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風呂と食事とチャッ友

 未読のチャットに全部目を通し終わると、昼の3時前になっていた。


 今からダンジョンに行くのは時間が遅いだろうし、かといって、また神殿に行くのは面倒くさい。夕飯には早すぎるので、風呂に行くことにした。


 部屋に鍵をかけ、壁に貼られている風呂場への案内を辿っていく。

 貸し切りとはいかなかったが、しっかり温まってゆっくり体を休めることができた。シャンプーとボディーソープが備え付けられてなかったので、今度町で買ってこよう。


「はー、疲れた」


 風呂に入って気持ちよく疲れた気分をベッドに横になって味わう。

 ものすごく贅沢な時間を満喫していると、まぶたが重くなってきた。

 

 これは……寝る……。


 2時間ほど仮眠したようで、夕方の6時になっていた。


 チャットを確認すると、アルファは神殿長と対面し、聖職者との顔合わせやら面接やらを経て、今日は神殿に泊まって明日この町の領主に会う予定になったと話していた。

 

 ヘルプをほとんど読んでないアルファは、フランス人形が現れたのをこれ幸いと質問しまくっていたようだ。フランス人形と光の帯が消えた頃には、神殿関係の上層部がずらっと勢ぞろいしていたらしい。


 アルファとフランス人形の会話で鑑定スキルの取得方法が判明。


 まず本を読む。本を読み、本を読み、読み込んで内容を覚える。そして実物に触れ、目で見て、頭にある知識とすり合わせていくと、ある日突然鑑定スキルが芽生えるらしい。


 あとは、本を読み、実物に触れ、どんどん知識を増やしていくと鑑定スキルのレベルが上がる。


 その道の第一人者とか、骨董品のプロとか、教授とかオタクとか、そういった人たちと同じ熱意と努力と知識がないと、手に入らないスキル……。


 手に持ったソレが何かきちんと知っているからこそ鑑定できるスキル。


「つかえねぇ」


 神殿には沢山の本があるらしい。

 神託が下った俺やアルファなら、無料でいくらでも読み放題かもしれない。


 読むのはいい。本を読むこと自体は苦にならない。だけど、図鑑系を全て覚えるほど読み込むのは、ちょっと厳しい。


 鑑定スキルを自分で取得するのを早々に諦めたアルファは、聖職者で鑑定スキル持ちの人を集めてもらったらしいけど、年齢層が高くて鑑定スキル持ちを連れて行くこと自体を諦めた……鑑定スキルを諦めた結果、若くて可愛い女の子を仲間にできたようだ。


 アルファはキャラクタークリエイトで美形になる顔面パーツばかりを選んで、輪郭や目の位置、鼻の高さ、身長体重、体格、全て黄金比に調節した超絶美形の状態らしい。ついでに美声。


 その姿で神殿側が用意した上質な素材で作られた真っ黒なシャツとスラックス、金と青の刺繍が入った白いサーコートを装着したもんだから、美形度跳ね上がって鏡の前で「誰これ俺?」と脳が処理落ち。しばらく鏡は恥ずかしくて見れないと困っている。


 グレンは筋肉質なガチムチ体系でヒゲがチャームポイントの男臭くワイルドな顔。


 ロージーもゲームのアーチェス内では埋没して目立たなかったけど、美形。


 ギュードンは愛嬌のあるとぼけた顔。


【俺は金髪、色違い量産型のデフォルト顔! 眉だけ選んだ】


 皆が外見を書いていたので、俺も時間差で書き込んでみる。


 もし、俺が青の扉をくぐっていたら、髪型違いの色違い、顔そっくりな男が周囲に沢山いたかもしれない。下手したら全員デフォルト顔パーティーとか……。


 自分の想像にゾッと寒気を覚えた俺はタブレットを放り出し、白い札を握って食堂に行くことにした。


 食堂で用意しているメニューは毎食1種類のみ。


 適当に空いている席に座ってテーブルに白い札を置いておけば、店員が食事を運んできて札と交換してくれるシステムだと説明されたので、大人しく座って待つこと数分。


「お待たせしましたー」


 今日の夕食のメニューは肉と野菜の炒め物、具材なしのピラフ。炒め物にはフォーク、ピラフにはスプーンが付いていた。


 食事を運んでくれた店員に「お箸をください」とお願いしたら「オハシ? ごめんなさい、聞いてきます」と裏に行こうとしたので全力で止めた。


 わからないなら、別にいいんだ。そうか、お箸無い世界か……。


 ゲームを参考にして作った世界だからか、言語は無数に変更できるようで、俺がいるアーチェスは日本語で会話が進むし文字も日本語。


 青の扉の世界では、同じ文字や言葉が、それぞれの目や耳に入った瞬間に自分の第一言語に変換されている可能性がある。


 残念ながら創造神が参考にしたゲームの中に、お箸が出てくる場面は少なかったんだろう……。まあ、無くて困る代物じゃないし。


 夕食を終えて部屋に戻った俺は、ロージーとギュードンがテントで野宿することを知った。2人ともアルファと同じコースを選んで、隣の村で夕飯用に干し肉をゲットして食べたらしい。


 この世界の干し肉はコンビニで売っているジャーキーより乾燥していて味気なく、あまり美味しくないようだ。調味料の違いかな? 


 ロージーとギュードンはアルファが可愛い女の子を仲間にしたあたりで村の仕事を放りだした。


 ロージーはお世話になった人にちゃんとお別れとかしてきたみたいだけど、ギュードンは休憩中に村を出る完全なバックレ。


 奴隷ハーレムの夢に心躍らせているギュードンにとって、村はもうどうでもいいようだ。


 この世界、奴隷制度ってあるのか? などと、ギュードンのやる気を削ぐようなことは誰も書き込まない。


 ギュードンが自分で確認すればいいのさ。



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