嘘をついた……そして、俺が正しかったと分かった
……
通知:
<対象――フィンに接近している存在には、物質的な身体がありません。>
……
『なるほど……』
『実に興味深い。』
それが、俺の答えだった……
全力で走りながら、必死に生き延びようとしている最中の。
……
『それで、具体的にそいつは何なんだ? 案内役さん。』
『ちょっとした質問なんだけど……』
『ほら、主人公たるもの、自分を殺そうとしている相手が何者なのかくらい、行動する前に知っておくものだろ?』
『まあ、俺はもう状況に合わせて行動を始めているわけだけど。』
……
『あはははは……』
『そう、見ての通り……』
『走る。』
『逃げる。』
『生き残る。』
『ここ数分、俺がやっているのはそれだけだ。』
……
そして、俺の後ろでは……
何かが街路を突っ走っていた。
壁を破壊し……
瓦礫をあちこちに撒き散らしながら。
……
通知:
<対象の正体を特定します。>
<完了まで、しばらく時間がかかる可能性があります。>
……
『聞いての通りだ。』
『これが俺の質問に対する答えだ。』
『もし俺が主人公なら……』
『すぐに答えを教えてもらえただろう。』
『だが、俺はあくまで脇役らしい。』
『だから……』
『俺を追いかけているこの何かが何なのかも……』
『そもそも、なぜ俺を追いかけているのかも知らないまま……』
『俺は死ぬことになるんだろう。』
……
『そして今……』
『失礼する。』
『かろうじて耐えていた短い平穏の時間も終わったことだし……』
『そろそろパニックの時間だ。』
……
— あーーーーーーーーーー!!
— くそーーーーーー!!
— まだ死にたくない!!
— 誰か助けてくれ!!
— 助けてくれ!!
— このモブを助けてくれ!!
— 一生あなたたちの下僕になりますからぁぁぁぁ!!
……
『そう。』
『この短い言葉の数々によって……』
『俺は自分の恐怖を、実に謙虚かつ男らしく表現してみせた。』
……
サマラリス:
— 声が大きすぎる……
— うわっ!
……
恥ずかしさを感じながら、彼を見た。
— あははは……
— 本当にすまない。今のは、まだ――
……
『くそ。』
『いつからこいつ、俺の後ろを走ってたんだ?』
俺は後ろを振り返った。
……
サマラリスが俺の後ろを走っていた。
そして、そのさらに後ろでは……
カフェにいた残りの人々が、全力で走っていた。
……
『そう。』
『そして、最初に俺の頭に浮かんだのはこれだった。』
『こういう場面、見たことがある。』
『主人公が前へ突っ走り……』
『その後ろを、みんながついていく。』
『勝利へ向かって。』
……
『そう。』
『これこそ、主人公が立つべき場面だ。』
……
『だが、いつものように……』
『このシナリオには、小さな問題がある。』
……
『あはははは……』
『俺が主人公じゃないってことだ。もちろん。』
『あはははははははは……』
……
『よし。』
『これだけ皮肉を言ったところで……』
『そろそろ真面目な話をしよう。』
---
— おい、おい、おい!
— くそ、このガキ!
— なんでお前たちは俺についてきてるんだ?!
……
そう。
これは聞いておかなければならない質問だった。
……
サマラリス:
— ああ……
— たぶん、俺が「生き残りたければ君についていけ」って、みんなに言ったからだと思う。
……
『……』
……
『ああ、そういうことか。』
『お前たちは、あのシナリオに従おうとしているんだな……』
『みんなが主人公についていって……』
『自分たちのために主人公が犠牲になる、あのシナリオに。』
……
『理解した。』
『すべてが分かった。』
……
短い沈黙が流れた。
……
必要な沈黙だった。
……
俺は深く息を吸った。
そして叫んだ。
— この薄情なガキ!!
— なんでこんなことをした?!
— 俺は自分の命を守ろうとしてたんだぞ!
— そもそも……
— なんでお前までここにいるんだ?!
— 復讐のために残って、戦うつもりだったんじゃないのか?!
