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王太子が暗殺されるまであと7日  作者: 星降る夜


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11/20

11 三種の神器様様


 いきなり、ドンっと衝撃が走り、籠が転がり私は床に投げ出された。


 「誰だ! こいつは」


 いたたたっ……。思わずお尻をさする。布のバックから持ってきたものが転がった。


 「こいつ、スパイだな」


 男の一人が剣を取ろうとした時、見覚えのある男がその男を止めた。


 「やめろ、ここではまずい」


 ここではまずい? 


 つまり他のところならいいっていうこと? 


 息が詰まる。どうしよう……。大声を出せばだれか来るかしら? 


 ううん、だめよ。声を出せば女の子だってバレるかもしれないわ。私はそれを考えると背筋が寒くなった。なるべくしゃべらない方が良いかもしれない。


 他の男が、床に散らばった、持ち物を拾いだした。


 「へっ、ガキのおもちゃばかりですぜ」

 「こいつ、どうします?」

 

 私をつまみ上げた男がいやらしく口角を上げた。


 「泣きも、騒ぎもしねえな」


 そう言うと私の顎をつまむ。


 「へぇ~なかなかきれいな顔をしてる。高く売れそうだな」


 なめまわすような視線に背筋がぞっとした。


 男は懐から出した布で私の口を巻いた。


 「大人しくしていれば殺さない。わかるな」


 私は膝の震えを隠しながら必死で頷く。


 「兄貴、生かしておくんですか?」

 「ここで殺せねえだろう。バカが、ただのガキだ。後でいい」

 「こんなもの、役にも立たないな」


 床に転がったラッパを手に取りながら言う。何気なく口にもっていった男がラッパを吹いた瞬間。


 『~ブッ、ブッオ~~ドッカン!!! 』


 爆音が響いた。


 驚いた男達が固まった。


 「うわっ! なんだこれ……」


 つぎの瞬間、複数の足音が廊下から響いてくる。


 『一部屋ずつ異常がないか見て回れ~』


 騎士の声が建物に響き渡った。


 「まずい、ずらかるぞ」

 「兄貴、間に合わない。もうそこまで来ているぜ」


 廊下を覗いていた男が声を潜ませる。


 「こいつどうします」

 「籠へ戻せ! 早く!」


 私が籠の中に入ると、男は剣を鞘ごと私の目の前に突き出した。


 「いいか、騒いだら切るからな」


 最後にそう言うと、籠にふたをかぶせた。


 「こいつが少しでも動いたら、籠ごと切れ。いいな」


 脇の男にそう言うと何事もなかったように机に向かった。ほぼ同時に警備の騎士が部屋を覗いた。


 「大丈夫ですか? 何か爆音が聞こえましたが」

 

 籠の隙間から見ると数人の騎士が部屋に入って来ていた。


 「いやぁ~、凄い音でしたな。大会会場で何かあったんですか?」

 「いえ、会場では何も、ありません」

 「隊長、向こうでも異常なしです」


 ああ、行っちゃう。どうしよう……。


 「どうした、音はこの部屋じゃなかったか? 」


 聞き覚えのあるその声に必死に目を凝らす。見覚えのある背の高い騎士。


 はっきりと顔は見えないけど、ロヴィの護衛の騎士だよね。確かランスロットさん……。


 「はっ、こちらでは特に異常はないと」

 「そうか、では、報告へ」


 い、行っちゃう。待って! 私は籠ごと思いっきり転がろうとしたが。びくとも動かなかった。籠の片側を誰かの足で押さえつけられているようだった。


 うっ、押さえられている?


 その時に、コロコロと音がして、さっき落としたペンが転がった。


 背の高い騎士はペンを拾う。


 その視線が一度だけ籠へ向いた。


 わずかに目が細くなる。


 目、合うよね!


 合ったよね! 


 祈りを込めてガン見する。この時私は思った。目で人を殺せるかもしれない。いや、殺したらまずいんだけどね。


 「君のペンか?」


 ランスロットはそう言うと、籠を押さえているらしい男の方へ、つまり私の方へ歩み寄った。


 男は仕方なしに手を外す。私はその瞬間、思いっきり体重をかけて籠を傾けた。


 ゴロンッ!と籠が転がる。そのまま勢いをつけて、ハムスターみたいに籠の中でぐるぐると身体を回転させた。


 「待て、そこに何が入ってる!」


 ランスロットの声が響いた。3対3だよね。


 ランスロットさんは強いよね。


 負けたら私どうなるの。籠から抜け出そうともがいた。


 「知らねえ。最初からここにあった籠だ」

 「隊長。そいつら押さえろ」


 ランスロットさんが命令している声がした。籠のふたが開きランスロットさんと目が合う。


 一瞬驚いたように目を見開いたが、次の瞬間には何事もなかったように籠のふたを閉じた。


 小さく一つ咳払いをする。


 ……えっ……? どういう意味?


