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0.5%の恋  作者: まんぷくねこ


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第39話 番外編 祭り

受験の秋

空気も冷たくなり、受験が近づいていることを

否が応でも押し付けてくる今日このごろ。


そんな受験の鬱憤を晴らすかのように

学校のグラウンドに今、

椅子を置いて座っている。


今日は体育祭である。

文化祭のように人がわんさか集まることも

大きな準備もないが、高校3年になった僕達は

残す祭りを楽しみ切る他ないのだ。


天気は快晴

風はない

湿度も上々

稀に見る体育日和だ。


学年主任は体育祭の前の

学年集会で注意していた。


毎年はしゃぐ者がいる。

部活をやっていた頃と同じテンションではしゃぐ者がいる。

君達はこの夏部活ではなく勉強を頑張っていて

机に向かった夏だったはずだ。

もう部活をやっていた頃の自分と思うな。

君たちの身体は確実になまっている。

怪我がないように。

そう言っていた。


僕達は、きっと、はしゃぐ者だ。

当たり前に怪我はしたくない。

僕達は決めた。

念入りにストレッチをすると。


この体育祭には目標がある。

毎年そうなのだが、高校2年生が圧倒的に強い。

走競技や綱引きは確実に勝てないのだ。

そこは全力で楽しめばいいと

割り切るくらいがちょうどいい。


ただ1つ、騎馬戦

これだけは譲れない。


総当たりで戦うのでなく

一騎打ち式の団体戦なのだ。


そのため個人の勝ち負けとチームの勝敗が決まる。

高校3年生は毎年自分の騎馬が勝てるかどうか

あわよくばチームとしての勝利。

これだけを目標にしている。


僕ももちろんそのつもりだ。


念入りなストレッチともに

僕の騎馬になってくるメンバーと

打ち合わせをする。


作戦としては高さで勝負。短期決戦。

この2つになる。


比較的身長のある僕を上にして

機動力のある騎馬で攻め入る作戦だ。


騎馬になるのは

タカヤ、元野球部のタク、コージだ。

3人とも体格もしっかりしているので

ぶつかりで負けるという事はない。


短期決戦にしている理由は

人数比のせいで、大将は2回やらなければならないのだ。

それが我々の騎馬である。


騎馬の陣営としては低く入るので

だからこそ僕は体を伸ばして

高さをキープしつつ

上から潰せるようにしておく必要がある。

バレー部以来、腰へのストレッチを行った。


上級生としての意地を見せるために。


ほぼ知った顔しかいない

最後の祭りが開会する。


女の子はお団子に結んだり

クラスはちまきをどれだけ可愛く結ぶか

そこに力を入れていた。


花菜も可愛らしい髪型にしていたので

一枚だけツーショットの写真を撮り

騎馬戦にかけた想いを伝え、自クラスに戻った。


この戦いが終わったら

故郷の彼女と結婚するんだ。

そう言わんばかりの背中をしていたと思う。


体育大会のメインである走競技系は

2年生の独壇場で

たまに3年生や1年生の陸上経験者が食い込むような感じだった。


障害物レースなどの少し色物競技では

お前そんな才能があったのか?と思うような

子たちが上位に食い込んだりして

応援をして、されて楽しく過ごす。


昼休み明けには

部活動別の行進と部活対抗リレーが始まる。

バレーボール部は走りの速さはあまりないので

リレーはそこそこの順位だったが

新チームになって、後輩を引っ張っていってる

2年生を見てたくましく頼もしく感じた。

いつの間にか彼らは先輩になっていて

ただ安心感とどこか成長への寂しさを感じていた。


そんな後半戦の幕開けとともに

僕たちにとってのメインイベントが刻一刻と

近づいてきた。


心臓が高鳴る。

比較的温和な男子が多いこのクラスも

今このタイミングだけは

血湧き肉躍る。そんな雰囲気に包まれていた。


放送部のアナウンスとともに

全校男子がトラックの周りに裸足で立つ


体育教師の鳴らす太鼓の音とともに

男子が声を出して走り出す。


ここから勝負は始まってるのだ

相手よりも先に整列する。


相手が4組

こちらは3組

勝ち越した方の学年に点数が入る。

それは今関係ない

勝つか負けるかだけにしか興味がない。

相手は2年のクラスだ。

相手として申し分なかった。


まず2戦は他2組を見守る。

今更大きな声で応援はしない。

行け。それだけが合言葉だった。


心の準備や体の準備とは裏腹に

騎馬戦の勝敗は思う以上に一瞬で決着する。


初戦、相手の騎馬に耐えきれず

騎馬崩れで負けだった。


2回戦

一瞬の鍔迫り合いの末に

相手の帽子を取る。


勝敗は1勝1敗


副将戦が始まる。

相手騎馬も後半になるにつれ大きくなる。

副将の騎馬は同じくらいの大きさだった。


騎馬の気持ちに負けないように

前にという気持ちを持つ。


太鼓の合図とともに騎馬が進み

間もなく揺れる。


その時に一瞬で理解した

うちの騎馬が押し勝ったことを

グラついた騎手の帽子をすかさず引き抜く。


完勝だった。予定通り短期決戦で決めた。


2勝1敗

負けても引き分けで終われるが

そんな事は求めていない。


一度、騎馬を組み直すために降りる。

再び乗る際に

タカヤとコージの手がほどけた。

汗だった。

一抹の不安を抱えるが今更どうにもならない。


自分にできることは騎馬を信じ

上を取ることだけだった。


相手の騎馬は自分たちよりも少し大きかった。

相手にとって不足はない。


お互い見合った状態で

太鼓が鳴る。


さっきよりも早いタイミングで

騎馬がかち合う。

互角だった。


騎手と組み合う。

何秒かは分からないが

刹那だったと思う。

刹那の均衡が解けたと感じると同時に

騎馬の手がほどけた感触がした。

組み合った手がほどけ落ちていく

その一瞬に僕は体を伸ばし

相手の帽子を取る。

そして騎馬が崩れた。


勝敗のフラッグは一瞬の迷いの後に

僕たちにあがった。


雄叫びと共に自然と円陣になっていった。

トラック外で見ている女子達も

喜んでいるが、温度感は違ったものだった。


こうやって盛り上がれるのもあと何度だろうか。

その思いをのせて、ひたすらに叫んでいた。


高校最後の祭りはこうして幕を閉じた。


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