ホヨテルの町でショッピング
4泊目ともなると、朝食が毎回マッシュポテトなことに飽きてくる。夕食には米やパンがでるのに、朝食ではポテトオンリーなのは、なぜなんだ。
心の中で文句を言いつつ、今日もポテトと野菜スープを大人しく食う。
リュックの中を整理して、必要ないモノは全部テントに入れて収納。予備費として金貨1枚をテントに保管して、手持ちの現金は金貨4枚と銀貨49枚、そして銅貨66枚。
「小銭がジャラジャラだな」
リュックのポケットに小分けにして入れてるので、早くちゃんとした財布が欲しい。
周囲を浮遊しているタブレットを呼び寄せ、ホヨテルの町のマップを開く。
マップは自動で埋められているけど、各店舗や住宅などの施設はほとんど無記名だ。ダンジョンや神殿、領主の屋敷といった目立つ施設は名前が書き込まれているけど。
「聞き込みして場所を特定するしかないか……」
毎日風呂に入っているけど、そろそろ着替えた方がいいと思うので、今日こそ下着と服を一式買う!
「すみません、連泊手続きお願いします」
「ご予約承りました。いっていらっしゃいませ」
銀貨1枚を払って、今日も宿をキープ。
ダンジョン区画の近くから出ている乗合馬車がタイミングよく来たので、それに乗り込む。
「すみません、服を買いたいんですけど、どの辺で降りればいいですかね?」
近くに座っているおばさんに声をかけてみると、2つ先の停車位置に中古の服を扱っている店があると教えてもらえた。おばさんは自分で服を手縫いして、サイズアウトした子供の服をそこに売っていたらしい。
御者さんに銅貨3枚を渡して、服屋がないかキョロキョロしながら歩く。
浮遊しているタブレットは俺以外に見えないし、人にぶつかりそうになるとタブレットが自動で避けるので、町中でも安心して放置していられる。
この辺はいろんなお店が出店しているようで、この区域だけで1日時間がつぶせそうだ。
「おぉー、皿ね。皿かぁ……あってもいいかもなぁ」
木製のお皿があったので手に取ってみる。ささくれもないし、手のひらより少し大きく使いやすそうだ。
「スープ用に深いのもあった方がいいかな」
ついでにフォークとスプーンも購入して、割引価格で銀貨1枚。お買い得。
この店から出て右にまっすぐいけば目的の店があるようなので、今度こそ服屋に向かう。
「お、怪しげな店」
「失礼だね!」
「すんませんっ」
実は魔女ですと言われたら納得できる風貌のおばあさんが店番をしている店の前を通ったとき、素直な感想が口からポロリとでてしまったので、駆け足でその店の前を通り過ぎる。
「ちょっと見たかったけどなぁ」
ものすごく効き目のいい薬とか呪いのグッズとか売っていそうだ。偏見だけど。
服屋を見つける前に、布屋を見つけた。
ホームセンターのような品ぞろえの店がないので、どの店に何があるかは見てみないとわからない。もしかしたらここにタオルがあるかもしれない。
「すみません、タオル置いてますか?」
「はいはい」
店の奥から持ってきてくれたのは、宿屋で使っているのと同じ生地だった。
「もう少し柔らかいのってないですか?」
「あるけど、高いよ」
「おいくらですか?」
「これより上質の布だと銀貨になっちゃうねぇ」
「あー」
宿屋のタオル生地は銅貨で買えるらしい。
「こっちは銅貨何枚ですか?」
「これはこのサイズで銅貨40枚だね。仕立ても入れるなら銀貨が必要だよ」
「ほー」
横1メートル、縦2メートルくらいのタオル生地が銅貨40枚は安い。
「ちなみに、上質の布だと?」
「サイズ半分になって銀貨5枚。仕立て付きで銀貨15枚かね」
「おぉ……」
悩みに悩んで、ちょっと上質なタオルを手に入れた。
切りっぱなしだとほつれて大変なことになるらしいので、裁縫作業もお願いして、支払額は銀貨15枚。
「いつ頃出来上がりますか?」
「切って縫うだけだし、今は針子の手も空いてるから、昼前には仕上がるよ」
「じゃあ、後で取りに来ます」
「はいよ。まいどあり!」
中古の服を扱う店にやっと着いた。
あまり汚れてない綺麗な服から、なんかもう、汚れ作業前に着るくらいしか使い道なさそうなほどダメージ入ってる服まで幅広い。サイズも子供から大人まである。
「んー。どうしようかな」
半そで1枚しか持ってないので、比較的綺麗めで肌触りの悪くないやつの中から、長袖と半そでを1枚ずつ。ズボンはポケット付きがあったのでそれを選んだら、丈が足らない。
試着できないので腰に合わせてみるしかないけど、ちょっと足りない気がする。
「まあいっか」
下着は新品が欲しかったので店員に相談してみると、布屋で仕立ててもらえとアドバイスされた。さっきの布屋に追加で注文しよう。
「はい、銀貨1枚」
4着購入で銀貨1枚。
布屋に戻って、下着の注文と購入したズボンのウエスト調節、ついでに布を足して足の長さに合わせてお直しもお願いして、銀貨13枚。
「じゃあ、夕方にまた来ます」
布屋を出て、怪しいおばあさんの店に向かう。
あの店に俺の求めているシャンプーやボディソープがあるらしい。
そーっと店番しているおばあさんから顔をそらしつつ、店に並べてある商品を眺める。
商品名など書いてないので、おばあさんと会話しないといけない仕様のお店のようだ。
「すみません、髪と体を洗う洗剤が欲しいんですけど」
「それだよ」
「え?」
「その赤いの」
ぶっきらぼうなおばあさんの言葉で、目の前の赤いビンに入った液体が洗剤だと分かった。
「これ、髪と体どっち用ですか?」
「はんっ! 洗う場所によって洗剤を変えるなんて聞いたことがないよ」
どうやら全身これ1本の優れもののようだ。
「おいくらですか?」
「銅貨20枚」
「はい」
500mlくらいありそうな洗剤を購入して、リュックの中に入れる。
おばあさん俺の顔覚えてるっぽいので、さっさと店を出るに限る。
「こえぇ、超こえぇ。迫力ありすぎ」
本屋を探して町をぶらついてみるも、なかなか見つからない。
「神殿の図書館とかいい本ありそうだよなぁ」
でも俺、自発的に神殿出入り禁止だからなぁ。
考え事をしながら歩いていると、お店の前に無造作に並べられた民芸品が目に入った。
「神様の像?」
ダンジョン管理事務所に飾ってある双子神の絵にそっくりの木彫りの人形。
これって、もしかして、信仰の対象ってことで、こいつを使えば神殿に行かなくてもフランス人形と連絡取れるんじゃないだろうか?
ちょっとした実験をするつもりで、双子神の像を銅貨30枚で購入しリュックに放り込む。
「小腹すいたな」
飲食店を見つけたので、ふらっと中に入る。
「いらっさい!」
威勢のいい声が出迎えてくれた。客はまあまあ入っているみたいだから、マズイ店ではないだろう。




