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1-21 依頼

「アルトさーん!!お待たせしましたー!!」


 冒険者カードの再発行を済ませたユリがこちらに駆け寄ってきた。

 ただでさえエルフは珍しいのに、金色の髪をなびかせた美しい女性は注目を浴びるだろう。


「再発行にはいくらかかるんだ?」

「1500円ですね」

「結構するな」

「まぁ、私の紛失が原因なので」


 彼女は申し訳なさそうに笑いながら、手元のカードを見せてきた。


「カード交換ですよ」

「へぇー、」


 おそらく名刺交換のような文化なのだろう。

 確かにカードには個人情報があまり記されていない。

 それこそ、名刺に近い役割を担うには最適だろう。

 

「それじゃあ、これは俺の冒険者カードだ」

「はい」


 俺はユリと冒険者カードを交換した。


名前:ユリ

職業:魔法使い

冒険者ランク:C


「へぇー、ユリでもCなんだ」


 Cランク、冒険者の中でも中堅に位置しているはずだ。

 だが、俺の中ではユリはBランク以上でもおかしくない強さだと認識している。


「冒険者ランクを上げるためには、実績が必要なんです。私は魔法探索であまり依頼などをこなしていないので……」

「なるほど」


 協会に登録する上で、こなさなければいけないノルマのようなものはない。

 だがランクを上げるためには依頼をこなす必要があるようだ。


「まぁ、気軽に上のランクを目指していくか」

「アルトさんならすぐに上のランクにいけますよ!!」

「ありがと、でもそんなに急ぐつもりはないよ」


 この世界で俺がやりたいことはすでに決まっている。

 冒険者としての仕事にも興味はあるが、あくまで金策にとどめておこう。


「とりあえず宿を探して夕食だな」

「はい」


 俺とユリは冒険者協会を後にして、宿を探しに向かった。



---



「朝日はやっぱり気持ちがいいな」


 俺は朝日を浴びながら街を歩く。

 昨日着いた時はすでに日が落ち始めていたため、今目の前にある光景は新鮮なものに見える。


「すごいよなぁ、これが全部魔道具なんて」


 俺は街の至る所に設置されている街灯のようなものに近づく。

 一見ただの街灯だが、実は全て魔道具である。

 周囲の光を自動で感知し、暗くなると光を灯すようにできている。

 この世界には電気を用いる技術は無い。

 だが、この千年間で魔道具が大幅に進歩している。

 日本で豊かな生活を送っていた俺からしても、全く不便を感じないようになっている。


「特に感動したのは、やっぱあれだな!!」


 俺は独り言を呟きながら、昨日の宿を思い出す。

 俺とユリが泊まった宿は特別安くも高くも無い宿だった。

 一泊2000円で、ご飯はつかない。

 それでも部屋は十分満足できるクオリティーだった。

 そして、そこで俺は見つけてしまったのだ。


 衝撃の『水洗トイレ』を!!


 千年前、俺がこの世界に来て最も苦労したことはなんだと聞かれたら、間違いなくトイレと答えるだろう。

 いわゆるボットントイレの形式で、俺は慣れるまで大変苦労した。


 だが、昨日宿で使用したトイレはほとんど俺の知るトイレと変わらないものだった。

 座る便座があり、水で流すことができる。

 更に、トイレットペーパーも用意されている。

 異世界史上、最大の改革と言っても過言では無いだろう。

 おぉ、顔もわからぬ発明者よ。

 俺からの最大の賛辞をあなたに。


 さて、そんなことを考えているうちに宿の周りを一周して戻ってきてしまった。


「そろそろユリも起きてくるかな」


 俺は一度宿に戻ることにした。



---



「んー、何がいいかなー」


 俺はユリと一緒に市場に出てきている。

 理由は一つ、朝食を取るためだ。


「あそこのパン屋さんが美味しそうですね」

「そうだな、あそこにするか」


 俺はユリが見つけたパン屋で朝食を取ることにした。

 注文をすまし、商品を受け取り近くの席についた。

 朝食には最適な卵サンドだ。


「アルトさん、今日はどう過ごしますか?」

「俺はユリの旅に付き合うつもりだから、ユリが決めてくれ」


 俺は彼女の旅につきそうと決めた。

 俺自身やりたいことがないわけでは無いが、彼女の旅に付き合っていれば面白いものを見ることができるだろう。


「……しばらくはこの街にいるつもりです。旅の資金も貯めなければいけないので、冒険者協会の依頼をいくつかこなしたいです」

「俺も金欠だからな、いくらかお金を貯めて魔道具を見たいと思っていた」


 最低限の装備を揃えるにもそれなりのお金が必要だ。

 それ以外にも面白そうな魔道具があればぜひ買いたいところだ。


「それではとりあえず冒険者協会に行ってみましょう!」

「そうだな、いい依頼が見つかるといいな」


 俺たちは、冒険者協会に向かうことにした。



---



「えっ?依頼を受けられない!?」


 衝撃の事実が伝えられたのは、冒険者協会についてすぐのことだった。

 冒険者協会に入り、掲示板で依頼を探した俺たちは手頃な依頼を見つけて受付に持っていった。


「同時に依頼をこなすことができるのは、冒険者ランクが隣同士の者だけです」


 現在俺の冒険者ランクは最も下のFランク、対してユリはCランクである。

 冒険者協会のルールでは一緒に組むことはできないらしい。


「そういうことなら仕方がないな」

「そうですね」


 俺とユリは別々に依頼をこなさなければいけない。

 単独で依頼をこなしてもいいが、できることなら誰かと組んで依頼をこなしてみたい。

 だけど、ここは辺境の街。

 俺のように低ランクの冒険者はいるのだろうか?


「ユリは一人で依頼を受けるのか?」

「はい、先ほど見つけた依頼は一人でもこなせそうなものだったので。アルトさんはどうしますか?」

「一人でこなしてもいいんだが、できれば誰かと組みたいかな。その方が面白そうだし」


 おそらく一人で依頼をこなす方が簡単だろう。

 だけど、俺はこの世界を最大限楽しみたい。

 だから、多くの人と交流したいのだ。


「だけど俺みたいなFランクが入れるような……」

「あのー、もしかしてFランクの方ですか?」


 一緒に組んでくれる人を探そうとした時、誰かが俺に声をかけてきた。

 声が聞こえた方に視線を動かすと、一人の少女が立っていた。

 身長も低く、見た目からして15より下だろう。


「あぁ、俺はFランクだ」

「もし良かったら、私たちと一緒に依頼を受けてくださいませんか?」

「私たち?」


 少女が目線を向けた先を追いかけると、少年2人と少女が1人いた。


「実は私たちこの街で依頼をこなすのは初めてなんです。ですので、できればご一緒していただけたら嬉しいのですが」

「あぁー、俺もこの街で依頼を受けたことはないんだ。というか、まだ依頼を受けたことがない」

「そっ、そうなんですか!?」


 目の前の少女は俺の返答を聞いて、驚きつつ少し残念な表情をした。


「それでも、力になれることはあると思う。俺も一緒に依頼を受けてもいいか?」

「えっとー、」

「彼はとても頼りになるわ!!私が保証する!!」


 俺と少女の会話にユリが割り込んできた。

 ユリは自身の冒険者カードを見せながら少女に話しかけている。


「Cランクの方がおっしゃるのなら……わかりました。えーと、私はアルスです」

「俺はアルトだ」

「よろしくお願いします」

「よろしく!」


 ほんの少し名前の似てる少女に誘われ、俺は彼女たちと一緒に依頼を受けることにした。

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