……
全部言い終えても、気分が晴れたわけではなかった。
だが……
言わなければならなかった。
……
でなければ……
きっと後悔する。
---
サマラリスは、あくびをしながら俺を見た。
サマラリス:
— まあ……
— それが俺の計画だった。
— だが、災害を引き起こしているこの何かを見つけられなかった。
— だから、少し考えた。
— 見えない相手じゃ、復讐できないからな。
……
『まず……』
『こいつ、あくびしてる。』
『俺たちは今、危険な状況にいるんだぞ。』
……
サマラリス:
— それで、建物や街路が壊れ始める前に、お前が走っているのを見た。
— その時、こう思ったんだ。
— きっとフィンは、この何かを感じ取ったんだ。
— そして、この状況に対する良い作戦があるんだろうって。
……
『第二に……』
『こいつ、あの数秒の間にどうやってそこまで考えたんだ?』
……
『そして第三に……』
『これは、ちゃんとこいつに聞こえる声で言わなきゃならない。』
深く息を吸った。
そして、叫んだ。
— この甘ったれたガキめ!
— 俺が言ったことを聞いてなかったのか……!
— 俺の作戦は……
— 逃げることだ!
— 自分の命を守って、生き残ることなんだよ!
……
— 俺がこの世界にいる間、ずっと考えてきた唯一の作戦だったんだ!
……
俺は、さらに大きく息を吸った。
……
— それなのに、お前は今……
— その作戦を台無しにしたんだよぉぉぉぉ!!
……
彼は自信満々に俺を見た。
サマラリス:
— 俺たちは君を信じている。
……
俺の後ろから、足音が次々と聞こえてきた。
そして、彼らの声が上がった。
— 俺たちは君を信じているぞ、少年!
— 私たちの命は君にかかっている!
— 私たちの命を君に託す!
……
『……』
……
沈黙。
……
長い沈黙。
……
『こんな言葉を聞くことになるとは思わなかった。』
『感動したからじゃない……』
『俺のこれからに影響するからだ。』
……
『くそおおおおお……』
……
『たとえ今、この状況を切り抜けられたとしても……』
『誰かが死んだら、俺が責任を問われる。』
……
『しかも、全部この馬鹿のせいだ……』
『サマラ君とかいう奴の。』
……
『俺が巻き込まれた中でも、最悪のシナリオの一つだ。』
……
『この何かから生き延びても……』
『その後、故意に人を殺した罪で死刑になる。』
……
『あるいは……』
『ここで死ぬ。』
……
『いや……』
『ちょっと待て。』
『もしかしたら、この二つの問題を一石二鳥で解決できるかもしれない。』
……
『そうだ……そうだ。』
『正直に言うと……』
『今思いついた方法は、少しばかり悪魔的だ。』
……
『だが、この状況で自分の命を守り……』
『あの怪物から逃げ延び……』
『俺の後ろを走ってきて、俺の計画を台無しにしているこいつら全員を死なせる直接の原因にもならず……』
『その結果、間違いなく首を刎ねられるような事態を避けるためには……』
……
『やるべきことは一つだ。』
俺は周囲を見回した。
……
『これはいい。』
『ここにはいくつかの交差点と路地がある。』
……
俺は深く息を吸った。
そして、自信に満ちた声で叫んだ。
— みんな!
— この状況から生き残るための作戦がある!
— だが、成功させたければ、俺の指示に従ってくれ!
……
人々は互いに顔を見合わせた。
……
『今、俺の頭にある唯一の疑問は……』
『こいつらは、俺の撒いた餌に食いつくかどうかだ。』
……
ほんの数秒も経たないうちに、後ろから声が聞こえた。
— この少年が君の判断を信じているのなら……
— 私たちも君を信じる!
……
『……』
『一方では、心が痛む。』
『もう一方では、嬉しくもある。』
『これ以上、このことについて深く考えるのはやめよう。』
……
俺は叫んだ。
— 今、俺たちを追っているこいつは巨大だ!
— 俺の特殊なスキルなら、そいつを感知できる!
— そして、目に見える物質的な身体を持っていないにもかかわらず……
— それ自体が、あいつの能力の一つである可能性が高い!
— それに、あいつは強いマナに引き寄せられる!
