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友との出会い、そして生存への試み


さて……。


ここまでに起きたこと。


そして、あの役立たずのお坊ちゃんから聞かされた話。


ここで、俺が最後に導き出した結論を整理しておこう。


まず一つ。


俺の作戦は、すべて尽きた。


二つ目。


誰かが俺を馬鹿にしている。


あの坊ちゃんが、俺を置いていかないために魔力が切れたなんて嘘をついているのか。


それとも――


いつも自信満々に自分を誇っている、あのポンコツが……


長いことメンテナンスに入っていないのか。


どちらにしても――


最悪の状況だ。


こいつの解析は、どう考えても百パーセント間違っている。


間違いない。


<通知。>


ガイドの声が、いつも通り冷静に響いた。


<ガイドはすでに対象について解析を行っています。>


<現在の解析精度:69%。>


……


正直。


俺は黙るべきだった。


本当に。


今回は黙っておくべきだった。


ふむ……。


解析精度、六十九パーセント?


この状況で、また一人、俺を馬鹿にしようとしている奴を発見したとしか言いようがない。


それに――


正直、あのポンコツに怒る気力すら、もう残っていなかった。


俺は本当に、頭がおかしくなりそうだ。


だから――


フィン。


落ち着け。


そして、この最悪な運命を受け入れろ。


<通知。>


<この解析精度を向上させる方法があります。>


「あはははは!」


俺は笑った。


「もちろんだよ、このポンコツ」


「好きなだけ提案してくれ」


「こっちは本当に追い詰められてるんだからな」


俺は深く息を吸った。


「だから、お前のやり方に従ってやるよ」


<通知。>


<フィンは速やかに街の中央部へ向かってください。時計塔があります。>


……


正直。


もう俺には、何も考える余裕がなかった。


なら――


命令に従う時間だ。


だから、俺の返事は一つだけだった。


「……分かった」



---


数分後――


俺はようやく、時計塔の近くにある街の中央部へとたどり着いた。


周囲を見渡す。


そこには、大勢の人々がいた。


子供。


老人。


女性。


男性。


どこにでもある、ごく普通の光景。


他の人間が見れば、そう見えるだろう。


だが――


俺の目には、もう違って見えていた。


そこにいるのは、女性でも子供でも老人でもない。


被害者だ。


何も知らないまま。


正体すら分からない何かに、これから踏み潰されるかもしれない被害者たち。


「あはははは……」


なぜ、もっと面白いことになると思う?


もちろん――


俺自身が、その何かをここまで誘導した張本人だからだ。


だから……


もし、どうにかして俺だけ生き残れたとしても。


あの頭の中にあるスキルが、こいつら全員を殺す原因になったと知れたら――


その後、法律が俺を見逃してくれる保証なんてどこにもない。


そもそも、誰が俺の話なんて信じる?


俺みたいなモブキャラの言葉を。


力もない。


地位もない。


おまけに――


頭の中にあるスキルと会話しているせいで、最初から自分でも自分が狂っているんじゃないかと疑っている。


俺は空を見上げた。


太陽は、ゆっくりと姿を消し始めていた。


「それじゃあ、お前……」


俺は少しだけ言葉に詰まった。


「一つだけ聞いていいか?」


「……お前、本当に頭は大丈夫か?」


返事は、すぐに返ってきた。


<ガイドはスキルであり、人間ではありません。>


<利用可能な情報に基づき、可能性および適切な対策を提示することが、その役割です。>


……


「うわぁ……」


正直。


言わないでおこう。


だが――


その答えを聞いても、俺の不安はまったく晴れなかった。


そのとき――


背後から、何かが聞こえた。


足音。


そして、兵士の声。


「おーい! そこの二人!」


俺はその場で足を止めた。


「ここで何をしている?」


俺は立ち止まった。


「……」


「おい」


……これ。


もしかして――


俺の人生、ここで終わった?


別の兵士が声を張り上げる。


「お前たちは、この襲撃の救援に来たのか?」


「……は?」


なるほど。


いい質問だ。


俺たちは本当に、この襲撃の救援に来たのか?


