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騒動の後の始まり



この暗闇の中で、周囲の波が揺れていた。


「なぜなのかは分からないけど……」


「意識を失うたびに、僕はこの暗い場所にいる。」


「ここには光がない。」


「僕が見ることのできるものも、何一つない。」


「でも、この波の音はいったい何なんだ?」


「それより、もっと重要なことだけど……」


「僕、本当に綺麗な女の子を見た気がする。」


「あっ!」


「今、思い出した。」


「着物を着ていた……」


「いやぁ……」


「本当に綺麗だったな。」


カチッ。


静寂。


「さて。」


「今思い出しても何の役にも立たないことを思い出したところで……」


「僕はどこにいる?」


「ここは何なんだ?」


「どうして僕はここにいる?」


「そうだ。」


「最初から、これを考えるべきだった。」


「最後に覚えているのは……」


「僕があの怪物を、あのキューブの中に閉じ込めたこと。」


「その後、意識を失った。」


「ということは……」


「僕、死んだのか?」


「それともまだ生きていて、自分の意識の中にいるのか?」


「ここにいる限り、答えは分からないだろうな。」


――案内役……


――いるのか?


僕の声が、暗闇の中へ響いていく。


何もない。


「ああ……」


「思い出した。」


「僕が意識を失うと、あいつは眠るんだった……」


「あるいは、僕が死んだ時も。」


「たぶん……」


「僕は死んでいる。」


「でも、ちょっと待て。」


「戻ってきたのか?」


「『発現』が始まってから、あいつは消えた。」


「それ以来……」


「一度も声を聞いていない。」


「発現……」


「そして、グラトニー……」


僕はこの場所を少し歩き回った。


そもそも――


本当に歩いているのかすら分からないけど。


「発現。」


「そして、グラトニー。」


「初めて……」


「ルービックキューブ自身にも、スキルがあることに気づいた。」


「正直に言うと……」


「スキルそのものが、別のスキルを持つなんてことがあるとは思わなかった。」


「でも、どうやら僕の『ルービックキューブ』というスキルは……」


「スキルを持っているらしい。」


「しかも……」


「国一つを滅ぼせるようなスキルを。」


「あるいは、少なくとも……」


「そこに住む人々を怪物に変えてしまえるくらいには。」


「そう……」


「そうだな……」


「これからは、この二つのスキルには細心の注意を払わないと。」


「そうしないと……」


「そのうち、世界を滅ぼした犯人にされかねない。」


カチッ。


「でも、一つ問題がある。」


「僕にはまだ分からない……」


「どうして、僕みたいなモブがこんなものを持っているんだ?」


「こういうスキルって、普通はもっと強いキャラクターが持つものじゃないのか?」


「王……」


「魔王……」


「あるいは、そういう類の存在とか。」


「それなのに、どうして僕がこんなスキルを持っている?」


「うーん……」


「えーっと……」


「はぁぁぁ……」


「正直……」


「こんなことを考えても、何の意味もない。」


「僕には何の情報もないんだから。」


「誰も知らないことについて情報を集めようとするなんて……」


「狂気の沙汰だ。」


「だから……」


「どうやってここから出る?」


「今は、それに集中するべきだ。」


カチッ。


「ん?」


「何だ、この音?」


「最初から聞こえていた。」


周囲を見回す。


何もない。


ただの暗闇。


「じゃあ、どこから聞こえてくる?」


カチ……


カチ……


「ルービックキューブの音に似ている……」


「面が回転するときの音だ。」


その瞬間――


周囲に光の糸が浮かび上がった。


暗闇の中を動き……


互いに絡み合いながら回転している。


僕は素早く振り返った。


そして、その瞬間――


何かが見えた。


赤い色……


僕の足元に。


「何だ?」


光の糸が前へ伸びる。


絡み合う。


回転する。


そして、次第に集まり始めた。


やがて僕の目の前に形作られたのは――


ルービックキューブだった。


「ちょっと待て……」


「僕は呼び出していないぞ。」


「ということは……」


「勝手に現れたのか?」


「でも、それって……」


「僕はまだ生きているってことじゃないのか?」


「まあいい。」


「答えの出ない疑問リストに、また一つ追加だ。」


キューブの面が動き始めた。


そして、そのパーツが互いに離れていく。


「おい……」


「おいおいおい……」


「待て!」


「待てって!」


「なんで勝手に動いてるんだ!?」


空中で、パーツの動きが止まった。


そして――


回転し始める。


その瞬間、暗闇の中から声が響いた。


静かで……


それでも、はっきりとした声だった。


<私は最後まであなたと共にいます……>


僕の呼吸が止まった。


<だから、私を見捨てないで。>


――え……?