……
視線が一斉に俺へ集まった。
……
『まるで、本当に熟練した人間になったような気分だ。』
……
『まあ……』
『今俺が言ったことは、全部アニメから適当に持ってきた即興で……』
『完全な嘘なんだけどな。』
……
『だが、これも俺の計画の一部だ。』
……
『なんだか、この台詞……前にも聞いたことがある気がする。』
『どのアニメだったっけ?』
……
『くそ。』
『考えが逸れすぎた。』
---
後ろから声が飛んできた。
— それで、俺たちはどうすればいいんだ、少年?!
……
『そう。』
『まさに、俺が聞きたかった言葉だ。』
……
『さて……』
『作戦の第二段階だ。』
ゴホン……
そして、叫んだ。
— 誰か一人でも魔力のオーラを外へ放っているなら……
— 一時的に抑えてくれ!
— それが難しいなら……
— せめて、広がる範囲を小さくしてくれ!
……
人々は顔を見合わせ、それから何人かが実際に自分のオーラを抑え始めた。
……
『よし。』
『これで……』
『そもそも俺をこの問題に巻き込んだサマラ君を利用する時が来た。』
彼のほうを振り向いた。
— サマラ君!
— ここから先は君にかかっている。
— 生き残りたければ……
— 大量のマナを放ってくれ!
— この怪物を君に引き寄せるんだ!
……
『あははは……』
『全部、嘘だけどな。』
……
俺は作った自信を浮かべながら、彼を見た。
— 君を頼ってもいいか?
サマラ君は、しっかりとうなずいた。
— ああ。
……
『よし。』
『最終段階だ。』
……
『これが成功すれば……』
『二つの問題を同時に切り抜けられる可能性が、大幅に上がる。』
俺は深く息を吸った。
そして、手を上げた。
— 俺が合図したら……
— 全員、少人数のグループを作ってくれ!
— それから、この交差点と路地に分かれて散開するんだ!
— 準備はいいか?!
皆から返事が返ってきた。
— ああ!
— 俺たちは君を信じている!
……
『これはいい。』
『すべて、計画通りに進んでいる。』
……
『この大人数がいくつかのグループに分かれれば……』
『俺の生存率は上がる。』
『そして、もしあの何かが腹を空かせているのなら……』
『きっと、そのうちのどれか一つを選んで追いかけるはずだ。』
……
『これで計画は完成だ。』
『たとえ、一部の連中に最悪の事態が起きたとしても……』
『俺は、彼らを危険から逃がそうとはした。』
『まあ、死ぬ可能性はまだ高いけど。』
……
『そして俺は、あの怪物から逃げ延びる。』
……
『これで……』
『一石二鳥だ。』
……
『あとは一つだけ。』
……
『ただ祈ろう……』
『あいつが腹を空かせていることを。』
『そうすれば、この計画は成功する。』
……
俺は深く息を吸った。
そして、数え始めた。
— 一……
……
俺たちの後ろで壁が砕け散った。
石が四方八方へ飛び散る。
……
— 二……
……
『まるで、時間が止まったみたいだった。』
『まるで、この瞬間が運命を決めるかのように。』
……
『まあ……』
『俺にとっては、本当に運命を決める瞬間なんだけどな。』
……
俺は手を上げた。
— 三!
— 散れ!
— 散れ!
— 散れ!
……
全員が一斉に走り出した。
人の群れはいくつもの小さな集団に分かれ、それぞれが路地や交差点の中へと消えていった。
……
そして……
破壊音が止んだ。
……
静寂が訪れた。
……
『もしかして……』
『本当に……』
『成功したのか?』
……
『よっしゃああああ……!』
……
『あははははは!』
— やった。
— 俺はついに勝ったぞ!
サマラリス:
— どういう意味だ……?
……
『ショック……』
『あ……』
『この男がまだここにいることを忘れていた。』
『くそ……』
『危うく計画をバラすところだった。』
……
— あははは……
— いや、友よ。サマラ君が知る必要はない。
— とにかく、計画は成功したんだ。
……
サマラリス:
— だが……
……
『……』
『この一言は、今の俺が一番聞きたくないものだった。』
サマラリス:
— 人々は助かるんじゃないのか?
— もし、あの何かが彼らを追いかけたら……
— それはつまり、君の計画は失敗したということじゃないのか?
