はぁ……どうやら僕は、うっかり重要人物になったらしい
あと2話ほど投稿したところで、しばらくの間、毎日投稿をお休みしたいと思います。
その期間は、これからの話を書き進めたり、これまで書いた話をゆっくり見直したりする時間に使うつもりです。
少しでも、自分が目指している水準に近づけ、皆さんがこの物語に費やしてくださっている時間にふさわしいものをお届けできればと思っています。
アカデミー編も、すでにおよそ半分まで進みました。
これまでずっと、質問を避け、静かな生活を送ろうとしていたフィンですが、どうやら彼自身が、周囲で起きていることの理由を探さなければならない状況になってきたようです。
僕は、フィンにも、そして読んでくださっている皆さんにも、「この物語に時間を使ってよかった」と思ってもらえるような物語を届けたいと思っています。
そして、このアカデミー編が終わった後は――
フィンとともに、まったく新しい段階へ進みます。
それは――
集落づくり。
ですが、ここで一つ疑問があります。
注目を集めることを何よりも嫌っている人間が……
どうして、いつの間にか注目の中心にいることになるのでしょうか?
さて……
皆さんは、フィンが最終的にどんな集落を治めることになるのか、何か予想がありますか?
この編は、僕自身が今から特に楽しみにしているものの一つです。
ここまで読んでくださった皆さん。
そして、この物語に挑戦してくださり、評価してくださり、これまで応援してくださった皆さんに、心から感謝します。
本当にありがとうございます。
ゆっくりと目を開いた。
外から、花火の音が聞こえてくる。
ヒュゥゥゥゥ!
ドォォン!
――ん?
「ここは……どこだ?」
カーテンが、柔らかな風に揺れている。
「ここはどこだ?」
周囲をよく見回す。
広い部屋。
上品で。
静かだった。
「最後に覚えているのは……完全に意識を失ったことだ。」
「でも、どうしてだろう?」
「ついさっきも、こんな感じで目を覚ましたような気がする。」
ゆっくりと身体を起こす。
どうやらソファの上で眠っていたらしい。
「まあ……」
「ベッドじゃないけど、かなり快適だな。」
「金持ちって、こういう感じなのか?」
「どこで寝ても、金持ちだから快適に感じるのか?」
「まあいい。」
「こんなくだらないことを考えるのは、ここまでにして……」
「僕はどこにいる?」
もう一度、部屋を見回す。
「うーん……」
「なんだか、ここに来たことがあるような気がする。」
「でも、いつだ?」
――あああああ!
「思い出した。」
カチャ。
扉が開いた。
――あのゴリラの部屋だ。
僕の表情が固まった。
誰が入ってきたのか、振り向いて確認する必要すらなかった。
必要ない。
その気配だけで十分だった。
何もしなくても、この部屋の壁を壊せそうなほどの威圧感。
僕は静かに指を組み、顔の前へ持っていく。
「はぁぁぁ……」
「どうやら、今度こそ僕は死ぬらしい。」
横目で窓を見る。
外では花火が空へ打ち上がっている。
子供たちが走り回っている。
賑やかな街。
人々の声。
何もかもが素晴らしく見えた。
「さて。」
「部屋に戻ろう。」
イラリアは静かに机の向こう側に座っていた。
僕はその向かいに座り、彼女が用意してくれた紅茶を飲んでいる。
「なんて優しいお嬢さんなんだ。」
「僕の顔色が変わったのが気になるって?」
「どうして僕から煙が出ているのかって?」
「まあ……」
「さっき言った通りだ。」
「紅茶を飲もうとしたら、冷めていた。」
「僕は彼女を責めていない。」
「何しろ、金持ちのお嬢さんだからな。」
「紅茶を温かいままにしておく方法なんて知らなくても、当然だ。」
「だから彼女は、僕のために温めてくれることにした。」
「僕のために。」
「優しいだろ?」
「でも、ちょっとした事故が起きた。」
「紅茶を温めるはずが……」
「なぜか僕自身に火がついた。」
「この話については、これ以上深く考えないことにしよう。」
「本当の原因についても、触れないでおこう。」
僕はカップをテーブルへ置いた。
――お嬢さん。