もちろん違う。


俺はただ、脇役として普通の人生を送りたいだけの人間だ。


だが――


そんな答えが通じるとは思えない。


なら、ここは即興で乗り切るしかない。


そう。


こういう緊急事態にこそ――


男には、その場を切り抜けるための即興力が必要なんだ。


俺は一切の迷いを感じさせない自信満々の顔で、兵士たちを見る。


そして、深く息を吸った。


十分に。


深く。


<通知。>


<魔物が接近しています。>


……


……さて。


どうする?


俺はサムラ君を自分の隣へ引き寄せた。


「ここにいる俺の友人が説明します」


「まず俺たち、犯罪者なのか?」


サムラ君は、しばらく俺を見つめていた。


その視線だけで――


彼が言いたいことが山ほどあるのは分かった。


だが、どうやら今の状況では何も言えないらしい。


ガイド……。


次に俺が何を言うか、モールス信号で彼に伝えてくれ。


<通知……>


よし。


俺は無邪気な顔で、サムラ君にウインクした。


そして――


頭の中にあるすべての思いを伝えるため、モールス信号を完璧に使った。


『俺たちは友達だ。俺が安全に隠れられる場所を見つけるまで、時間を稼いでくれ』


彼は静かに親指を立て、それから頷いた。


……


よし。


どうやら、今のところは問題なさそうだ。


サムラ君は自信満々に前へ進み出た。


そして、自分の名前と姓を兵士たちに告げる。


それだけで――


彼は疑いの目から外れた。


そして、最後の質問が来た。


「サムラリス様、この者はお知り合いですか?」


そう。


これこそ、俺が待っていた質問だった。


だが……


実際に返ってきた答えは、俺が期待していたものとはまったく違った。


サムラ君は、冷静に頷いた。


「いや。知らない」


……


しかも。


「こいつは、今回の襲撃の容疑者の一人なんじゃないかと思う」


……


そう。


正直なところ……


あの瞬間、自分が何を感じたのか。


それを表現できる言葉が見つからなかった。


次の瞬間――


俺は大勢の兵士たちの前で拘束され、地面に跪かされていた。


そして、首元には一本の剣が突きつけられている。


背後から、兵士の厳しい声が飛んできた。


「仲間の居場所を吐け、このテロリスト!」


「……はぁ」


……うん。


さすがに事態の深刻さを実感した。


俺は前を見つめた。


「俺に仲間なんていない」


そして、真剣な顔で付け加える。


「仲間がいたなら……俺は今ごろ、とっくに死んでるよ」


――もちろん。


今の言葉は、すべてモールス信号で叫んでいた。


『このクソガキィィィ! 何してくれてんだよ!?』


『俺が言ったのは、逃げるための時間を稼いでくれってことだぞ!』


『俺の寿命を縮めろなんて、一言も言ってないだろぉぉぉ!』


そのとき――


ドゴォォォン!!


街の中心部にある建物の壁が、突然吹き飛んだ。


轟音が響き渡る。


そして――


一瞬にして、その場は大混乱に陥った。


兵士たちが一斉に動き出す。


「何が起きた!?」


「今のは何だ!?」


「くそっ! ここは砂埃がひどすぎて、何も見えない!」


「住民を守れ!」


そんな混乱の中――


サムラ君が俺のそばへ身を屈めた。


そして、落ち着いた声で囁く。


「それで……作戦は成功したのか?」


「敵の居場所は分かった?」


……


……は?


こいつ、何を言ってるんだ?


俺は小声で呟いた。


「もう時間がない」


「時間?」


「この少年は何を言っている!?」


そして、俺は頭の中で叫んだ。


『おおおおい! この馬鹿ガイド!』


『こいつに何を伝えたんだよ!?』


返ってきた声は、相変わらず冷静だった。


<通知。>


<サムラリスには、対象を制御している敵を捜索するため、フィンのために時間を稼ぐよう指示しました。>


…………。


………………。


沈黙。


……


たぶん。


それは俺が頼んだことじゃない。


俺が言いたかったのは――


『俺が安全に隠れられる場所を探すまで、時間を稼いでくれ』


だったはずだ。


なのに、なぜ逆になっている!?


