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英国の事件(※ヘンリー・ノワクさん)から考える、移民・少子化・国家の思想的侵略論――未来を信じる共同体が、未来を信じられない文明を置き換える1/5

1 監察官が怒っていた

監察官が怒っていた。

監察官とは僕の嫁のことだ。

普段から、何かあるたびに政治や国際情勢へ怒るタイプではない。

けれど、この件には怒っていた。

英国で、ヘンリー・ノワクさんという十八歳の若者が殺された。

ただの殺人事件ではない。

そこから先が、あまりにもおかしい。

刺された若者がいた。

助けを求めていた。

だが、現場に来た警察は、彼を助ける前に疑った。

手錠をかけた。

後に、彼は被害者だったと分かる。

加害者側は、人種差別的な扱いを受けたと主張したという。

その主張が、現場でどう扱われたのか。

警察官が何を見て、何を見落としたのか。

そこは今後、調査によって明らかにされるべきだろう。

けれど、映像や報道を見た人々が感じたことは単純だったはずだ。

「なぜ、死にかけた若者を助けなかったのか」

僕も、そこに引っかかった。

監察官は、もっと強く反応していた。

彼女らしい反応だと思う。

僕の嫁は安全と信頼に敏感だ。

誰が守ってくれるのか。

共同体は機能しているのか。

制度は味方なのか。

警察は、危機の時にちゃんと守ってくれるのか。

そこに強い関心がある。

だからこの事件は、単なる海外ニュースではなかった。

「もし日本がこうなったら嫌だ」

「もし自分の子どもがこう扱われたら耐えられない」

「国は、誰を守っているのか」

そういう怒りだった。

僕も、その怒りは正しいと思った。

もちろん、暴動は別だ。

無関係な人々へ怒りを向けることも違う。

特定の民族、宗教、移民全体へ憎悪を広げることには慎重だ。

けれど、最初の怒りは正しい。

死にかけた若者がいた。

警察は、本来なら命を守るために来るはずだった。

その警察が、助ける前に手錠をかけた。

これは異常だ。

だから、よく考えたいと思った。

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