――こうして久しぶりに、元気な君の姿を見られて、本当によかったよ。
――あはははは。
「どうすれば、もっと温かみのある言い方になるんだ?」
イラリアはカップをテーブルへ置いた。
――その言葉、嬉しいわ。フィン。
――でも、本当にあなたが無事でよかった。
――五日も眠っていたから、もう目を覚まさないんじゃないかと思っていた。
――だから、あなたの葬式の準備までしていたの。
――あははは。
――まったく、優しいお嬢さんだ。
――僕の葬式のことまで考えてくれるなんて。
――僕は一人だからな。
――一人でいるのが好きで。
――人目につかない場所で静かに暮らしたい。
――貴族の近くにいるのも好きじゃない。
――僕が望んでいるのは、ただ静かな生活なんだ。
――だから、その最後の願いだけでも叶えてくれると嬉しいんだけど。
イラリアが笑った。
――ははは。
――残念だけど。
――私は葬式には出るけど、願いは叶えないわ。
しばらくの間、部屋には僕たちの皮肉な笑い声だけが響いていた。
――あははは。
――ははは。
「さて。」
「そろそろ本題に戻ろう。」
「どうすれば、ここから逃げられる?」
「この女、間違いなく僕を殺すつもりだ。」
「ずっとそう匂わせている。」
「これはまずい。」
「窓から飛び降りるか?」
「うーん。」
「たぶん、全身の骨が折れる。」
「そのあと、僕を始末するために処刑される。」
「じゃあ、扉を開けて普通に出ていくか?」
「うーん……」
「たぶん、外へ出る前に焼かれる。」
「つまり……」
「逃げ道はない。」
僕は作り笑いを浮かべた。
――お嬢さん。
――何かしら、フィン?
僕は冷たく、恐ろしい笑みを浮かべた。
――ここでやるのか?
――それとも、別の場所でやるのか?
イラリアは紅茶を一口飲んだ。
そして静かにカップを置く。
――何のこと?
――分かっているだろ。
――僕はここで処刑されるのか?
――それとも、人目のつかない場所で?
彼女はもう一度、紅茶を一口飲んだ。
僕はじっと待った。
そして、彼女は静かにカップを置いた。
――うーん。
――そうね。
――まだ考えていなかったわ。
僕は深く息を吸った。
「考えろ、僕。」
「今の答えを、処刑日の延期と解釈してもいいのか?」
イラリアは静かに顔を上げた。
その瞳には、少しだけ温かさがあった。
――それで、フィン。
――身体は大丈夫?
――ずいぶん長く眠っていたでしょう。
――正直、死んだのかと思っていたわ。
僕はケーキを一切れ取った。
うーん。
――まあ。
――まだ身体のあちこちが痛むと言えば、痛む。
――かなりひどい怪我をしたからな。
僕は窓の外へ目を向けた。
――そうだな。
――本当に長い一日だった。
――正直、終わるとは思っていなかった。
「最初からお前がちゃんと仕事をしていれば、こんなことにはならなかったんだけどな、ゴリラ。」
「つまり、お前が敵への対応に手間取ったせいで、僕はこんな目に遭ったわけだ。」
イラリアは静かに僕を見た。
だが、その瞳には少しだけ心配の色が浮かんでいた。
――一つ、聞いてもいい?
――どうしたんだ、お嬢さん?
彼女の顔に、少し苛立ちが浮かんだ。
――前にも言ったでしょう。
――私のことは、イラリアと呼んで。
――「お嬢さん」はいらないわ。
「たぶん、それも僕にとっては面倒なことになるんだけどな。」
「君は貴族で、僕は辛うじて平民と呼べる程度の人間なんだから。」
――うーん。
――本当に?
イラリアは静かに立ち上がった。
そして、僕のほうへ歩いてくる。
「さて。」
「どうして、今言った言葉を全部後悔するような気がするんだ?」
できるだけ平静を装う。
だが、まったく落ち着かなかった。
イラリアは僕の後ろまで歩いてきた。
そして、僕の肩に手を置いた。
――ねえ、フィン。
――あの日、私のことをイラリアと呼んだでしょう?
「……」
背筋に悪寒が走った。
そして、彼女は僕の耳元で囁いた。
――それに、あなたはずっと私をゴリラと呼んでいるわね。
――どうして他のことより、私のことをそんなに怖がるのかしら?