「誰だ?」


「誰が喋ってる?」


しかし、誰も答えなかった。


キューブの内部から光が溢れ出す。


白く……


強烈な光。


その光によって、周囲のすべてが消えていくように感じた。


そして――


暗闇が消えた。


僕は目を開いた。


ゆっくりと周囲を見回す。


静かな部屋。


近くの窓から差し込む太陽の光。


暖かな空気。


完全な静寂。


――え?


「ここは……どこだ?」


天井を見る。


それから壁。


そして窓。


「ここって、学院の寮の部屋か?」


起き上がろうとする。


「痛っ……」


「身体が痛い……」


「全身が。」


胸に手を当てる。


それから腕を見る。


「ほとんどボロボロだったからな。」


指を動かす。


それから腕。


そして脚。


「どうやら、まだ身体はあるらしい。」


「それはよかった。」


「いや……」


「少なくとも、たぶんよかったんだろう。」


ベッドの端に腰掛ける。


もう一度、周囲を見回す。


誰もいない。


「よし。」


「誰もいない。」


「素晴らしい。」


苦労しながら服を着る。


そして立ち上がる。


「痛っ……」


「一歩歩くだけで痛い。」


胸を押さえながら、扉へ向かう。


ゆっくりと扉を開ける。


そして外へ出た。


廊下を歩きながら、胸のあたりを押さえる。


痛みがそこを締めつけてくる。


――痛っ……


「なんだ、この痛みは?」


「確かに大きなダメージを受けたけど……」


「ああ、思い出した。」


「あの怪物に吹き飛ばされた時、肋骨を一本折られたんだった。」


「治ったのか?」


「もし治っているなら……」


「どうしてまだ痛い?」


「たぶん、これが貧乏モブに許された最低限の治療だったんだろう。」


「包帯を少し……」


「そして、ちょっと休む。」


「それで、この包帯の代金を請求しに来る奴が現れないことを祈るしかない。」


「だって僕は……」


「完全に無一文なんだから。」


「まあ……」


「完全に、ではない。」


「この国の状況が悪化して、逃げなければならなくなった時のために、少しだけ金を貯めてある。」


廊下の突き当たりにある扉へ辿り着いた。


ゆっくりと押し開ける。


冷たい風が中へ吹き込み、服と髪を揺らした。


外を見る。


空には花火が上がっていた。


ヒュゥゥゥゥ!


ドォォン!


ヒュゥゥゥゥ!


ドォォン!


――え?


「何が起きてるんだ?」


外へ一歩踏み出す。


寮は学院の裏手にある場所だった。


学院と隣接しているわけでもない……


かといって、遠くもない。


柔らかな芝生の上を歩く。


――ああ……


「こういう穏やかな時間って、本当にいいな。」


深く息を吸う。


そして、ゆっくり吐き出す。


――ふぅぅぅ……


「ああ……」


「この感覚、本当に最高だ。」


……


――おーい!


――フィン!


――やっと目を覚ましたかぁぁぁ!!!


そう。


その言葉によって――


僕の安らぎの時間は終わった。


振り返る。


そこにはオーリンが立っていた。


全身汗だく。


そして、身体からははっきりと熱気が立ち上っている。


「何だこれ?」


「大砲か何かか?」


オーリンがこちらへ近づいてくる。


――あははは……


――おはよう、オーリン。


――勇者様、調子はどうだ?


「正直……」


「目覚めた直後に最初に会う相手が勇者っていうのは、あまり嬉しくない。」


「だって、どうせ僕の一日はもっと酷くなる。」


オーリンは僕をじっくりと見た。


その目には、はっきりとした心配と不安が浮かんでいた。


「なんだ、その目は?」


「怖いんだけど。」


オーリン:


――大丈夫なのか?


