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2-7 王都の出会い

 白い世界が晴れていく。


 周囲の明るさに目が慣れ、少しずつ視界がクリアになる。

 俺は直前の出来事を思い出しながら、今の状況を理解する。


 そうだ、俺は召喚されたのだ。

 召喚ということは、ここは王城とかか?

 よく見れば、目の前の人も王様のような服装をしている。

 王様のようなというか、王様そのままである。

 その王様が口を開き、


「アルトさん!!」



---



「アルトさん!!王都が見えましたよ!!」


 俺は眠たい目をこする。

 今日は数日ぶりに天気が安定し、馬車の揺れも相まって気持ちよく寝てしまった。

 

「はは、あんま変わってないな」


 俺はユリが指をさした方へと視線を向けた。

 そこに広がっていたのは、何とも見覚えのある景色だった。

 細かい部分はもちろん変化しているだろう。

 それでも俺の目には懐かしの王都が広がっていた。


 王都を一周囲んでいる石の城壁。

 この城壁には千年前はとても強固な結界魔法が施されていた。

 その魔法は今も続いているのだろうか。


 王都の背後に見える山々はその高さも形も昔と全く変化していない。

 あの山を見ると王都に戻ってきたという実感が湧いたものである。


 そして、王都の外からでも最も目を引き付けるものが視界の真ん中に存在している。

 昔より縦に伸びているが、その白色の美しさと荘厳さは今もなお失われていない。

 王都のシンボル、王城である。

 これがあるから王都は王都なのだ。


「懐かしいですか?」

「顔に出ていたか?」

「はい、とても優しい目をしていました」

「そうか、そうだよな。やっぱりこの街は特別だよな」


 俺はこの世界で最も多くの時間を過ごしたのは、間違いなく王都である。

 もっとも思い入れが深い場所はどこかと尋ねられたら、俺は間違いなく王都と答えるだろう。

 召喚され、勇者として成長し、そして魔王討伐の旅へと旅たった場所、それが王都である。


「みんな、戻ってきたぜ」


 俺の口から自然に言葉がこぼれた。

 

 目を瞑ればあの日々がよみがえる。

 