 ……閉じるの? 


 も、もしかして見捨てられたの……。


 わ・た・し……。


 背筋に冷たい物が走る。


 ロヴィにもっと親切にしておくんだった。ランスロットさんにお花でもプレゼントしておくんだった。そうすれば助けてくれたかもしれないのに……。


 後悔ばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡る。


 「お前ら、突破するぞ!」

 「あ、兄貴。剣が抜けない」

 「俺もさっきから抜けなくて……」

 「はぁ?、何言ってる?」

 「うっ、くっくそ!どうなっているんだ」


 籠の外では激しい言い争いの声と共にガチャガチャと金属のなり合う音がする。


 私は怖くてぎゅっと目をつむった。籠から出た方がいいのかしら? どうしよう。


 籠の中では今一つ状況がつかめなかった。


 しばらくすると、音が鳴りやみ静かになる。捕まえたのかしら。


 浮遊感がして籠ごと持ち上げられたのがわかった。


 「隊長、後は頼んだ」

 「はい。その籠は?」

 「こちらで責任もって預かる。報告はこちらから上げるから」

 「かしこまりました」


 外での会話を聞きながら、そろそろどうなったのか知りたいわ。


 籠の外からランスロットさんがささやく。


 「リゼット様もう少し我慢してください」


 なんだ、私だっってわかってくれていたのね。


 ほっと胸をなでおろした。でもこのまま運ぶのは、他の人に見られないようにかしら? 忍び込んだのを黙っていてくれるのね。


 ちょっとでも疑って悪かったわ。やっぱりお花でも贈らないといけないわ。


 ほんと、一時はどうなるかと思ったの。生きた心地がしなかった。


 でもお父様の三種の神器様様だわ。


 役に立たないなんて言ってごめんなさい。


 私は籠の中でしっかり反省した。


 安心すると眠くなるとは言ったもので、ゆらゆらと揺れる籠の中でうとうととし始めていた。


 「ランスロット、さっきの音は何だったか分かったか?」

 「ロヴィお坊ちゃま……」

 「……お坊ちゃま? どうした、その籠が何かあるのか?」


 ロヴィの声がして籠の中で目を開けた。


 下におろされて籠のふたが空き、ロヴィの灰がかった青緑の瞳と目があった。


 ロヴィの瞳に、一瞬だけ安堵の色がよぎった。私に手を伸ばすと、さるぐつわを外してくれた。


 「ランスロット、これはやりすぎだ。ここまでしなくても……。何を考えている」


 ロヴィの低く冷たい声に一瞬その場が冷える。


 私は慌てて立ち上がるとロヴィの腕に手を置く。


 「深~い事情があるの。聞いてくれる?」


 ロヴィはランスロットにどうなっているんだと視線を投げる。


 ランスロットは困ったように眉を下げた。


 「私にもさっぱりと……」

 「説明するから、まってね」


 私は籠から抜け出すと背伸びをする。あ~やっと、生き返った気分よ。


 それから私は彼らの控室? という豪華な部屋で、さっきとはずいぶん違うわと思いつつ、向こうで見てきたことを説明した。


 ノックの音がして身なりのいい騎士が入ってきた。方には豪華な飾りがついている。さっきの騎士たちとは服装が違うわ。


 部屋に入ってきた騎士は、いきなり跪く。


 んっ? 何これ? 誰に報告?


 「ありました。毒と思われる小瓶が」


 ロヴィに跪いているの? 14歳の少年に?


 私が戸惑いロヴィの顔を見るとロヴィは一瞬片眉を上げた。


 それからランスロットと目を合わせて頷く。


 ゆっくりと立ち上がるとドアの方を指さす。


 「部屋を間違えていませんか。報告を受ける者はここにはいないので」


 騎士は一瞬戸惑ったように顔をあげてランスロットを見た。


 それから慌てたように、「す、すみません。間違えました」と言いながら去っていった。


 部屋を間違えるなんて、服装だけ豪華な新人さん? 初めてで緊張したのかもしれないわね。


 そう思いながら部屋を見渡した。


 さっきから思っているんだけど、なんだか、この部屋……やけに豪華じゃないかしら……。


 


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