――今、起きたばかりなのか?


「何て答えればいいのか分からない……」


「僕、ミイラみたいに包帯でぐるぐる巻きなんだけど。」


――あははは……


僕は手を頭の後ろへ回した。


――ああ。


――まだ少し痛む。


オーリン:


――ゆっくり呼吸しろ。


――それはよかった。


――おい!


「聞いてたのか!?」


「まだ痛いって言ったんだぞ!」


「どこがよかったんだよ!?」


「勇者様……」


「僕の前で、その傷だらけの鍛え上げられた身体を自慢するな。」


「まるで、その鍛え上げられた身体が僕に苦労話を聞かせてるみたいじゃないか。」


……


しばらくして……


僕たちは庭の周りを歩いていた。


――それで、オーリン……


――僕が寝てから、どれくらい経った?


オーリン:


――うーん……


――少なくとも、今日で五日目になる。


――五日?


――そういうことか……


「どうやら僕は気絶していたというより、完全に眠り込んでいたらしい。」


「でも、これだけ経っても……」


「まだ痛みが残っている。」


――それで、オーリン……


――あの戦いの後、何があったのか教えてくれ。


――それと、一番重要なのは……


――僕の名前、指名手配リストに載ってないよな?


オーリンは小さく笑った。


「くそっ!」


「こっちは本気で聞いてるんだぞ!」


オーリン:


――ははは……


――いろいろあったよ。


……


そして、オーリンはこの数日間に起きたことを話し始めた。


僕が眠っている間……


いや――


正確には……


眠り込んでいる間に。


負傷者は全員、治療を受けるために各地の治療施設へ運ばれた。


だが、僕は……


どの治療施設も、僕の身体を受け入れようとはしなかった。


当然だ。


僕は……


貧乏なモブキャラだから。


――あははは……


「くそっ。」


「何が面白いんだよ。」


……


だから……


僕はいまだに痛みを感じている。


そして、犠牲者がいなかったこと。


事情を聞ける人間もいなかったこと。


あの怪物の死体もなかったこと。


さらに、襲撃者について明確な情報すらなかったことから――


この一件は、ただの事故として処理された。


事故の原因は……


王国から遠く離れた貧しい地域の住民たち。


彼らは、自分たちのほうが都市の住民より優れていると考えているらしい。


「まあ……」


「こんな作り話を聞いたら……」


「誰だって、すぐに何かがおかしいと気づくだろう。」


「でも、どうやら最終的には、みんなこの話を信じることにしたらしい。」


「この結界がある限り……」


「怪物が王国へ侵入するなんて、ありえないからな。」


そして――


戦闘が起きた都市の広場は修復された。


人々の生活も元へ戻った。


まるで――


何も起こらなかったかのように。


秋祭りまで、あと二日しか残っていなかったこともあり……


今回の事件を受けて、広い範囲に兵士たちが配置された。


別の危険が起きないか警戒するためだ。


「なるほど……」


「どうやら責任者たちは、ただの一般人が騒ぎを起こしただけではないと分かっているらしい。」


「でも、それを民衆に知られるわけにはいかない。」


「僕の元いた世界でも、同じようなことがあった。」


「どうやら、そこに違いはないらしい。」


「人々を無知なままにしておく……」


「そのほうが、彼らにとっては都合がいい。」


「そうして人々を、それぞれの階層の中に留めておく……」


「その一方で、責任者たちは本当の守護者であるかのように振る舞う。」


僕たちは学院の中で立ち止まった。


オーリンが僕を見る。


――あ……


――一つ、言い忘れていた。


――本当に?


――何だ?


オーリン:


――イラリア・コンティ・グラン嬢が……


――君が目を覚ますのを待っていた。


――君と会うために。


……


僕は真剣な目を細めた。


「なるほど。」


「どうやら僕は、自分の身体をもう一度眠りにつかせる必要があるらしい。」


オーリンを信頼の眼差しで見る。


――オーリン……


――君は僕の友達だよな?


――友達っていうのは、危機的状況では互いに支え合うものだ……


――ああっ!


――だから、もし彼女が僕のことを聞いてきたら……


――僕は死んだと伝えてくれ。


――あるいは、まだ目を覚ましていないとか。


――とにかく、彼女に会わずに済むようなことなら何でもいい。


……


――フィン!!