すると、ガイドは即答した。


<フィンは隠れることができません。>


<この対象は、現在フィン個人を追跡しています。>


<そのため、フィンがどこへ移動しても、対象は追跡を継続します。>


……


そういうことか。


……いや。


待て。


その理由は理解できる。


「……頼むから」


<通知。>


<なぜなら――>


そこで、ガイドの言葉が一瞬途切れた。


俺は考え始めた。


簡単に言えば――


何か一つ、足りない。


少し前まで話を戻そう。


あの馬鹿は言っていた。


自分の魔力は、普段なら半日か、一日くらいは持つと。


なのに――


今回は、あまりにも早く魔力が尽きた。


なぜだ?


そう。


ここで俺は、その理由に気づいた。


俺が持っている――


あのキューブのスキル。


キューブ。


それ自体が、もともとスキルだった。


だが、まったく理由は分からない。


ずっと――


サムラ君の魔力を吸収していたのだ。


……


そう。


どうやら最初から、問題は誰かにあったわけじゃない。


問題だったのは――


俺自身だった。


俺は知らないうちに……


物語の中心にいたのだ。


……いやぁ。


正直、今の俺には一つだけ言いたいことがある。


いや。


一つの言葉ですらないかもしれない。


それでも――


言わせてもらおう。


「――いったい俺が何をしたっていうんだよぉぉぉぉぉ!?」


なあ。


こんな――


絶望的で、惨めで、何の役にも立たない俺の人生が……


まさか、こんな形で終わるっていうのか?


「ひっ……」


「ひっ……」


くそ……。


どうして俺は、最初から――


頭の中で話しかけてくるスキルなんかを信じたんだ?


そのせいで、自分がただの狂人なんじゃないかと思うようになったじゃないか。


「ひっ……ひっ……」


くそっ!


