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起きたことと……起きなかったこと


深く息を吸った。


そして、前へ手を伸ばす。


目を閉じる。


……


感じる。


そこにある。


無数の核。


……


どれも、かすかに光っている。


弱い。


それでも――


はっきりと分かる。


……


鎖に繋がれている。


……


「……なんで、こんな鎖があるんだ?」


……


「いや、フィン。」


「今は考えるな。」


「そんなことを考えてる場合じゃない。」


……


今、俺が考えるべきなのは一つだけだ。


……


「俺自身を……門にできるか?」


「このエネルギー全部を通すための門に。」


……


その瞬間。


身体に痛みが走った。


おそらく怪我のせいだ。


……


いや。


たぶん、それだけじゃない。


……


「でも……ここで手を抜いたら……」


「俺の命が危ない。」


……


「まあ……」


「今さら『命が危ない』なんて言ってもな。」


……


「ずっと危ないじゃないか。」


……


ただ。


今回は――


その危険度が違う。


……


「ここは……」


「生きるか、死ぬかの境目だ。」


……


「この数瞬を乗り切るか……」


「それとも、ここで終わるか。」


……


「……ふぅ。」


……


「これが今の俺か。」


「数秒間、エネルギーが外へ漏れ出すのを抑えるだけで精一杯だ。」


「でも……もう長くは持たない。」


……


「やっぱり……」


「少し難しいな。」


……


俺から一つの地点へエネルギーを送る。


それだけなら簡単だ。


……


「でも、一つの地点から……」


「この大量のエネルギーを分配するとなると……」


「たぶん無理だ。」


……


必要なのは――


……


「全部を受け止めて……」


「それを好きな場所へ分配できる何か。」


……


「考えろ、フィン。」


「今の俺に使えるものは何だ?」


……


「早く。」


「もっと早く考えろ。」


……


そのとき。


鼻から温かいものが流れた。


……


「……」


……


「うん。」


「やっぱり限界が近い。」


……


「くそ。」


「どうして俺みたいなモブキャラの人生には、こんなにも不運が詰め込まれてるんだ?」


……


「普通、モブってもっと平和に生きるものだろ。」


……


そして――


思い出した。


……


あの瞬間を。


……


キューブの中心からエネルギーが一気に噴き出したとき。


それが小さなパーツを通って――


あらゆる方向へ反射していった。


……


「……待て。」


……


「もしかして……」


……


「これ、使えるんじゃないか?」


……


「分からない。」


……


「でも……」


「今のキューブは、どうやってエネルギーを放出している?」


……


「中心から出して……」


「小さなパーツを通して……」


「それを広げている。」


……


「なら……」


「その逆は?」


……


「一つの場所でエネルギーを受け止めて……」


「そこから、指定した方向へ送り出す。」


……


「……やってみるか。」


……


「ふぅ……」


……


イメージする。


……


キューブの核から溢れ出すエネルギー。


それが小さなパーツを通り――


上へ。


下へ。


後ろへ。


そして、あらゆる方向へ。


……


だが。


今回は、その光景を想像するんじゃない。


……


「機能だ。」


……


「俺が欲しいのは……」


「一つの地点。」


……


「全部のエネルギーを受け止めて……」


「それを別の方向へ反射する地点。」


……


「そうだ。」


……


「一つのパーツ。」


……


「鏡みたいに……」


「受け取ったエネルギーを反射する。」


……


「でも、形は……」


「キューブ。」


……


「小さなキューブだ。」


……


「内部にエネルギーを集中させて……」


「俺が指定した場所へ送り出す。」


……


その瞬間。


空中に光の糸が生まれた。


……


一本。


……


また一本。


……


散らばっていたエネルギーが、少しずつ一点へ集まっていく。


……


もっと。


……


もっと。


……


糸同士が絡み合う。


交差する。


押し合い――


そして、一点へ収束する。


……


次の瞬間。


……


ポン。


……


小さなキューブが現れた。


淡い光を放っている。


静かに。


ただ空中に浮かんでいる。


……


俺は目を開いた。


――これが……?