……


――だから言っただろ、オーリン……


――あのゴリラには、僕が目を覚ましたこと自体を知られちゃいけないんだ。


オーリンが僕の後ろを指差した。


その顔に緊張が走る。


――おい、オーリン……


――聞いてるのか?


――僕の命は君の手にかかってるんだぞ!


――無視するな!


そして、震えた声で――


――おはようございます、イラリア嬢。


――こんにちは、オーリン。


……


彼女の気配が、ゆっくりと膨れ上がっていく。


そして僕は……


正直、この状況でどう反応するのが普通なのか分からなかった。


こういうことが主人公とヒロインの間で起こるアニメを、何本も見てきた。


そして、僕はそれを笑っていた。


でも――


自分自身が体験するとなると……


想像を遥かに超えている。


結局……


僕はモブだ。


モブキャラがこんな場面を経験するなんて……


想定していなかった。


後ろからイラリアが僕を見る。


その笑顔には、はっきりとこう書いてあった。


「殺す。」


――おはよう、フィン。


――どうやら、思っていたより元気になったようね。


……


「さて。」


「何も言うことが見つからない。」


「僕の脳が完全に停止した。」


「頭の中に赤い危険マークが浮かんでいるような感覚だった。」


「警報。」


「警報。」


「警報。」


……


そして、その瞬間――


僕の頭の中にいる僕たちの一団が、答えを探し始めた。


散らばった書類。


燃え上がるゴミ箱。


あちこちを走り回る人々。


そして、別の僕たちが叫ぶ。


――助けて!


――ここから出してくれ!


――出してくれぇぇぇ!


すると、誰かが叫んだ。


――あああっ!


――死にたくない!


……


突然――


僕とそっくりな一人の僕が前へ出てきた。


自信に満ちた様子で。


頭の中が大混乱に陥っているというのに……


彼の足音だけは、はっきりと聞こえていた。


一歩。


そして、もう一歩。


やがて、小さな壇上の上に立つ。


彼は混乱に包まれた周囲を見渡した。


そして、深く息を吸う。


――コホン。


――コホン。


――えーっと、フィン諸君……


――フィン……


――ここにいるフィン……


――あっちのフィン……


――そして、そこのフィンも……


――どうか、落ち着いてください。


――そして、パニックになるのをやめてください。


静寂が訪れた。


すべてのフィンが、彼を見る。


……


彼こそが――


リーダーだった。


フィン隊長は深く息を吸った。


――これまで、我々は多くの困難を経験してきました。


――それでも、我々は一つの集団として生き残ってきた。


――より良い未来のために。


彼らの目が少しずつ穏やかになる。


――我々の任務は、あらゆる状況に適切な答えを出すことでした。


しかし――


突然、彼の表情が変わった。


全員を真剣な目で見つめる。


――どうやら、我々は道の終わりまで来てしまったようです。


帽子を脱ぐ。


そして、静かに握りしめる。


――皆さんと共に働けたことを、私は誇りに思います……


――ここで生きることが、どれほど過酷なものだったとしても。


――そして、多くの仲間が我々のもとを去っていきました……


――死んだ者もいます。


――しかし、今……


――私は誇りに思っています。


――なぜなら、我々は自分たちが到達できる限界まで来たのですから。


一瞬、沈黙する。


そして、帽子を少し持ち上げる。


――だから……


――最後の演説を始めます。


――この船は沈みます。


――手遅れになる前に、全員この船から脱出してください。


一人のフィンが手を上げる。


――隊長……


――あなたはどうするんですか?


隊長はしばらく黙っていた。


そして帽子を放り投げる。


誇らしげに笑う。


――もちろん……


――この船が沈む前に、私は辞職して逃げます。


……


そして、再び叫び声が上がった。


――逃げろ!


――逃げろ!


――非常口だ!


――急げ!


……


「さて。」


「僕の頭の中で何が起きていたのかは、見てもらったな。」


「だから、現実の僕がどう行動したのかも見せてやろう。」


そう……


僕はその場で、岩のようにドサッと倒れた。


意識を失って。


僕の頭が限界に達し――


僕を救える答えを、一つも見つけられなかったからだ。

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