……
『……』
『真面目な質問だ。』
『なら、俺も正直に答えるべきだろう。』
『考える必要すらなかった。』
俺は彼の肩を軽く叩いた。
— ああ。
— 計画は生き残ることだった。
— そして、計画は成功した。
……
『そう。』
『最初から、俺の計画は俺自身が、俺を殺す可能性のあるものから逃げ延びることだった。』
『他の誰かが生き残るなんて、一言も言っていない。』
『つまり、これは科学的に言えば……』
『真実を述べていることになる。』
サマラリス:
— だが……
……
— 言っただろ。成功したんだ。
……
『いやあ……』
『なんて心地いいんだ。』
『これで宿に戻れる……』
『安心して眠れるぞ。』
……
沈黙。
……
『そう……』
『実に素晴らしい沈黙だ。』
『そして、その後に来るものは最悪だ。』
……
ドォォォォォン!!
……
壁の一部が吹き飛んだ。
石が銃弾のように俺の横を通り過ぎていく。
……
俺はその場で凍りついた。
……
そして、案内役の声が響いた。
通知:
<対象の存在を再び検知しました。>
……
『……』
……
『よし。』
『こう言おう。』
『生存計画は……』
『失敗した。』
……
俺は絶望的な笑みを浮かべながら、サマラ君を見た。
— ああ……
— 今なら、はっきりと言える。
— 人々を引き離す作戦は……
— 成功した。
— だが、俺を救う作戦は……
— 失敗した。
……
俺は息を吸った。
— 行こう……
— 走るぞ。
……
『あーーーーーーーーーー!!』
……
それが、俺に残された唯一の叫びだった。
俺はありったけの力を込めて、それを吐き出した。
……
『くそ……』
『なんで、また俺の後ろに戻ってきたんだよ!?』
ハーモニーの町……
どこか……
そこには、緑色に輝くクリスタルのような光に照らされた、広い通路が伸びていた。
……
リン……
一歩。
……
リン……
もう一歩。
……
リン……
リン……
ゆっくりと、足音が通路を進んでいく。
その主は、通路の先にある光へと近づき……
そして、立ち止まった。
……
目を大きく見開く。
両腕を強く自分の身体に巻きつけ、まるで自分自身を抱きしめるかのようにする。
肩がわずかに震えた。
……
押し殺した笑い声。
……
前方から声が聞こえた。
— ようこそ。
……
道化師は立ち止まった。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
何も言わず、ただ前を見つめ続けていた。
声が再び響いた。
その声の主は、ゆっくりと彼へ近づいていた。
— 何?
— こんなところまでわざわざ来たのに、挨拶も返してくれないのか?
……
青年の周囲に、強烈なオーラが現れ始めた。
道化師は否定するように手を振った。
そして、一瞬だけ、その顔に緊張の色が浮かんだ。
……
リン……
リン……
青年は歩みを進め、道化師の前で立ち止まった。
そして、静かに言った。
— まずは自己紹介をさせてもらおう。
— まあ……君が死んだ後では、あまり意味のないことだが。
彼は剣をわずかに持ち上げた。
— 私の名は、リド・ルトン。
— ヴィラークス隊の中でも、最も強い者の一人だ。
そして、道化師を見つめた。
— そして、お前は……?
……
道化師は答えなかった。
腕を組む。
そして、人差し指を頬に当て、素早く動かし始めた。
……
止まった。
そして、指を上へ向ける。
まるで、何かを思いついたかのように。
……
右脚を後ろへ引く。
左膝を曲げる。
そして、身体を少し低くした。
……
黒と白の帽子を脱ぐ。
そして、リドの前で深々と一礼した。
……
顔を上げる。
それから、ゆっくりと身体を起こした。
両腕を上げる。
そして、空中で指を規則正しく動かしていく。
まるで、見えない星を描いているかのように。
……
そして、両腕を左右へ広げた。
……
リン……
リン……
リドは笑った。
そして、剣を完全に抜き放った。
— ははは……
— そんなことはどうでもいい。
彼は剣を前へ構えた。
そして、戦闘態勢に入る。
— さあ……
— 俺たちのダンスを始めよう。
……
リン……
……
クリスタルの光に照らされたその通路で……
戦いが始まった。