……


「……本当にできた。」


……


「いや。」


「できるとは思ってたけど……」


「まさか、本当にできるとは思わなかった。」


……


「まあ、いい。」


「まずは試す。」


……


俺は手を上げる。


……


このエネルギーは俺の身体を通っている。


そのせいなのか――


まるで自分の身体の一部のように感じる。


……


筋肉。


腕。


指。


……


意識すれば動かせる。


……


俺はキューブの核へ意識を向けた。


そこから流れ出しているエネルギーを――


掴む。


……


いや。


……


「違う。」


「掴むんじゃない。」


……


「操る。」


……


俺へ向かって流れていたエネルギーの向きを変える。


もう一方の手を小さなキューブへ向けた。


……


――来い。


――来い。


……


「……頼むぞ。」


……


しばらく何も起きなかった。


……


だが。


……


少しずつ。


……


エネルギーの流れが変わる。


俺から離れていく。


そして――


小さなキューブへ吸い込まれていく。


……


キューブが光る。


……


強く。


……


さらに強く。


……


「……爆発するなよ?」


……


「頼むから。」


……


「はぁ……」


「はぁ……」


「はぁ……」


……


身体から何か巨大なものが取り除かれたような感覚。


……


少しだけ楽になった。


……


でも――


まだ終わりじゃない。


……


「次だ。」


……


「『感知』スキル。」


……


意識を広げる。


……


一人。


……


二人。


……


十人。


……


数十人。


……


兵士たち。


街のあちこちに散らばっている。


……


一人。


また一人。


……


位置を捉える。


……


俺は手を上げた。


……


小さなキューブから光の糸が伸びる。


……


一つの面に当たる。


反射する。


……


そして分かれる。


一本。


二本。


……


十本。


……


さらに――


数十本。


……


それぞれが、俺の捉えた兵士たちへ向かっていく。


……


「……すごい。」


……


「本当にできた。」


……


「俺、天才なんじゃ……」


……


「いや。」


「今そんなこと考えてる場合じゃない。」


……


「ゴホッ……」


「ゴホッ……」


「ゴホッ……」


……


咳き込む。


……


そして――


見える。


さっきまでより、ずっと鮮明に。


……


あの核が。


……


脈打っている。


……


強く。


……


そして、そこへエネルギーが流れ込んでいく。


……


キューブの中のエネルギーが減っていく。


……


さらに。


……


もっと。


……


「……動いてる。」


……


「本当に動いてるぞ。」


……


「俺がやったんだ。」


……


でも。


……


まだ終わらない。


……


エネルギーは残っている。


まだ大量に。


……


そして俺には――


もう、ほとんど力が残っていない。


……


「……誰か。」


「もう一人、いるはずだ。」


……


「もっと大量のエネルギーを受け止められる奴が。」


……


その瞬間。


……


何かを感じた。


……


「……ん?」


……


あのゴリラ。


……


イラリア。


……


「何だ……?」


「この変な感覚……」


……


「今……」


「何かを見たような……」


……


「いや。」


「見たのか?」


……


「本当に……?」


……


頭の奥がズキリと痛む。


……


「……分からない。」


「もう何が何だか分からない。」


……


額に手を当てる。


……


「この『感知』スキル……」


「俺みたいなモブには、ちょっと荷が重すぎるんじゃないか?」


……


でも。


……


それだけじゃない。


……


「……待て。」


……


「なんで俺は……」


「イラリアの魔力核が……」


「爆発したように感じた?」


……


思考が止まる。


……


「……いや。」


「爆発してない。」


……


「でも……」


「爆発寸前だ。」


……


「……何だ、これ?」


……


「どうして俺は……」


「『爆発した』と『爆発していない』を……」


