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0.5%の恋  作者: まんぷくねこ


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第13話 アイリス

奇跡的に、僕も花菜も午前中部活だった今日。


花菜とデート……だけでなく、シンタロウと美香ちゃんも一緒にいる。

Wデートだ。


二人が付き合ってすぐにその話があったが、部活がなかなか忙しく、

シンタロウと美香が付き合ってちょうど1ヶ月くらいの今、ようやく開催された。

僕が言うのもなんだが、初々しい。


普段部活ではおちゃらけてるシンタロウも、美香ちゃんの前では優しい男子をしている。

僕も人のことは言えないが。


シンタロウと美香ちゃんが前を歩くのを、花菜と二人で後から眺めていた。


「付き合って1ヶ月かー、懐かしいね。ちょっと寒くなって来た頃かー」


「んー、どっちかと言うと夏の終わりって感じで少し暑かったくない?」


「ん、そっか。風邪気味でちょっとボヤボヤしてたかも」


確かにマスクしてたなー、なんて思って、

僕はその違和感を無視することにした。


僕たちはお昼ご飯を食べて、映画を見る予定だった。


「平井さんはシンタロウのどこがいいなってなったの?」

と僕は定番的な疑問をぶつけた。


照れながら「優しいところと一途な所かな?」

可愛らしい反応で平井さんは答える。


シンタロウはお返しだとばかりに、

「上田はどこを好きになったの?」と聞き返す。


花菜は「もう今更恥ずかしいよ」となぁなぁに返すが、

僕が“言ってほしいな”という表情かおをしていたのだろう。


僕を見て、渋々答える。


「一生懸命で、ちょっと不器用なところ」


褒められたのかどうか分からないが、

花菜が恥ずかしそうにしていたので、受け入れることにした。


「2人はどうなの?」と花菜が言ったので、

シンタロウと口を揃えて「山ほどあるけど聞く?」と聞いたら、丁重に断られた。


今流行りの映画は、流行りなだけあって面白かった。


映画終わりにアイスを食べようとなった。

シンタロウと美香ちゃんの歩く後ろで、僕と花菜も食べ歩きをしていた。


花菜はいちご系のアイスとチョコアイスで迷っている感じだったので、

僕はチョコを買うと言った。

花菜はそれを聞いていちごにしていた。


「美味しい?」と花菜に聞く。

「うん、美味しい」と笑顔で答える。


僕はスプーンでチョコアイスを掬い、「一口いる?」と聞いた。

「良いの!?」と喜ぶ花菜の口に持っていく。

嬉しそうに頬張る。


「お返しどうぞ」といちごのアイスを差し出され、

僕も出来るだけ普通に、出来るだけスマートに頬張ったが、内心はドキドキしていた。


僕はアイスもいちご味も別に好きではなかったが、

でも今まで食べたアイスの中で、一番美味しかった。


日が暮れそうという頃合いで、

美香ちゃんが家の用事があるということだったので、

なんとなく皆、解散することにした。


Wデートから1、2週間経ち、僕の誕生日が来る。

僕はとても緊張していた。


花菜の家に行くのだ。

母親にお願いし、ちょっといいお菓子を用意してもらった。


服装もだらしなく見えないように、

腰パンが流行っていたあの頃にしては、ズボンも上にあげて履いた。


最寄り駅の改札を出ると、花菜が待っていた。


私服姿はあまり見れないので、花菜の私服姿にまたドキッとした。

いつまでも慣れない。


首もとにまたネックレスが。

前よりも輝きこそ失っていたが、

僕の知らないところでも着けてくれている証拠だ。


「緊張してる……」と話すと、

「大丈夫だよ」と花菜は笑う。


心の準備も出来てないまま家に着いた。

どのくらい歩いたのかも把握できていない。


花菜の家はマンションだった。

共有玄関を越えて、一歩一歩あるくたびに鼓動が早くなった。


「今日はお母さんしかいないから大丈夫だよ」

と花菜は前を歩く。


花菜の家の前。

ここまで来たら覚悟を決めるしかなかった。


ガチャリ、と家のドアを開け、

「ただいま」と花菜が言うと、

リビングの方からパタパタと早足で駆けてくる足音がする。


「いらっしゃい」と花菜のお母さんであろう人がお出迎えしてくれる。


「ぼ、僕は花菜さんとおつっきあっい……」

めちゃくちゃ噛んでしまった。


花菜は「緊張しすぎ」と笑い、

お母さんも「まぁまぁ、ご丁寧に」と微笑んでくれた。


仕切り直して挨拶をし直し、

母親が用意してくれたお菓子を渡した。


「お気遣いなんていらないのに」と言いながら受け取ってもらえた。


手洗い場で手を洗う。

