1-25 特訓
「それじゃあ行ってきますね」
「あぁ、また明後日な」
魔道具の剣を購入した三日後、ユリは護衛の依頼をこなすためにバージの街を出ることになった。
三日間の依頼で、近くの村まで行くらしい。
それなりに報酬も良く、彼女は即決で決めたらしい。
俺もそのタイミングに合わせて、アルスたちの特訓を行うことにした。
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「よっしゃー頑張るぜー!!」
いつものようにレオンは元気いっぱいだ。
彼らといることが当たり前のように感じるほど、この街で一緒に依頼をこなしている。
そして今日から三日間の間、森の中で過ごしながら彼らの特訓を行う。
彼らも気合十分な様子だ。
「アルトさん、特訓よろしくお願いします」
「あぁ、まかせてくれ。俺もそろそろこの街を出るからな。それまでに、アルスたちがEランクに昇格するのを見届けたい」
「頑張りますね」
ユリが依頼を終えて戻ってきたら、俺はしばらくして街を出るつもりだ。
冒険者として依頼もこなし、手元にはそれなりのお金が貯まっている。
俺とユリの目標は冒険者として成り上がることではないため、程よいタイミングで次の街へと向かいたい。
だが俺はそれまでに、アルスたちをEランクに上げたいと考えている。
Eランクに昇格するためには、いくつかの方法があるが、最も手早いのは特定の依頼をこなすことだ。
この街でその依頼に当てはまるのは、近くにあるダンジョンの一部攻略である。
俺はこの特訓で彼らをその依頼が達成できるレベルまで育て上げたいと考えている。
「それじゃぁ、まず初めはゴブリン討伐だな」
「はい!」
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「疲れたー」
「はい、とても疲れました」
「うん、そうだね」
空がオレンジ色に染まり始めた頃、ゴブリン討伐を終えたレオンたちが疲れで地面に転がっている。
今日は全部で20匹のゴブリンを討伐した。
普段の倍ほどの討伐に疲労困憊といったところだ。
「特訓はこれからだぞ。ほら、夕食の準備だ」
俺はそんな彼らを横目に夜を過ごす準備を始める。
夕食の支度と寝る場所の準備だ。
彼らは魔物の生息地で夜を過ごした経験がない。
そこについて俺は教えていくつもりだ。
「早くしないと日が暮れちまうぞ」
「はーい」
彼らも渋々と疲労困憊の体を動かして支度を始めた。
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「グーグーグー」
「レオンは凄いですね。あっという間に寝てしまいました」
「そうだな」
夜は時間を決めて見張りをたてている。
最初は俺とアルスが担当だ。
「アルトさんは、疲れていませんか?」
「そこまで疲れていないよ。今日はほとんど見ていただけだからな」
俺はアルスたちの動きを見て、いくつかアドバイスをしている。
直接戦闘に加わることはしていない。
彼らに戦闘経験を積ませるためという目的もあるが、単純に俺の魔力の作用を極力控えたいというのもある。
今はユリがいないため、魔力の補充を頼まない。
一応、剣があるとはいえ不測の事態に備えておきたい。
「アルトさんは魔剣士なんですよね」
「そうだよ」
「魔剣士はどういった魔法を使うのですか?」
魔法使いと魔剣士は似ているが、異なるものだ。
彼女はその違いを知りたいのだろう。
「その質問は、なかなか難しいな」
俺も彼女の質問には答えてあげたい。
だが、俺はあくまで魔剣士という職業を選んでいるだけで、魔剣士のような戦い方をしているわけではない。
俺は昔の記憶を引き出しながら、彼女の質問に答える。
「魔剣士は2種類に分かれるかな。魔法と剣を別々に使うものと、剣に魔法を纏わせるものに。前者は、魔法で相手を牽制して生まれた隙に噛んで攻撃を仕掛ける。後者は魔法を纏わせた強力な剣で一撃必殺を狙う。こんな感じかな」