「同時に感じてる?」


……


分からない。


……


俺は後ろを振り返った。


……


そして、一瞬だけ動きを止める。


……


「何が起きてるのかは分からない。」


「でも……」


「これは絶対に良いことじゃない。」


……


感知範囲を広げる。


……


さらに。


……


以前、あの操っている奴の存在を感じ取ったときと同じところまで。


……


周囲の時間は、相変わらずゆっくり流れている。


……


だが――


これがいつまで続くのか分からない。


……


「急げ、フィン。」


「この感覚が消える前に。」


……


さらに感知を広げる。


……


頭が割れそうになる。


……


音。


……


空気の流れ。


……


エネルギー。


……


すべてが一度に頭の中へ流れ込んでくる。


……


そして――


捉えた。


……


魔力核。


……


あった。


……


まだ爆発していない。


……


だが。


その周囲を覆っていた鎖が――


一つ。


……


また一つ。


……


次々と千切れている。


……


そして魔力核そのものが――


震えている。


……


「……くそ。」


「本当に爆発寸前じゃないか。」


……


「この距離から……」


「何かできるのか?」


……


「分からない。」


……


「でも……」


「やるしかない。」


……


目を閉じる。


……


意識をそこへ集中させる。


そして――


知っているものを想像する。


……


小さなキューブ。


……


さっき兵士たちへエネルギーを送ったもの。


……


「もし、ここにも一つ作れたら……」


「そして、あそこへ繋げられたら……」


……


「少しぐらいなら、エネルギーを送れるかもしれない。」


……


「もちろん。」


……


「別に、こいつを助けたいわけじゃない。」


……


「こいつに何かあったら……」


「俺も死ぬ。」


……


「それだけだ。」


……


「他に理由なんてない。」


……


光の糸が空に現れる。


……


一本。


……


二本。


……


そして――


数十本。


……


それらが一つに集まる。


絡み合う。


縮んでいく。


……


「くっ……」


……


歯を食いしばる。


……


「……くそ。」


「これは……きつい。」


……


「俺が欲しかったのは……」


「ただの平穏な生活だったのに。」


……


「でも……」


「この騒動を生き残らない限り……」


「そんなものは手に入らないらしい。」


……


一つ目。


……


二つ目。


……


三つ目。


……


小さなキューブが次々と形成されていく。


……


俺のいる場所から。


……


感知した場所へ。


……


一つ。


……


また一つ。


……


そして三つ目が繋がった瞬間――


エネルギーの流れが、わずかに安定した。


……


「そうだ……」


……


「そのまま。」


……


「一つずつ。」


……


そして――


最後のキューブが到着した。


……


魔力核のすぐそばへ。


……


俺は息を止めた。


……


「……届いた。」


……


「よし。」


……


「でも……」


「ここからどうする?」


……


手を伸ばす。


目を閉じる。


そして、残ったエネルギーを送り込む。


……


エネルギーが走った。


……


一つ目のキューブへ。


……


反射。


……


次のキューブへ。


……


反射。


……


さらに次へ。


……


それぞれのキューブがエネルギーの一部を受け止め――


次のキューブへ送り出していく。


……


一つ。


……


また一つ。


……


そして最後。


……


エネルギーが魔力核へ到達する。


……


俺は深く息を吸った。


……


集中する。


……


さらに。


……


そして――


見えた。


……


魔力核。


……


その周囲の鎖。


……


「……問題がある。」


……


「エネルギーは送れた。」


「でも……」


「こいつの核は、元々爆発寸前だ。」


……


「つまり……」


……


「俺、自分でこいつを爆発させようとしてないか?」


……


「……」


……


「そうだ。」


……