「なるほど。」
「死の気配が、彼女から漂っている。」
「つまり、ここで余計なことを言うのは得策じゃない。」
「だから、生き残るためには彼女に合わせるしかない。」
――前にも言ったけど。
――君の見た目のことじゃない。
――君は綺麗で、優しい。
「最後の部分には疑問があるけど。」
――でも、君の力は並外れている。
――だから、僕がゴリラと言ったのは、君の力を表現しただけだ。
あはははは。
――ふーん。
――五。
「……何?」
彼女は僕の肩を強く握った。
クラック!!
――あはははは!
――お嬢さん!
――今、僕の肩を折っただろ!
――私の名前で呼んでって言ったでしょう?
――四。
さらに力が加わる。
「この女、何なんだ?」
「本当に僕を殺すつもりなのか!?」
痛みが増していく。
――あはははは!
――分かった。
――じゃあ、ゴリ――
――三。
さらに力が加わる。
――あああっ!
――どうだ、イ――
――イラリアちゃん!
彼女の動きが止まった。
――でも、二人きりの時だけよ。
「ああっ!」
「肩が壊れる!」
僕は警戒しながら彼女を見る。
――「イラリアちゃん」って呼び方、気に入ったのか?
彼女はゆっくりと僕の肩から手を離した。
そして、微笑んだ。
――まあ、これでいいでしょう。
「ふぅ……」
「助かった。」
「でも、病院を探さないといけない。」
「いや……」
「医者を探そう。」
「僕の肩を元の位置に戻してもらわないと。」
イラリアは僕の前にあるソファへ移動し、腰を下ろした。
僕には、彼女が何かに苦しんでいるようにも見えた。それでも、彼女は静かに僕の前へ座った。
「さて。」
「これからどうなる?」
ようやく、彼女が口を開いた。
――フィン。
――あなたが眠っている間に、いろいろなことがあったの。
――あははは、どうやらこの世界は動くのが速いらしい。
――僕には、とても追いつけそうにない。
――この世界についていこうとせずに生きるほうが、僕には合っていると思う。
彼女は静かに笑った。
その笑い方は、いつもと違っていた。
彼女と出会ってから初めて見る笑顔だった。
「イラリアちゃん、少し変わったみたいだな。」
そう言いたかった。
でも、もし醜い女の子が突然やってきて、「あなたが好き」なんて言ってきたらどうだ?
そう。
僕みたいな平民が、貴族のお嬢さんに優しい言葉をかけようとするのも、同じようなものだ。
だから、その言葉は飲み込んだ。
――あなたって、本当に変わった人ね、フィン。
――ありがとう、その優しい言葉。
――イラリアちゃん。
――このまま一生、こういう人間でいたいよ。
――問題の中心に飛び込むくらいなら、そのほうがずっといい。
彼女は紅茶のカップを両手で持った。
――ねえ。
――あの敵と戦っていた時、一瞬だけ、あなたに似ていると思ったの。
「ふぅ……」
「このゴリラ、嫌なことを匂わせている。」
――イラリアちゃん、僕に罪を着せようとしてないか?
――もし外にいる学生に聞かれたら、僕が街を滅ぼそうとした敵だったという噂が広まるぞ。
「実際、僕も危うく街を壊しかけたけど。」
「でも、それは数に入らないよな?」
「これ以上、地下にある僕の評判を下げることになる。」
「評判が地面に埋まるくらいなら構わない。」
「でも、その隣に埋められるのは勘弁してほしい。」
――ははは。
――違うわ。
――そういう意味じゃない。
――それに、今は休暇中だから、学院の敷地には誰もいない。
――だから、ここで誰かに会う可能性は低いわ。
――ああ、それで僕をいじめようとする奴に誰も会わなかったのか。
僕はケーキを一切れ取った。
――それで、あの敵との戦いは楽しかったか?
――君の怒りをぶつける相手としては、ちょうどよかったんじゃないか?
