お試しパーティーと6階
分かれ道になると、最初の頃はヘチナさんが指示した通路を選んで進んでいた。
マッピングはヘチナさんが担当しているようで、行き止まりになると紙に書き込んでから引き返す。そして、その後からは基本的に多数決で進む道を決めるようになった。
その間に、俺はタブレットをこっそり確認。
いつの間にか、3人のステータスが閲覧できるようになっていた。管理事務所に届けを出してないけど、今お試しで一緒に行動しているから、タブレットが勝手に俺たちをパーティーだと判断したんだろう。
ーーヘチナーー
レベル1
体力 22/30
魔力 30/40
≪水魔法≫ ≪火魔法Lv2≫ ≪光魔法≫
ーーソイルーー
レベル3
体力 53/60
魔力 30/30
≪剣術≫ ≪回避≫
ーーリョーハンーー
レベル3
体力 41/55
魔力 25/25
≪剣術≫ ≪回避≫
ーートーヤーー
レベル5
体力 88/90
魔力 35/50
≪剣術≫ ≪回避≫ ≪錬金術≫
俺がレベル5だということは、聞かれるまで内緒にしておこう。
歩いているだけなら俺は自然回復力が勝ってそのうち体力全回復するけど、ヘチナさんは歩けば歩くだけ減っていく。自然回復力にも個人差があるようだ。
「またオークだ!」
「ソイルさん、あれはオスですか、メスですか?」
「だからもう、それどうでもいいだろう!」
6階に出現する敵はオークとゴブリンとスケルトン。
オークが出るたびにソイルさんに性別を確認しているので、ヘチナさんは飽き飽きしている。
「あれは……オスだな!」
「なるほど」
見分け方のコツを教えてもらおうとしたら、オークの性別を判断しているのはソイルさんの勘だという。メスっぽいおっぱいと、オスっぽいおっぱいの違いは、まだ俺にはわからない。
「真面目に戦え! 火魔法、飛ばすぞ」
オーク相手に、まずは魔法使いのヘチナさんが火の玉で先制攻撃。
そして、剣士の俺たち3人が追撃。これで安全に倒すことができる。
敵を倒して前に進み、行き止まりで分かれ道まで戻って、また違うルートを進む。迷路系の階層は基本この繰り返し。
「今日も無理かー。そろそろ戻るか?」
6階のエレベーターに戻ろうとリョーハンさんが提案。
「諦めるな。もう少し進むぞ」
それをソイルさんが却下。
「次、道がなくなったら帰ろう。トーヤもそれでいいな?」
リーダーであるヘチナさんの決断で、行き止まりになったらそこからエレベーターまで引き返すことになった。俺としてはもう少し進みたいけど、時計を見るともう夕方の5時なので、ヘチナさんの判断に従うことにした。
このパーティーが数日かけて攻略した部分を、俺は今日1日で手に入れた。それだけで、かなりの時間短縮になったと思う。
まあ、ぼーっとしている俺の姿を見て、誰も今までのルートを全て記録しているとは思わないだろう。
周囲の警戒を人任せにして進むのは、正直かなり楽だ。
俺が3人の真ん中なのは彼らの自衛の一環で、3人が俺を狩ろうとしたら敵に挟まれている俺はかなりピンチになるので、完全に気を抜くことはできないのがまた別のストレスではあるけど。
「お? また分かれ道だ」
「2択か……どうする?」
直進のルートと、右折のルート
「俺は右」
ソイルさんは右推し。ヘチナさんとリョーハンさんが直進を選択。
ここで俺が右を選ぶと多数決で決まらなくなって、リーダーであるヘチナさんの選んだ道に行くことになる。
ということはつまり、俺がどっちを選んでも直進は確定しているってことで。
「じゃー、俺は……右で」
1番仲良くなったソイルさんの右に1票。だが、2対2なので、リーダー判断で直進決定。
途中、ゴブリンを2体、スケルトンを3体倒したところで、前方に階段が見えた。どうやらヘチナさんたちのパーティーが6階を攻略した瞬間に立ち会えたらしい。おこぼれで俺も6階クリア。
「今日はありがとうございました」
「あー、ずりぃな。まさか今日クリアしちまうとはなー」
「おいおいソイル、見苦しいぜ」
順番に石のテーブルを触っている間に、今日ここまで連れてきてくれたお礼を伝える。まあ、俺も戦闘ではかなり役立ったと思うけど、6階のルートを半分以上進めていたヘチナさんたちのおかげでクリアできたのは紛れもない事実。
「で、どうだ? 俺たちと正式にパーティー組まないか? 相性も悪くないだろ」
再びのパーティー勧誘。
誰かと一緒に行動すると、ダンジョンではかなり精神的に楽になるのが改めて良くわかった。
でも、話を聞いていると、彼らはダンジョン攻略メインの活動をしていて、魔物狩りはあまりしないようだ。ソイルさんとリョーハンさんも、田舎にいた頃に魔物を倒した程度で、こっちに来てからはダンジョンばかりだと言っていたし。
7階は森のダンジョン。
入り口のここもすでに大自然の中。
俺はこの7階の森を攻略するより、スタート地点の森に戻って森の中にあるゴブリンの巣をせん滅してレベル上げをしたい。
「お誘いはありがたいんですけど、俺魔物狩りのクエスト受けたいんですよね」
「あー、やっぱお前そっち派だったか。じゃ、仕方ないな」
ソイルさんも俺との会話でそんな気はしていたようだ。
俺たちは管理事務所の受付に行き、今日ドロップした品を全て売却した。
「悪いが、ヘチナが使った魔力回復ポーション代は先に抜かせてもらうぜ? 一応臨時とはいえパーティーってことで稼いだ金だからな」
「かまいませんよ」
ヘチナさんの魔法にはかなり助けられたし、ポーション代金がパーティー資金から出ているというなら、その分のお金を俺が請求するのは間違っている。
「それじゃ、公平に銀貨30枚な」
「はい、確かに。またダンジョンで会ったら臨時でパーティーに入れてくださいね」
「調子いいなお前。まあ、レベル上がったお前ならかなり使えるだろうから、頼まれたら入れてやらないこともないぜ!」
3人とは穏やかな空気のまま別れることができた。
ヘチナさんは自宅から通っていて、ソイルさんとリョーハンさんは町の宿を借りているらしいので、管理事務所運営の宿で会うことはないだろう。
管理事務所の宿は1人部屋で風呂食事付きで銀貨1枚。
外の宿は2人部屋で風呂無し食事なしで銀貨1枚と銅貨30枚。2人なら外に泊まった方が安上がり。ただし、毎日風呂に入らないっていう前提条件があるけど。
宿に帰る前にアクセサリーショップで火の妖精石を5つ、追加で購入。
明日、5階のボスを周回しようと思う。
ボス戦で装備を整えたら、グレンがいる村の近くにあるというゴブリンの巣を狙うつもりだ。