「俺、馬鹿だ。」


……


「いや……」


「もしかして、俺の殺人本能がついに目覚めたのか?」


……


「最初の犠牲者は、あのゴリラ。」


……


「……ダメだ。」


「考えろ、フィン。」


……


俺は小さなキューブを見る。


……


「こいつらは、さっきエネルギーを受け止められた。」


……


「なら……」


「この余分なエネルギーも、受け止められるんじゃないか?」


……


「分からない。」


……


「でも、他に方法はない。」


……


「まず、余分なエネルギーをキューブの中へ入れる。」


……


「それで爆発を抑える。」


……


「そして……」


「安定した状態で、もう一度送り返す。」


……


「……よし。」


……


「これでいく。」


……


不思議なことに――


……


「今回は……」


「それほど難しく感じない。」


……


俺は深く息を吸った。


……


そして、始める。


……


余分なエネルギーをキューブの内部へ押し込む。


……


小さな面が光り始める。


……


強く。


……


もっと強く。


……


俺は一瞬だけ止まった。


……


「頼む。」


……


「爆発するなよ。」


……


待つ。


……


……


爆発しない。


……


「……よし。」


……


「できる。」


……


「なら……続ける。」


……


エネルギーを循環させる。


方向を変える。


そして――


再び送り出す。


……


今度はゆっくりと。


……


少しずつ。


……


魔力核へエネルギーが流れ込んでいく。


……


一気にではない。


……


少しずつ。


……


本当に少しずつ。


……


すると――


魔力核の揺れが弱くなっていく。


……


「……」


……


一度止める。


……


確認する。


……


まだ大丈夫だ。


……


「よし。」


……


もう一度。


……


さらに。


……


もっと。


……


やがて――


魔力核の揺らぎが収まっていく。


……


「そうだ。」


……


「ああ……」


「安定してきた。」


……


エネルギーを送り続ける。


……


もっと。


……


もっと。


……


そして――


魔力核が満たされる。


……


「……」


……


止まった。


……


静寂。


……


「……成功したのか?」


……


分からない。


……


でも。


……


一つだけ、はっきりと分かることがある。


……


ずっと俺を追いかけていた、あの妙な感覚が――


消えた。


……


まるで。


……


俺が見たあの瞬間そのものが……


最初から存在しなかったかのように。


……


「……変だな。」


……


そのとき。


……


指が動いた。


……


「……お?」


……


「そうか。」


「意識を取り戻し始めてる。」


……


そして――


小さなキューブが、一つずつ消えていく。


……


一つ。


……


また一つ。


……


やがて、すべて消えた。


……


「……終わったのか?」


……


俺は上を見る。


……


ルービックキューブから伸びていた小さなパーツが――


ゆっくりと戻っていく。


……


一つ。


……


また一つ。


……


元の場所へ収まっていく。


……


そして。


……


完全なキューブへ戻った。


……


そのまま、俺の前へ静かに降りてくる。


……


その瞬間。


……


妙な感覚がした。


……


「俺から切り離されていたものが……」


「戻ってきた。」


……


「……やっと。」


……


俺は広場を見る。


……


瞬きを一度。


……


そして――


時間が、元の速度へ戻った。


……


ドォォォン!!


……


砂埃が舞い上がる。


地面が砕ける。


周囲の空気が一気に動き出した。


……


サムラくんが俺を見る。


……


「……あれ?」


「さっきまで俺の後ろにいなかったか?」


……


「どうやってこんなところまで……」


……


まあ、いい。


今はそれより――


……


俺は深く息を吸う。


――おい、ポンコツ。


――戻ってきたか?


……


返事はない。


……


「……ん?」


……


――メンテナンス中か?