もういい。


もう十分だ。


こんな絶望的な悪夢には、もううんざりだ。


頼むから……


誰か俺を起こしてくれ。


「フィン」


……


そのとき。


まったく安心できない声が、俺の思考を遮った。


俺の体が固まる。


そして――


ゆっくりと後ろを振り返った。


「……おお」


顔から血の気が引いていく。


そう。


彼女だ。


青く長い髪。


腰には、いつもの剣。


そして――


こんなタイミングでは、絶対に見たくなかった青い瞳。


紹介しよう。


俺が勝手にそう呼んでいる――


ゴリラ女王。


エラリア。


「……こんなところで何をしているの?」


そして、彼女は俺を見る。


「それに……どうしてあなた、拘束されているの?」


俺はゆっくりと前へ顔を向けた。


そこでは――


兵士たちが、何か正体の分からない存在に吹き飛ばされ、次々と宙を舞っていた。


あちこちから悲鳴が上がる。


街中に――


恐怖と混乱が広がっていた。


だが、正直なところ……


周囲で何が起きているのかなんて、俺はあまり気にしていなかった。


なぜなら――


俺は今にもテロリストとして扱われようとしていたからだ。


いや。


実際には……


俺が弁明する暇すら与えられないまま、すでに犯人扱いされていた。


だから――


本当は、今からやることなんて絶対にやりたくない。


だが……


仕方がない。


こんなチャンス、毎日転がっているわけじゃない。


俺は全力で地面に額をつけるほど深く頭を下げた。


そして――


ぼろぼろと、大粒の涙を流した。


ついでに、鼻水まで垂れてきた。


「エラリア様ぁ……!」


「ひっ……ひっ……」


「どうか、この哀れなモブキャラをお許しください……!」


「俺……ひっ……ひっ……」


ごくり。


俺は唾を飲み込んだ。


「俺はただ……自分の命を守ろうとしていただけなんです……!」


そして――


これは絶対に秘密にしておこう。


今の俺は演技なんかしていない。


本当に……


本当に……


小さな子供みたいに泣いている。


「エラリア様ぁ……!」


「俺は無実の罪を着せられたんです!」


俺は震える息を吐いた。


「確かに、俺がいつも問題を引き起こしているのは分かっています……!」


「でも……!」


「好きでやってるわけじゃないんですよぉぉぉ!」


……


正直。


もう、この程度のことは何とも思わなくなっていた。


俺の尊厳なんて――


あってないようなものだからな。


だから……


今は命のほうが大事だ。


俺は涙を流しながら顔を上げた。


「エラリア様……」


「俺を……助けてください!」



---


エラリアは、しばらく俺を見つめていた。


どうやら――


何が起きているのか、まったく理解できていないらしい。


やがて彼女は、俺から視線を外した。


そして、目の前に広がる破壊の跡へ視線を向ける。


そこでは、兵士たちが必死になって状況を抑え込もうとしていた。


しばらくして――


彼女は再び、サムラ君へ視線を戻した。


「あなた……確か、アリストファン家の後継者だったわね?」


サムラ君は淡々と答えた。


「まだ、その立場を受け入れたわけではありません、エラリア様……」


そして、静かに続ける。


「ですから、そう呼ばないでください」


……


正直。


俺は別の展開を期待していた。


エラリアが怒り――


そして、この馬鹿の骨をへし折る。


そんな展開を。


それなら俺も、少しくらいスッキリできたかもしれない。


だって、こいつはさっき俺を殺しかけたんだぞ?


確かに、俺の頼み方にも問題はあった。


だが――


「時間を稼いでくれ」という言葉は、普通こういう意味じゃないだろ!


俺が生きていられるはずだった時間まで削り取るなんて、誰が頼んだ!?


しかし……


どうやら、このゴリラは――


俺以外には怒らないらしい。


くそ。


どうしていつも、不幸になるのは俺なんだ?


不公平すぎるだろ。


そんな、どうでもいいことを考えている間にも――


サムラ君は、これまでに起きたことをエラリアへ手短に説明していた。


そして――


以前よりも周囲の魔力の流れをはっきり感じ取れるようになった《知覚》のスキルのおかげで、俺にも一つだけ分かったことがある。


俺は――


本来なら絶対に巻き込まれるはずのなかった状況に、完全に巻き込まれていた。


だから……


俺は正しい行動を取った。


もう一度、深く頭を下げる。


額が地面につく。


「本当に……すみません……」


「こんなところにいて……本当に申し訳ありません……」


エラリアは、呆れたように俺を見下ろした。


「フィン……」


「どうしてあなたは、どこへ行っても問題に巻き込まれるの?」


そして、目を細める。


「……それとも、やっぱり本当にテロリストなのかしら?」


「はい……」


俺はさらに深く頭を下げた。


「本当にすみません。問題のほうから俺についてくるんです……」


正直――


俺自身が一番知りたい。


どうしてこうなっているのか。


エラリアは深いため息を吐いた。


「はぁ……」


「まあ、いいわ」


そして、サムラ君を見る。


「あなたの友人が事情を説明してくれたようだし……」


……


くそ。


友人じゃない。


絶対に友人じゃない。


だが――


そんなことを口に出して言える状況でもない。


エラリアは続けた。


「どうやら、彼は追い詰められていたみたいね」


「それで、時間を稼ぐために思いついた唯一の方法が――警備兵にあなたを拘束させることだった、と」


……


ある作品なら。


主人公は、この程度のすれ違いを笑って済ませるのだろう。


だが――


俺の場合、そんな簡単には終わらない。


というか……


これのどこが「時間を稼ぐ」なんだよ!?


俺、あと少しで殺されるところだったんだぞ!?


エラリアは少しだけ身を屈め、俺を見る。


「それで、敵の居場所は分かったの?」


「……は?」


敵?


どの敵だ?


