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武器げっと

 テントの中にある寝袋を畳んで丸めていい感じにしてその上に座り、チャットを見ながらコッペパンをちょっとだけかじる。とりあえず明日の朝の分を残して、少しだけ。


 チャットメンバーたちも支給されたのはパン1本だけで、グレンはもう食べ終わっている。ただし、俺以外の4人はゴブリンに襲われた村に到着しているので、今現在俺だけが食料不足。


「対応に差があるなぁ」


 ナナリーという村娘をゴブリンから助けたグレンとロージーは、村人から夕食に誘われてしばらくチャットができない状態が続いていた。

 先にチャットに戻って来たロージーは、明日から村の復興を手伝う約束をしてきたという。


 ナナリー達と森で出会った旅人のギュードンと、村に偶然やって来た旅人のアルファは、少ない所持金を使って食事を購入し、宿屋扱いされている村の空き家に泊めてもらえることになったそうだ。


「お。グレンも帰って来た」


 男3人衆のうちの1人の家にお邪魔して夕食をごちそうになっていたロージーから遅れること1時間、村長の家に招かれていたグレンがチャットに復活。


 グレンはゴブリンを素手で殴り倒した実力を買われ、村の護衛として数日雇われたそう。


 他の2人は何も言われてないようだけど、ロージーの話を参考に明日の朝自分から復興の協力を申し出てみるらしい。


「あ、もう0時か」


 チャットをしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。でもたった数時間の絡みでヘルプに載ってない情報がいくつか手に入った。


・イベントは勝手に発生して進行し、運が悪いと参加不能になるということ。

・イベントに参加できたかどうかで周囲の反応が違ってくること。

・アルファのように森を駆け回ると持久力スキルが手に入るということ。

・近くの森に自生してるブルーベリーは食べられる。

・西に行けばゴブリンに襲われた村がある。


 ゴブリンを殴り倒して絞め殺しても死体は消えない、とグレンが書き込んだので、俺はヘルプで得た知識を披露した。まあ、全部ヘルプに書いてあることだから、皆も読めばすぐ入手できる情報だけど……。


【ダンジョンの外にいる魔物は自我があって生きてるから消えない】

【ダンジョンの中にいるモンスターはアイテムドロップして消える】

【同じゴブリンでも、外にいるのは魔物。ダンジョンにいるのはモンスター呼びされるみたい】

【違いは魔石が体にあるか、ないか。モンスターには無い】

【魔石はもちろんアイテムです。売れます使えます……でも解体必須】


「いや、ゴブリン絞め殺すとか、グレン相当ヤバいやつじゃん……こわっ」

 

 知識を披露し終わって満足したところで、グレンの異常性に気付いた。

 異世界に召喚されてウキウキではっちゃけてたとしても、普通、素手で()るだろうか?


 そう思ったのは俺だけじゃなかったらしく、俺のヘルプ情報コメントの間に挟まるかたちでギュードンが鋭いツッコミを入れていた。それに対してのグレンの返答が【喧嘩が流行ってた時代の子だから】でどう処理したらいいのかわからない。


「スルーしよう」


 長いことコメントないし、多分寝落ちしたロージー。

 俺と同じくスルー決め込み就寝宣言したアルファ。

 そして、なぜかグレンの過去に興味津々のギュードン。


【寝ますーおやすみー】


 そっとチャット画面を閉じ、テントの中の光を最小にしぼって寝袋に入り込む。

 異世界生活初日はほぼテントの中だったけど、空腹なことを除けばほとんど家の中にいるのとかわらない。ゲームはできないけど、チャットがあればずっと遊んでいられるし。

 

「明日はとりあえずブルーベリー見つけに行くかな」


 西に行けば村があるのはわかっているので、あまり不安はない。

 ヘルプによるとテントの中は安全地帯なので、魔物が入ってくることもないし。


 起きたら未読のコメントが大量にあった。あいつら夜中の2時まで遊んでたのか……。


 グレンは暴走族が全盛期の頃の、喧嘩がステータスだった学生時代を送っていたらしい。そして、タイマンの美学からプロの道へ……。グレンの中の人を特定できそうな個人情報は漏らさないオトナな対応。

 逆にギュードンはポロッポロ自分語りしてて、心配になっちゃうよ。


【おはよ。お腹すいたのでブルーベリー狩りに行ってくる】


 テントを出て、川で顔を洗ってうがいする。


「つめてぇ」


 ここでタオルがないことに気付いて、しょうがないから着てるシャツで手と顔を拭く。


 残りのコッペパンを朝食として全部食い、手持ちの食料が底を尽きた。


 タブレットを手に持ち、テントを畳んでリュックの中にしまう。

 テントの中にタブレットを置いたまま収納すると、タブレットを取り出すためにテントを張る手間が必要になるから。


 俺の背中より少し小さい登山リュックの中には、見た目食卓カバーのテント、水筒、お金とタブレットのみ。まだまだ沢山入りそうだ。


「石を投げたらイイ武器になるよな……」


 人に握りこぶしほどのサイズの石を投げつけるのは立派な犯罪だけど、ゴブリン相手になら合法だ。グレンのことをヤバい奴だと感じた俺も、立派なゲーム脳だと自分の発想に笑う。


 笑いながら石を拾い集める俺。実にシュール。


 リュックを前に装着して、すぐ石を取り出せるようにスタンバイ。

 外側にもポケットがあるタイプなので、森で入手したブルーベリーを葉っぱにくるんで持ち帰ることもできる。

 

 あとは、ブルーベリーを見つけるだけだ!

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