……


「まさか、壊れた?」


……


「まあ……」


「そもそも役に立ってた記憶もないけど。」


……


「でも……」


「今はこれで十分だ。」


……


「さて。」


「そろそろ、この騒動を終わらせよう。」


……


「もう、俺も長くは持たない。」


……


ぐるぐる。


……


頭が回る。


……


地面も回る。


……


空も回る。


……


「それに……」


「この身体の中の傷。」


「まだ痛い。」


……


「『痛みへの適応』があっても……」


「どうやら、このスキルにも限界はあるらしい。」


……


「他のスキルも手に入れた。」


「それに、レベルもあの妙な測定値で上がっている。」


……


「なのに……」


「案内役の奴から……」


「『痛みへの適応が成長しました』なんて、一度も聞いたことがない。」


……


「……ゴホッ。」


「ゴホッ……」


……


口から血が出る。


……


鼻からも。


……


俺はすぐに拭った。


……


「……」


……


「正直……」


「ちょっと怖くなってきた。」


……


「こんなに血を吐いたの……」


「人生で初めてだぞ。」


……


俺はサムラくんを見る。


――おい、坊ちゃん。


――もう隠れてる場合じゃないぞ。


――そろそろ主役の舞台へ戻れ。


……


「ゴホッ……」


「ゴホッ……」


……


サムラくんが俺を見る。


――お前、大丈夫なのか?


……


「……くそ。」


……


――意味のない質問はするなって言っただろ。


……


サムラくんは両手を上げた。


そして、自分の手を見る。


……


その身体の周囲を――


マナが流れている。


……


「……ん?」


「ちょっと待て。」


……


「身体が……」


「マナで満ちてる。」


……


サムラくんは自分の身体を見た。


そして俺を見る。


――なんだか……身体の力が全部戻ったみたいだ。


……


「いや。」


……


「これは普通の回復じゃない。」


……


「普通の回復なら……」


「時間が必要だ。」


……


「一日。」


「休む。」


「飯を食う。」


「寝る。」


「……あと、なんか色々。」


……


「でも、これは……」


……


「まるで、エネルギーを一気に注ぎ込まれたみたいだ。」


……


「しかも……」


「俺にも分かる。」


……


「純粋だ。」


「それに……安定してる。」


……


周囲では、兵士たちも互いの顔を見始めていた。


……


一人が自分の身体を見る。


――何が起きてる……?


――身体の中に力が溢れてくる。


……


別の兵士が声を上げる。


――俺もだ!


……


さらに別の兵士。


――俺も!


――これなら、また動ける!


……


一人が自分の身体を触る。


――待て。


――俺の骨が……


――痛くない!


……


「……何が起きたんだ?」


……


そのとき。


オーリンが激しく咳き込んだ。


――ゴホッ!


――ゴホッ!


……


そして、ゆっくりと顔を上げる。


――みんなに……何が起きたんだ?


……


周囲を見回す。


――どうやら……みんな力を取り戻したみたいだな。


……


俺はサムラくんへ叫ぶ。


――行け!


――オーリンを支えろ!


――治せ!


――強化でも何でもいい!


――お前にできることを全部やれ!


――早く!


……


サムラくんはすぐに両手を上げた。


――分かった。


……


そして、オーリンへ手を向ける。


――不滅なる魂よ……


――汝を讃え、我が仲間を癒す祝福を求める。


……


オーリンの周囲に魔法陣が浮かび上がる。


……


柔らかな光が彼の身体を包み込んだ。


……


そして――


傷が少しずつ癒えていく。


……


「……よし。」


……


「最初は……」


「オーリンにも少しエネルギーを送ろうと思ってた。」


……


「でも、あいつの中には魔力核がなかった。」


……


「たぶん、それが理由だ。」


「魔法を使えないのは。」


……


「きっと、あの日先生が言ってたのも……」


「このことなんだろうな。」


……


ゆっくりと息を吐く。


……


「でも……」


……


「それでも。」


……


「俺たちは……戻ってきた。」


……


サムラくんが元気を取り戻した。


兵士たちも立てる。


オーリンも回復している。


……


なら。


……


「この坊ちゃんが動けるようになった以上……」


……


「残るのは――」


……


「あのゴリラだけだ。」


……


「こいつがちゃんと仕事をしてくれれば……」


「俺も、もう一度スキルを使えるかもしれない。」


……


そして――


その頃。


別の場所では。


……


イラリアが立っていた。


……


静かに。


……


道化師を見つめている。


……


その道化師は――


何かを感じ取った。


……


ほんのわずかな変化。


……


だが。


確かに――


何かが変わった。


……


道化師の目が、わずかに見開かれる。


……


そして――


……


パン。


……


パン。


……


「……」

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