「さぁ、行くか!!」

「はい!!」


 バージを出てちょうど三週間、ゆっくりとこの世界を見ることができとても良い時間だった。

 勇者選定の儀式に向けて、ユリの訓練も行ってきた。

 後はもう、向かうだけである。


 俺は王都へ向かって一直線に進んだ。



---



「冒険者カードは便利なものだな」


 王都の検閲は他の街よりより厳重なものになっている。

 厳重といっても、別に特別な検査などがあるわけではない。

 特に、俺とユリは冒険者カードを見せたら軽い荷物検査で入ることができた。

 冒険者カードはこの世界における身分証の役割を果たしてくれているのだ。


「これからどう……」

「ユリ、少し時間をもらってもいいか」


 王都の門をくぐったところでユリに話しかけられたが、俺は一度時間をもらった。


「ふーー」


 目を瞑りながら大きくいこを吐いた。

 そして目を開く。


 目の前にはとても明るく、活気にあふれた空間が広がっている。

 これまでの街でも多くの人を見たが、王都は今までとは比にならないほどの人が生活している。

 だから俺はこれまでで最も強く、自分が成したことの先をこの肌で感じ取ることができた。

 魔王軍に追い込まれ、王都ですら暗い雰囲気が漂う日々だった。

 今はそんなっ子を微塵も感じさせないほど、幸せな空気で満たされている。


「よし、ありがとうユリ」

「いえ、アルトさんにとってはとても思い出の深い場所ですよね」

「確かにそうだな。だけど、過去を振り返ってばかりはいれない。俺は今江尾生きている。そして、これからやらなければいけないことがある」

「そうですね。まずは、勇者選定の儀式に参加しないとですね!!」

「あぁ、といってもどのように参加すればいいかまでは聞いてなかったな」

「それでしたら、先ほど衛兵さんに聞いておきました」

「いつのまに!?」


 手荷物検査の時にでも聞いたのだろう。

 こういう細かい所に気が付くのがユリのすごい所である。

 まぁ、これに関しては細かくもなく重要なことなので、俺の能力不足なところもあるだろう。


「サンドルさんに渡されたこの信書を見せたら、すぐに対応してくださいました。勇者選定の儀式に参加するには、この信書を王城の前にいる衛兵に渡せば良いそうです」

「なるほど、そういうことならさっそく王城に向かうとするか」

「はい!!」


 優秀なユリのおかげで、次の目的地は決まった。


「よし、王城なら俺に案内を任せてくれ!!」


 王都は慣れ親しんだ場所だ。

 それにあんな大きなものを見失うはずがない。

 問題なく、王城に着けるはずだ。



---



 そう思っていた時もありました。


「ユリ、迷った」

「そうですね」

「すまない」

「いえ、私も初めての王都で浮かれていましたから」


 いったいどうすればあんなに大きな王城を見失うことができるのだろうか。

 いや、実際に今こうして見失っているのだからどうこうなってしまったのだろう。


 俺たちは高い家に囲まれた薄暗い道で立ち止まっている。

 正直居心地の良い場所とはいえない。

 それに、こういう時のお約束だが……


「おいおい、とんだカモが迷い込んできたもんだぜ!!」

「兄貴、エルフですよ!!エルフ!!」

「あの男が持っている剣も高く売れそうだな」


 こういった輩に出くわすものである。

 いかにもチンピラといった三人組である。


 王都の光と闇の闇の部分とでもいうだろうか。

 綺麗なところには、必ずと言っていいほど汚い側面も両立している。


「えっと、俺たち迷ったんですけど……王城って、どこにあるか分かりますか?」

「迷っただと?そりゃあ運が悪い。あんなでかい城を見失うようなポンコツな自分を恨みな!!」

「ですよねー」


 実際にポンコツなことをやらかしたのだから、そんなに強く言い返すことはできない。


「その剣と、そのエルフの嬢ちゃんを渡すならお前だけは見逃してやってもいいぜ」

「ははは、それは無理だな」

「なら、覚悟するんだな」


 正直この程度の相手なら、俺とユリが万が一にでも後れを取ることがない。

 だが、荒事を起こすのは得策ではない。

 特に王都なら何かしらの方に触れる可能性が高い。


「ユリ」

「そうですね」


 俺はユリに目配せする。

 ユリも俺と同じ考えなようだ。


「逃げま」

「はーい、そこまで」


 ユリが自身の考えを口にしようとした瞬間、俺たちの目の前でチンピラ三人の動きが静止した。

 いや、何かによって動きを止められたようだ。


 あれは、糸か?


 目を凝らすと、チンピラの体に細い糸が巻き付いてるのが見えた。

 その糸が絶妙に作用し、チンピラが一切の身動きが取れないようになっている。


「はいはーい、君たちはただの冒険者だよね?」


 チンピラと俺たちの間に割って入るように、何者かが上から降ってきた。

 俺たちの見た目、そしてわずかな動きから冒険者だと判断したのだ。

 間違いなくただものではない。


 その何者かがゆっくりと着地姿勢から体を起こす。


 ん?


 なんというか、特徴的な服装である。

 全身が影に溶け込むような黒色で、腕と腿が動きやすいように露出している。

 着地の際に音がしなかったのは、特殊な履物の影響もあるだろう。

 いわゆる、


「「忍者」」


 俺とユリの言葉がかぶった。

 目の前の女性は忍者、女性だからくノ一の服装をしている。

 くノ一といっても、現代的なアニメ的なイメージが強い服装である。


「あれー、どうして私の存在がばれているのかな?」


 俺たちの不用意な発言によって、この場は冷え切るような緊張感に包まれた。

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