこにはガルディアの兄弟であり、ライバルでもある。ガディルとガルザルとそのパーティーの仲間たちもいた。
「よぉガルディア。久しいな。」
ガルディアに話しかけてきたのは長男ガディルだった。
「兄ちゃん!久しぶりじゃねえか!元気だったっかよ!」
「ああ。元気だったよ。試練では敵同士だが、頑張れよ!」
「ああ!兄ちゃんもがんばってな!」
そこに次男ガルザルも来た。
「お前らはどうせ俺に負けるんだよ。」
「は?」
「そんなわけねぇだろ!クソ兄貴!」
どうやらガディルとガルディアの仲は良さそうだが、ガルザルはあまり仲が良さそうではない。ユウガがそう思っていたとき、ガルザルの後ろから見覚えのある顔がやって来た。
「おや?もしやあなたは昼の下級冒険者たちではありませんか?」
そう。後ろにいたのはザベルだった。そして、ザベルの横には旅の仲間らしき、いかにも悪そうな見た目をした魔法使い二人だった。一人は男性でもう一人は女性だ。
「おい、もう里を出たんじゃなかったのかよ。」
「いえいえ、そのつもりでしたよ?ですが、ガルザル殿がこのAランク冒険者である私の実力を評価してくれてこの試練に参加しようと思っただけですよ。」
「そうかよ。」
「何か不満でも?」
「いや、不満はねえ。お前と戦えるってことだろ?それなら逆にラッキーだと思ってるよ。」
「あなたが私に勝てるとでも?」
「勝てる。」
そう言い切ったユウガを見てザベルは
「まあいいでしょう。試練で自分の弱さを知るといいですよ。」
「ガディル兄さんもガルディアも分かっただろ?俺にはAランク冒険者とその仲間たちがついているんだ。負けるわけがないだろう。」
そこで、ガディルの後ろにいた三人の獣族の中でリーダーのような人が反論した。
「いや、勝つのはガディル様だ!Aランク冒険者などに我々が負けはしない!」
「確かにお前は獣族の中で強いと有名だが、Aランク冒険者には勝てないだろ。」
「何を…!」
ガルザルに反論をしようとした時、
「行くよ、ウルロ。」
「ですが…」
「試練で勝って見返せばいいじゃないか。」
「ですね。」
こうしてガディル達は広場の真ん中の方へ向かって行った。
「ガルディアが連れている人間たちはFランク冒険者たちか。雑魚じゃないか。勝つ気ある?」
「あるに決まってんだろうが!クソ兄貴が!」
そんなやりとりをし、ガルザルは広場の真ん中へ向かった。
「ガルディア、絶対勝とうな。」
ガルディアにそう言ったのはユウガだった。
「当たり前だ!クソ!」
「ガルディア、私たちも本気で頑張るから。」
「ガルディア、援護は任せてくださいね。」
ガルディアの仲間たちは心強かった。
そうして、試練の説明が始まった。ユウガ達はまだ、全員で戦いながら争うということしか知らない。
「これより、獣神の試練を始める!試練で勝つには、まず一つ!それぞれ戦い争え!二つ!ダンジョンのボスを討伐しろ!」
そこでユウガがガルディアに聞いた。
「ダンジョンのボスを倒せばいいのか?」
「ああ、だが、ただのダンジョンじゃないらしい。」
「三つ!パーティーメンバーの誰一人死ぬな!以上だ!」
説明を聞いたユウガ達はダンジョンへの入り口の三つのうちの一つに案内されていた。
「そういえばですけど…」
エージが話し始めた。
「どうした?」
「このダンジョンって何ランクのダンジョンなのでしょうか。」
「獣神の試練のダンジョンはだいたいAランクだと言われてやがる!」
ガルディアが答えた。
「えっ!僕たちFランクなんですよ?」
エージは慌てていたが
「大丈夫だろ!俺達は強い!それに俺はあのオガミ・シュウの弟子なんだからな!」
ユウガは自身満々そうだった。
それを聞いたエージも落ち着いていた。
「ですね。僕たちならきっと大丈夫です!」
その時
「試練開始!」
突如試練が始まった。
「いきなりかよ!」
ユウガ達は慌ててダンジョンの中に潜り込んでいった。
ダンジョンの中は魔獣だらけだった。
「火炎斬!」
ユウガが敵を斬り、
「アイスシールド!」
エリスが仲間を守り、
「ヒーリング!」
エージが傷ついた仲間を癒やし、
「獣閃撃!」
ガルディアが敵を抉る。
ユウガ達のパーティーは安定していた。
ダンジョンに入ってしばらくした時、ガディル達は―
「マズイ!魔獣が多すぎる!」
ガディル達は運良く二階層への階段が見つかったのは良かったが敵が多すぎてピンチになっていた。
一方ガルザル達は―
「さすがAランク冒険者。余裕だな。」
「当たり前じゃないですか。では、そろそろ始めます?」
「だな。始めてくれ。」
ガルザル達は何かを企んでいる様子だった。
その頃、ユウガ達は二階層への階段をやっと見つけていた。
「クソが!やっと見つけたぞ!階段!」
ユウガはそこで誰かが来た痕跡を見つけた。
「マズイな、恐らくほかの二人は先に二階層へ行ってるぞ。」
「急ぎましょう!」
「おう!」
二階層へ降りたユウガ達が少し進むと謎の広い空間にたどり着いた。
だが、そこにはガディルの仲間二人の死体が転がっていた。
ウルロも横たわってはいたが、幸い息がまだあるようだ。
そして、ガディルは現在ユウガ達の目の前でガルザルによって腹を刺されていた。
ガディル達が襲われる少し前―
「ウルロ、この広場の奥におそらく最下層がある。」
「本当ですか!?ここは、Aランク相当のダンジョンなのですよね?」
「ああ、だがここは少し特殊だ。おそらく、それほどボスが強いのだろう。みんなも、心してついてきてくれ。」
そうして最下層に向かおうとしていたガディルの前に突如既に剣を構えているザベルが現れ、襲いかかってきた。
「なっ!」
「ガディル様!」
「ウルロ…」
ウルロはガディルを庇い斬られてしまった。
「大丈夫か!ウルロ!」
「はい、これしき問題ありません。」
そう言い、槍を構えるウルロの背後から二つの魔法が飛んできた。
どちらも中級の魔法であり、水魔法と炎魔法だ。
「ウルロ!」
ウルロに当たる寸前、どうにか二人の仲間が魔法を斬った。
だが、
「ぐはっ!」
魔法を斬ってウルロを助けた仲間の一人がガルザルによって斬られていた。
「何!ガルザル!お前はなぜ!」
最後までガディルが話す前にガルザルがガディルに斬りかかっていた。
「クソ!ちゃんと話せ!なぜ俺の仲間を斬り殺した!」
「なぜ?決まってるだろ?ガディル兄さんがこのまま、試練から脱落するようにするためだよ!どうする!もう仲間は死んだ!諦めて家に帰りなよ!ガディル兄さん!」
「いや、帰らないよ。ガルザル。お前はきっとガルディアにも同じことをするだろう。なら俺は、兄としてそれを必ず止める!」
そうして、ガディルとガルザルのパーティーの戦いが始まってしまった。