「なるほどー」
簡単な説明にはなってしまったが、アルスは納得してくれたようだ。
「……アルトさんはどのくらい強いんですか?」
沈黙が続く中で彼女はそう尋ねてきた。
「今はそこまで強くないよ。でもいざとなったら、全てを守るつもりだよ」
それは嘘ではない本当の言葉だ。
「凄いですね。私はアルトさんを尊敬して、信頼しています」
「その信頼に応えられるように頑張るよ」
その後も何気ない会話を、見張りの交代の時間まで続けた。
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「はぁはぁ、ようやく倒しきったぜ」
「今のは、かなりしんどかったね」
「皆大丈夫ですか?すぐに回復しますね」
「シータ、ありがとう」
特訓二日目となった今日、アルスたちはかなりのペースでゴブリンたちを討伐している。
まだお昼前だが、既に討伐したゴブリンは20匹を超えている。
想像を超えるペースに彼らの疲労も想定を超えてしまっている。
「一旦休憩しよう」
俺は比較的安全な場所に移動し、休憩を取ることにした。
「それにしても、なんでこんなにゴブリンが多いんだよ!」
「確かに、今日は多いですね」
「でも、特訓にはなっているよね」
「まぁ、それもそうだな」
彼らは疲れを感じながらも、とっくを続ける気持ちがあるようだ。
それはとても嬉しいことだが、俺は現在の状況に違和感を感じていた。
この森にはゴブリンを中心とした魔物が多く生息している。
しかしその生息地にはある程度の区切りがある。
街道や街に近い場所ではゴブリンが多く、森の奥に行くとワイルドボアやコボルトが生息している。
だから、森の浅い場所にいる俺たちがゴブリンと多く接敵することは不思議ではない。
だがその数が異常である。
冒険者協会によって、常にゴブリン討伐は依頼として行われている。
そのため街道や街にまでゴブリンが出て行くことはほとんどない。
だが、今日の接敵ペースを考えると森からゴブリンが溢れてもおかしくない数である。
「考えすぎか……」
俺はどことなく不安を感じながら特訓を再開することを決めた。
「ん、足音だな」
俺が気が付いたのと同時にレオンも音に気がついたようだ。
近くに魔物が来ているようだ。
比較的安全そうな場所を選んだつもりだが、どうやら近くに魔物がいたようだ。
「なんだゴブリンか、俺が倒すぜ!」
音が聞こえた先から現れたのは1匹のゴブリンだった。
それを見てレオンが倒すために飛び出した。
今のレオンの実力ならゴブリン1匹難なく倒せるだろう。
彼の判断は間違いではなかった。
それが普通のゴブリンなら。
「レオン待て!!」
俺はゴブリンの姿を見てすぐにレオンを止めようとした。
だが既にレオンは飛び出してしまっている。
「えっ!?」
レオンが俺の声に驚いてこっちを見た瞬間、
「うあぁぁーーー!!」
彼の肩から赤い血が飛び出した。
「えっ、」
突然の状況に3人は固まってしまっている。
「ゴブリンシャーマンだ!!」
俺はすぐに情報を伝える。
ゴブリンシャーマンは、ゴブリンの上位種で魔法を操る。
今レオンの肩を貫いたのも魔法である。
「フィジカルブースト」
俺は瞬時に身体強化をかけて、ゴブリンシャーマンに接近する。
そして剣を使い、頭を刎ねた。
「レオン、大丈夫か!!」
俺はすぐにレオンの元に駆けつける。
幸い魔法は肩を掠めただけで、重傷には至っていない。
「今のはいったい、」
3人はまだ混乱しているようだ。
「今のはゴブリンシャーマン、ゴブリンの上位種だ。本来こんな場所にいるはずの魔物じゃない。あれがいるということは……」
俺は一つ息を整えて言葉にする。
「ゴブリンエンペラーがいる」
どうやら自体は既に深刻な状況のようだ。




