第38話 NIBI
花火大会以降は花菜と都合が合わず
会うことはなかった。
そして、新学期が始まる。
ありがた迷惑なことに
担任が教室後ろの黒板で
センター試験のカウントダウンを始めていた。
2学期に入ると、
本格的に受験生の顔をしている同級生が多数の中
専門系の学校に行く子や
様々な推薦で受験を終えている子も
チラホラと出てきている。
ただ、空気を読んでか、
騒がしくするということはあまりなかった。
その分、受験をするしないに関わらず
何かを発散したいのだろう。
学校内行事では大きな盛り上がりを見せていた。
僕は夏休み後半から塾を増やし
花菜も家の近くの塾に通い出したそうで
2学期になっても、
なかなか一緒に過ごす時間を取れずにいた。
その間はメールのやり取りをするが
花菜は勉強中は電源を切っており
朝と寝る前以外はあまり連絡も取れずにいた。
大きな学校行事も
体育祭と秋の校外遠足だけになり
2学期が始まると共に
高校生の終わりが色濃くなってきた。
バレー部のなかで1人
受験を終えたやつがいた。
シンタロウだった。
シンタロウはそこまで偏差値の高くない
地方の私大に進む選択をした。
大学にいきたいと言うより
その地方で暮らしたいのが理由らしい。
そんな大胆な選択が出来る事に羨ましさを感じる。
赤点常連のタカヤですら、
まともに模試を受けて結果に一喜一憂していた。
一方の僕は模試は2人よりも良い。
それでも志望校にはD判定。
こんなものか。と思って
反省も復習もせず、
丸めてゴミ箱に捨てた。
そんな中で楽しみは
花菜との少ないメールだけになっていた。
数時間おきに来る花菜からのメールに直ぐ返信をする。
花菜からは、勉強してる?(笑)という心配も
文章から伝わってくる。
その日の夜、
花菜といつ会えるか相談をしていた。
花菜からは次の土曜日ならいける。とメールが届く。
僕は予定も見ずにもちろん、OK!と返事をする。
花菜の誕生日も近いのでどうしても会いたかった。
何日後かな。とカレンダーを見ると
その日は志望校別模試の日だった。
僕は即決で模試を休むことに決めた。
模試を受けたからって
合否に左右するわけではない。
心底でそう思ってたからだ。
センター試験のカウントダウンよりも
何十倍も楽しいカウントダウンを
僕はひとり始めていた。
カウントダウンが0になった日
僕はいつもよりも気合いが入っていたのか
早く起きて、待ち合わせ場所に早く着く。
自分でもニヤけてしまっているのがわかるくらい
表情筋が緩くなっていることに気付いた。
時間よりも少し早く花菜がやってきた。
浴衣姿以来の私服に
僕は花菜を上から下に下から上に
何度も見ていた。
花菜は恥ずかしそうに
「そんなに見ないで。」
と僕の目を覆うようなしぐさを見せる。
花菜と勉強の許されているカフェに行く。
僕はカフェオレで花菜はココアを選ぶ。
まだ少し暑さの残る季節に合わせて
二人ともアイスを選んだ。
午後は少し遊べるように朝は勉強をする。
それが花菜の立てたスケジュールだった。
僕は1日遊んだって構わないが
花菜がそう言うのであれば仕方がない。
花菜とは勉強をしつつ少し話をする。
「クラスはどう?」
「もう受験モードって感じ。」
「推薦の人とかは比較的少ないかなー。
そっちのクラスは?」
「選択授業を体育とかにしてるからかな?
推薦、専門、短大の子もちらほらいるねー。
受験モードの人とそうじゃない人がいる。」
僕はきっとまだ後者なんだと思う。
そう思ったが、言えなかった。
勉強もそこそこにお昼時になったので
せっかくカフェを使わせてもらったので
そこで昼食をとることにした。
花菜はパスタで僕はドリアにする。
ドリアが予想通り熱く、
最初は花菜がパスタを食べている所を眺めていた。
ご飯を食べ終わり、
ウインドウショッピングをする。
身が入らないと言えど、
毎日塾が自習エリアにばかり言ってたので
お店が立ち並ぶ街中を歩くだけで
舞い上がってしまった。
ある程度して、カラオケに入る。
とにかくストレスを発散したい。
そんな気持ちが僕たちをいざなった。
カラオケに入るや否や、飲み物を頼み
ランキングの上位や履歴からめぼしいもの入れて歌う。
その後は自分たちの好きな曲なども歌い
退出時間までの折り返しに突入した。
僕は流行りのバースデーソングを歌い、
プレゼントを渡す。
「えー、ありがとう!開けるね!」
「どうぞどうぞ」
「あ、これ、、、」
「同じものは無かったけど」
いつか千切れてしまったネックレス。
僕はまたあげたい。そう思っていた?
「すごく嬉しい。つけてくれる?」
花菜はそう言うと背中を見せた。
僕はネックレスをつけるために腕を回す。
あの時よりも付けるのは上手くなっていた。
そのまま抱きしめる。
「お誕生日おめでとう。大好きだよ。なんてね。」
「嬉しい、私も大好き。なんてね。」
生あたたかいムードに
包みこまれてるのが分かった。
予想以上に花菜が喜んでくれて
ネックレスを見ては
僕を見てニヤけた表情をする。
僕はそれ以上にニヤけた表情で返す。
カラオケの退店まで30分を切る頃だった。
「このあとどうしよっかー」
「花菜の行きたいところならどこへでも行くよ?」
「たまには行きたいところ言ってくれてもいいのにー。
それにしてもいい日になったなー。
来週は志望校別模試だし、発散もできて良かった。
また頑張らなきゃ。」
「そう、だね。勉強頑張らなきゃだね。」
「志望校別模試いつなの?日程違うよね。」
「・・・ぅだよ」
「えっ?」
「今日なんだよね、なんてね。」
そう言っておちゃらける。
「もう!模試ちゃんと行かなきゃじゃん。
私の誕生日なんて後でいいの!
受験まであっという間なんだよ。」
「そうだよね、でも、花菜にあいたくて」
「お誕生日お祝いしてくれるのはすごい嬉しい。
でも、それと同じくらい自分の事大切にしてほしい。」
「うん、ごめん」
「でもね、お祝いは嬉しかったよ。本当にありがとう。
でも今日はここでバイバイしよ。
お互いこの後の予定は勉強!
まぁ、模試だし、その分勉強すればいい!」
迂闊だった。
僕の甘い考えを吹き飛ばすように
花菜はそう言ってのけた。
カラオケを出てから
駅に向かって家路につく。
まだ日も暮れてない時間だが
僕は久しぶりに真面目に机に向かった。