「アリストファンに、敵の居場所を探るために時間が必要だと言っていたでしょう?」


……


沈黙。


…………。


「あぁぁぁっ!」


そうだ。


あの敵か。


うん……


あの敵だ。


どうやら――


もっと重要なこと。


つまり、自分の生存に集中しすぎて、その部分を完全に忘れていたらしい。


そのとき。


<通知。>


<《知覚》スキルがレベルアップしました。>


<現在のスキルレベル:リヒター・スケール5。>


<使用回数の増加に伴い、知覚可能な範囲が拡大しています。>


……


正直。


もう、このポンコツが何を言っているのか分からなくなってきた。


だが、この状況から抜け出すためには――


敵を探すしかない。


いや。


少なくとも――


探そうと努力するしかない。


俺は目を閉じ、意識を集中させた。


最初に感じたのは――


この場に広がっている魔力だけだった。


大量の魔力。


いくつもの魔力が、互いに絡み合っている。


兵士たち。


街の人々。


サムラ君。


エラリア。


そして――


あの魔物。


すべてが混ざり合っていた。


俺はさらに《知覚》を広げようとした。


もっと。


さらに遠くへ。


だが……


何もない。


ただの雑音だ。


俺は目を開いた。


「……無理だ」


<通知。>


<脅威の発生源を正確に特定することはできません。>


……


「じゃあ、どうすればいいんだよ?」


<通知。>


<知覚範囲を拡大することを推奨します。>


「それを今やってるんだよ!」


<通知。>


<現在の知覚範囲では不十分です。>


……


このポンコツ。


そろそろメンテナンスが必要なんじゃないか?


俺はもう一度、目を閉じた。


今度は――


すべてを感じ取ろうとするのをやめた。


全部を同時に把握しようとすれば、何も見つけられない。


なら――


俺は深く息を吸い、最も危険な存在に意識を集中させた。


魔物。


俺を追いかけている、あの存在。


少しずつ……


その気配を感じ始めた。


だが、あまりにも弱い。


何重もの雑音の向こう側にあるような、かすかな感覚だった。


そのとき。


<通知。>


<《危険感知》が発動しました。>


突然――


感覚が変わった。


全身に、ピリッとした刺激が走る。


だが、《危険感知》だけでは精度が足りない。


何もかもが危険なものに感じられてしまう。


兵士。


魔物。


破壊された街。


そして――


周囲にいる人間までも。


「……これじゃ、余計ひどいじゃないか」


俺は《危険感知》と《知覚》を重ねてみた。


だが――


結果は、さらにひどい混乱だった。


《危険感知》は危険そのものを増幅する。


一方、《知覚》はその発生源を絞り込もうとする。


片方は、俺の意識をあらゆる方向へ引っ張る。


もう片方は、その範囲を狭めようとする。


「……くそ」


「どうやって、この二つを両立させろっていうんだよ?」


もう一度、試す。


今度は――


《危険感知》に意識をすべて持っていかれないようにした。


最も強い感覚。


そして、最も遠くにある感覚。


それだけに集中する。


それ以外は――


一つずつ、切り捨てていく。


一つ。


また一つ。


さらに一つ。


音が消えた。


また一つ。


そして――


最後には。


残ったのは、一つだけだった。


……


そこだ。


感じた。


奇妙な存在。


だが――


正確な位置までは分からない。


<通知。>


<脅威の発生源と思われる対象を特定しました。>


<方向:左。>


<正確な位置の特定は不可能です。>


……


なるほど。


俺が期待していた答えとは違う。


だが――


何も分からないよりは、ずっとマシだ。


「……左か」


俺は少しだけ顔を上げた。


だが――


どこだ?