部屋が静まり返った。
窓から入る風に、カーテンが静かに揺れる。
「なんだ、この沈黙は?」
「いつもなら、僕の頭を壊そうとしたり、溺れさせようとしたり、燃やそうとしたりするだろ。」
もう一口、紅茶を飲む。
「なるほど。」
「これは何かあったな。」
「何かが、彼女を少し変えた。」
「まあ、相変わらず知りたくはないけど。」
「ここに長居するのも嫌だ。」
僕は紅茶を一気に飲み干した。
そしてケーキを口いっぱいに詰め込む。
扉のそばまで歩いた。
――それじゃあ、イラリアちゃん。
――軽食をありがとう。
――目を覚ましてからずっと腹が減っていたんだ。
――じゃあ、また。
――フィン。
僕の足が止まった。
「さて。」
「大人しく座ろう。」
「うん。」
「これは間違いなく正しい判断だ。」
だが、彼女の声色が少し変わっていた。
今度は笑っていない。
――行く前に。
「うん。」
「この言葉は、絶対にいい知らせじゃない。」
――あなたには、知っておいてほしいことがあるの。
「くそっ。」
「どうして急に真剣になった?」
――あの場所にいた時から、あなたに注目が集まり始めている。
「まさか、僕が怪物を街の中心まで誘導したことがバレたのか?」
「いや。」
「フィン。」
「早まるな。」
「落ち着いて、話を聞け。」
――どういうことだ、イラリアちゃん?
彼女は足を組んだ。
――あなたとオーリン、それにサムラリス。
――あなたたちは今、貴族たちの注目を集めているの。
「なるほど。」
「これは、まったく良い知らせじゃない。」
「だから、嫌だけど言おう。」
――はぁ……詳しく教えてくれ。
彼女は静かに説明を始めた。
「でも、僕の視点から簡単にまとめてみよう。」
「サムラリスは、大商人の息子だ。」
「だから、平民とはいえ、彼を守るだけの家柄と財力と影響力がある。」
「オーリンは……」
「重要人物から推薦を受けている。」
「そのうえ、彼を好きな女の子は、街を守るヴィラークスの一員だ。」
「だから、僕と同じようには扱われない。」
「じゃあ、僕には……」
「何がある?」
「後ろ盾はない。」
「金もない。」
「力もない。」
「ただの平民が、たまたま間違った場所にいただけだ。」
「そのうえ、誰も真相を理解していない事件に、なぜか深く関わってしまった。」
「さらに……」
「僕が最初に怪物の存在を察知したという証言もある。」
「そして、僕が怪物を街の中心へ誘い込んだんじゃないか、と疑われる可能性もある。」
「だから、僕には三つの可能性がある。」
「三十パーセント。」
「僕を事件の関係者、あるいは災害の原因の一人として疑う。」
「六十パーセント。」
「僕を必ずしも犯人とは考えない。」
「ただ、知りすぎている証人として、口を封じようとする。」
「残りの十パーセント……」
「何を意味しているのか、僕にも分からない。」
「そして、それが一番怖い。」
「つまり……」
「最悪の結論にたどり着いた。」
「僕は事件の中心人物になった。」
「しかも、何の後ろ盾もない。」
「つまり、僕には二つの未来がある。」
「大勢の前で絞首刑にされる。」
「街に災害をもたらした、あるいは敵に協力した罪で。」
「あるいは……」
「どこかの川で僕の死体が見つかる。」
「理由すら分からないまま。」
僕は部屋の天井を見上げた。
そして、しばらく見つめ続けた。
「なるほど。」
「最初から、こうなることを予想しておくべきだった。」
「いや。」
「最初から、すべての兆候はここへ向かっていた。」
「でも、僕は楽観的になろうとしていた。」
「死か。」
「僕の最後は、どんなものになるんだろう?」
――フィン。
「遺書を書いたほうがいいのか?」
――フィン。
「でも、誰に渡せばいい?」
「僕には誰もいない。」
――フィン!
「じゃあ、逃げるべきか?」
――おい、フィン!
「いや。」
「今の僕の行動は、たぶん監視されている。」
「じゃあ……どうすればいい?」
――フィィィィィン!
――まったく、ゴリラ!
――僕が自分の最期をどうするか考えているのが分からないのか!?
――あなた、五分くらいずっと声に出して考えていたわよ。
「あ。」
「無意識に声に出していたのか。」
その時、外で再び花火が上がった。
ヒュゥゥゥゥ!
ドォォン!




