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英国の事件(※ヘンリー・ノワクさん)から考える、移民・少子化・国家の思想的侵略論――未来を信じる共同体が、未来を信じられない文明を置き換える4/5

6 侵略する主体ではなく、侵略のように作用する構造

統一司令部はない。

だが、侵略のように作用する構造はある。

まず、人口作用がある。

子どもを多く持つ共同体は増える。

子どもを持てなくなった共同体は減る。

これは思想以前の現実だ。

次に、共同体作用がある。

家族、親族、宗教、地域、同郷ネットワークを持つ人々は、移住先でも生活を再生産しやすい。

子育てを孤独に背負わずに済む。

結婚や出産を、個人の自由な選択というより、人生や家族の自然な流れとして扱いやすい。

次に、規範作用がある。

反差別、多文化共生、人権。

これらは本来、必要な言葉である。

だが、制度化されすぎると、批判不能領域を作ることがある。

国民が「治安が不安だ」と言う。

「地域が変わっている」と言う。

「警察は本当に守ってくれるのか」と言う。

「外国人犯罪を語れないのはおかしい」と言う。

その時、国家やメディアがすぐに「差別だ」「排外主義だ」「不安を煽るな」と返すなら、国民は黙る。

だが、納得はしない。

黙った不安は、社会の地下に沈み、過激に発酵する。

次に、国家側の弱体化がある。

先進国は、子どもを産めなくなっている。

家族が弱くなった。

地域が薄くなった。

宗教が痩せた。

祈りが消えた。

未来を祝福する力が落ちた。

子どもは、祝福ではなくコストとして語られやすくなった。

教育費。

住宅費。

キャリア。

自由の喪失。

夫婦関係の不安。

将来不安。

失敗できない子育て。

親になることへの恐怖。

子どもを持つことが、未来への祝福ではなく、人生のリスクとして見られるようになった。

そして最後に、反作用がある。

不安を封じられた国民は、やがて反発する。

右派化する。

過激化する。

暴動化する。

陰謀論へ流れる。

移民全体を敵にする。

するとリベラル側はさらに反差別を強める。

社会はさらに割れる。

このすべてが重なる。

すると、統一された侵略などなくても、結果として侵略のように見える。

強い共同体が、脆くなった文明の中で拡張する。

それだけで、百年後の国の形は変わる。

これは、苦しく苦い現実だ。






7 これは移民問題ではない

ここで、問題の本丸が見えてくる。

これは移民問題ではない。

もちろん、移民政策は重要だ。

治安も重要だ。

国境管理も重要だ。

警察対応も重要だ。

外部資金も、宗教施設も、政治運動も、制度設計も重要だ。

そこを軽く見てはいけない。

だが、最深部はそこではない。

最深部は、先進国の心が痩せたということだ。

先進国は、未来を信じる力を失いつつある。

子どもを産む意味が分からない。

結婚する意味が分からない。

家族を持つ意味が分からない。

自分の人生を次の世代へ渡す意味が分からない。

合理的に考えれば、子どもは大変だ。

金がかかる。

時間がかかる。

自由が減る。

リスクが増える。

失敗できない。

責任が重い。

社会も不安定だ。

未来も明るいとは言い切れない。

だから、産まない。

持たない。

先送りする。

ひとりで生きる。

夫婦だけで生きる。

それもまた、一つの人生である。

僕は、子どもを持たない人を責めるつもりはない。

子どもを持つことだけが正解だと言うつもりもない。

そんな粗い話ではない。

ただ、文明として見た時に、これは深刻である。

子どもを祝福できなくなった文明は、静かに細っていく。

一方で、まだ子どもを祝福できる共同体がある。

家族を未来として見られる共同体がある。

宗教や親族や地域の中で、子どもを迎え入れられる共同体がある。


子どもを、負債ではなく、未来として見る共同体がある。

そういう共同体は続く。

ここに差が出る。

移民が強いのではない。

イスラムが強いのでもない。

中東が強いのでもない。

根がある共同体が、根を失った文明の中で相対的に強く見えている。

それだけだ。

だが、その「それだけ」が、国家の未来を変える。

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