この空間すべてが花菜の過ごしている家かと思うと不思議な気持ちになり、

なんとなく高揚感より落ち着きが勝っていった。


時折、花菜から香る匂いと同じだったからかもしれない。


花菜の部屋に通される。

これが女の子の部屋、花菜の部屋かと舞い上がる。


どこに座っていいか分からず立ち尽くしていると、

ベッド横の小さいカーペットと丸机のあるところに、

可愛らしいクッションを置いてくれた。


僕はおそるおそる座る。


花菜はリビングに行き、一人の時間になる。


触ることは出来ないが、あたりを見回す。

改めて花菜の部屋ということを実感する。


僕の愛想のない部屋と違い、

全体的に明るく、可愛らしいぬいぐるみやライトが置いてある。


花菜が僕の持ってきたお菓子と紅茶を持ってきてくれたので、

思わず立ち上がって受け取った。


花菜は「ありがとう」と言い、

僕の隣に対のクッションを置いて座る。


何となくこの空間と間が恥ずかしくて、また見回す。


「汚かったかな。彼氏っていうか男の人なんか入れたことないから……」

と少し不安げに言う花菜。


「いやいやいやいや」と僕は強く否定し、

「女の子の部屋なんか入ったことないから変な気持ちになってるだけ。

僕の部屋の100倍綺麗だよ」とフォローした。


「どんだけ汚いの?」と花菜は笑い、

「そっか、女の子の部屋初めてなんだ」と僕の言葉を繰り返した。


花菜は手を叩き、

「今日はお誕生日だよね」と言って、

机の引き出しから可愛らしいラッピングの袋を取り出す。


「お誕生日おめでとう」

その言葉と共に僕に渡してくれた。


僕は「ありがとう」と受け取り、開けていいか聞く。

「もちろん。喜んでくれるといいけど」


ラッピングを開けると箱が入っており、それを開けると革製のブレスレットが入っていた。

一部分だけ金属のプレートになっていて、すごく可愛かった。


金属プレートの裏には、僕と花菜のイニシャル、

そして僕らがメールでよく使う猫か犬かよくわからない絵文字が掘られていた。


ハートの絵文字よりも僕は嬉しくなった。


「ありがとう!!!」と言って腕につける。

腕を持ち上げ、ブレスレットを見上げる。

そして花菜に見せつけて「似合う?」と聞く。


「うん、似合ってる」と花菜も嬉しそうだった。


その後はお菓子と紅茶をいただきながらいろんな話をしたり、

卒業アルバムも見せてもらった。


中学の花菜は今とすごい変わったわけではないけど、幼さがあった。


そういえば、と思い、

「1つ年上になったから敬語で話して」と言ってみた。


「先輩、お誕生日おめでとうございます」

その破壊力に僕は思わず謝った。


どんな流れになったかは忘れたが、携帯を交換していた。

写真フォルダを見たりして楽しんでいたら、メール受信の通知が来た。


花菜に返した。

部活の子から来たそうで、サラッと読んで僕に返してきた。


画面はメールのままで、

「他のメールも読んじゃおうかな」と言うと、

「困るものはないからいいよ」と花菜は言った。


僕はイタズラ心で、自分に大好きとか甘々のことを書いて送った。


花菜の持つ僕の携帯が鳴り、

「見ていいよ」と言ってからすぐに「バカ」と言われた。


ほんの出来心だった。

それとも花菜の性格を知っていたからなのか分からない。

僕は未送信BOXを開く。


一通だけ未送信のメールが入っていた。

去年の2月か3月、まだ高校生になる前のメールだ。


そのメールは花菜の謝罪から始まっていた。

誰かにあてた謝罪だった。


読み進んでいくうちに、

それが当時付き合っていた彼氏に向けたものだと分かった。


だめだと思いながらも、僕は読み進める。


最後には、


「ワタルくん、大好きだよ。」


と書いてあった。


僕の手にはじんわりと嫌な汗が流れ、

そっとメールを閉じて携帯を返した。


出来るだけ普通に振る舞うことを心がけたが、

その後何を話したかはあまり覚えていない。


最後に恥ずかしいから一人の時に読んでと手紙をもらって、バイバイをした。


駅まで送ると言われたけど、

「大丈夫だよ」と断った。


帰りの電車で手紙を読む。


そこには、

僕を見て気になり、話していくうちに好きになって、

告白されて嬉しかったこと。


そこからの8ヶ月くらい、毎日幸せで楽しいこと。


これからもふたりの思い出を作ろうということが書いてあった。


何より最後に力強く書かれた 「大好き。」


僕にとっては嬉しくて、 救いだった。

送ることのできなかった「大好き」より、

受け取った「大好き」を信じたいと思った。

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