俺はもう一度、《知覚》の範囲を広げた。


さらに遠く。


さらに深く。


頭が少し痛む。


それでも――


やめなかった。


そして突然――


再び、その感覚を捉えた。


今度は――


はっきりしている。


<通知。>


<《危険感知》がレベルアップしました。>


<現在のスキルレベル:リヒター・スケール7。>


<《知覚》および《危険感知》への継続的な負荷により、対象特定精度が向上しました。>


<推定位置:左側、三つ先の建物。>


<高度:約50メートル。>


……


俺は目を見開いた。


「……本当か?」


その直後――


新たな通知が表示された。


<通知。>


<《知覚》と《危険感知》の干渉により――>


<新たな可能性を検出しました。>


<新たなアクティブスキルを獲得しました。>


……


「……何?」


<通知。>


<スキル:《マーキング》。>


<現在のスキルレベル:リヒター・スケール5。>


<フィンが接触した対象に、不可視のマーカーを付与することが可能です。>


<効果:限定された範囲内で、対象の位置を特定できます。>


……


正直。


理由は分からない。


だが最近の俺は――


なんだか妙なスキルばかり手に入れている気がする。


しかも、そのほとんどが戦闘では役に立ちそうにない。


まあ……


これはこれで、少し面白いけどな。


俺みたいな――


ほとんど力を持っていない、ただの脇役が。


こんなものを手に入れ始めているんだから。


……コホン。


コホン。


だが――


もう一つ、別の感覚があった。


《知覚》の範囲が広がり、《危険感知》と重なっていくにつれて――


俺の頭の中に、何かの輪郭が少しずつ浮かび上がってきた。


人間。


人間の存在。


強烈な気配をまとっている。


その力は、ほとんど漏れ出してすらいない。


呼吸さえ。


わずかな動きさえ。


俺には、かろうじて感じ取れる程度だった。


それでも――


一つだけ、断言できる。


こいつは――


強い。


<通知。>


<警告。>


<対象を制御している存在が、推定される制御範囲から離れない限り、魔物を打ち破ることはできません。>


……


さて、フィン。


いよいよ――


本気を出す時が来たようだ。


俺は成長した。


そして、もしかしたら凄いかもしれないものまで手に入れた。


だから――


「……それで、錆びたポンコツ」


「教えてくれ」


「――どうすればいい?」


<……>


……


なるほど。


そういうことか。



俺は深く息を吸った。


「……よし」


「俺は、この作戦を断固として拒否する」


なぜかって?


まず一つ。


俺は、このポンコツを信用していない。


二つ目。


やっぱり信用していない。


三つ目。


今でもまったく信用していない。


そして四つ目。


こいつの提案には、危険と真正面から向き合うことが含まれている。


そんなもの――


俺が受け入れるわけがない。


<通知。>


<警告。>


<すべての可能性を分析した結果、フィンが生存したままこの状況を脱するための別の手段は存在しません。>


……


くそ。


「フィン……」


「フィン?」


……ん?


何だ?


誰だ?


気づけば、そこにいる全員の視線が俺へ向けられていた。


「……あー」


「悪い」


「ちょっと作戦を考えてたんだ」


少しだけ言葉に詰まる。


「……いい作戦を」


もちろん。


俺が生き残れる作戦を、だ。


そして、そこにいる人たちを見回したとき――


さっきまでいなかったはずの、見覚えのある顔が一つ増えていることに気づいた。


俺より五十センチ……いや、それ以上は高いだろう。


黒い髪。


その毛先には、白い髪が混じっている。


細身の身体には、剣を振るい続けてきたことを物語るように、いくつもの傷跡が刻まれていた。


「お前……」


「オーレン?」


オーレンは静かに頷いた。


「本人だ」


……


くそ。


「いつからここにいたんだ?」


「それに……どうやってここまで来た?」


オーレンは少しだけ顎を撫でた。


「そうだな……街を歩いていたら、あちこちから煙が上がっているのが見えたんだ」


そう言って、彼はエラリアへ視線を向けた。


「それで、エラリア様と出会った」


……


実のところ。


俺が最初に気になったのは――


主人公が周囲の人々を救おうとする、その献身的な姿勢なんかじゃない。


……いや。


俺には分かっている。


このゴリラ――


エラリアは、主人公候補だ。


そしてオーレンも――


主人公候補。


となれば。


どうやら運命というやつは、ついに恋する二人を引き合わせ始めたらしい。


……ああ。


なんて感動的な物語なんだ。


俺たちが最後まで生き残れれば、の話だけど。


――ドゴォォォン!!


その瞬間。


先ほどよりもはるかに大きな爆発音が、街中に響き渡った。

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