第22話 番外編 挫折ときどき没頭
花菜と距離を置いていた12月頃の話。
部活の大会も控えていた。
花菜のことで心はぐちゃぐちゃだったものの、
部活をサボることはなかった。
僕とバレーボールの距離感は、
あくまで“つかず離れず”くらいの気持ちだった。
そこそこちゃんとやって、
そこそこ青春できればいい。
そんな感覚だった。
ナオキ、タカヤ、ユウスケ、ソウキも
同じような温度感だった。
一方で、コータとシンタロウは
部活は全力で打ち込むもの、というスタンスだった。
それは中学時代の部活の影響が大きいのだと思う。
一つ上の先輩が少なく、
僕たちの代は半分ほどが一年の頃から試合に出ていた。
だから入部した時点で、
僕たちはかなりのアドバンテージを持っていた。
しかし、顧問は別の高校へ異動し、
コーチも不在。
積み上げた財産を食いつぶすだけで、
新しいものは何一つ入ってこない。
そんな状況だった。
夏明けくらいまでは
「俺ら、いけんじゃね?」
なんて軽く思っていたが、
秋に入ると負け越す試合が増えていった。
それでも特別な策があるわけでもなく、
新しい練習をしては失敗し、
また試しては失敗し、
それを繰り返していた。
高校バレーにはリーグ制がある。
A、B、Cの三つ。
僕たちはなんとかBを維持している状態だった。
そんな中で迎えた12月のリーグ戦。
「Aは無理でも、Bは維持しよう」
ソウキが言った。
「おー」
4チーム総当たり。
1位はAとの入れ替え戦。
最下位はCとの入れ替え戦。
◆ 1試合目
1-2で負けた。
全セット20点を超える接戦だったが、
最後のスパイク1本、レシーブ1つが繋がらなかった。
この高校に勝つことが本命だっただけに、
驚きと悔しさが混ざった。
相手は前よりスパイクのキレも、
レシーブのポジション取りも良くなっていた。
練習が実を結んでいる
そんな感覚だった。
◆ 2試合目
0-2で完敗。
180〜190cmほどの選手がいて、
その選手にとにかくやられた。
どうにもならなかった。
今日はここまで。
明日は3試合目と入れ替え戦がある。
帰りの電車は、誰も喋らなかった。
いつも騒がしいタカヤもナオキも、
ずっと黙っていた。
僕も、どうしようもない悔しさが
珍しく湧き上がっていた。
そのもどかしさは、
花菜のこととどこか似ていて、
余計に胸がざわついた。
風呂に入りながら、
今日の試合を何度も思い返す。
あの時こうしていれば。
あの場面であれができていれば。
今になって思いつくことばかりだった。
「明日は勝たねば」
そう思いながら眠った。
翌日。
「おはよう」
みんなの声は少し重かった。
会場校に着き、試合順を確認してアップを始める。
いつもは何となく同じ動きをしていたのに、
今日はみんなバラバラだった。
パス練習の前に、自然と輪になる。
「勝とう」
シンタロウが珍しく試合のことを口にした。
「おぅ」
その返答だけで、
みんなが本気になっているのが分かった。
◆ 3試合目
1セット目は15-25。
あっさり取られた。
ローテーションを二つずらし、
2セット目は27-25で取り返した。
ギリギリだったが、
僕たちはそれを「流れ」だと信じた。
3セット目。
23-22。
あと2点。
23-23。
甘いサーブをしっかり返された。
23-24。
相手のサーブがネットイン。不運だった。
次のラリーが始まる
相手のスパイクにブロックを合わせるが、
ボールは後方へ弾かれた。
滑り込んだが、
ボールは床に落ちて跳ねた。
23-25。
セットカウント1-2。
僕たちは負ける。
◆ 入れ替え戦
驚くほどあっさり負けた。
僕たちはCリーグに落ちた。
負けたチームは審判をする。
次の試合のコート練習を見ながら、
僕は涙が出た。
悔しさ、怒り、情けなさ、
いろんな感情が絡み合っていた。
笑われると思って、
コータ、シンタロウ、ソウキの方を見る。
みんな泣いていた。
何も語らなかった。
僕たちは今日、負けた。
そして、勝つために
明日から頑張らなければならない。
翌々日。
授業が終わると、全員がダッシュで部活へ向かった。
普段はギリギリに来るメンバーばかりなのに、
今日は全員揃っていた。
コーチもいない。
練習の密度も高くない。
それでも、上手くなりたい。
その気持ちだけは、
確かにそこにあった。
僕はこれからもバレーボールを続ける。
きっと続けてやる。
上手くなるんだ。
その気持ちが湧いたのは、
この日だった。




