第二十二話 「借金返済」
グリバッツ国の王都に戻る馬車に乗って2日が経った。窓の外の風景もいつもの見慣れた荒野になってきた。
ここに来て5年間毎日見たこの光景ももう見れないとなるとなんだか悲しくなってきた。
馬車の俺たちはこの大金を何に使うかで話していた。サヴァは、このお金で家を買ってそこで一生働かずに暮らすと言っていた。
ギャバスは、自分の今使っている剣を捨てて新しい剣を買うのに使って最上級剣士を目指すのだそうだ。
ミラは現実的に半分貯金そして、もう半分を投資に回して、不労所得を得ようとしているそうだ。
ミラとサヴァは言っていることは同じだが、サヴァの方が夢の見過ぎでは?
と思いつつ俺もこの大金で借金を帳消しにして余ったお金はナニに使うかを考えているところだ。
そんな話をしていると、街に帰ってきた。
帰ってくると俺たちが『宝石聖竜』を倒した話を聞きつけた住民たちで賑わっている。
俺たちが出てくると多くの人が押し寄せてきた。俺の方にはサヴァたちと行きつけの酒場のオーナーやそこの常連が来て祝ってくれた。
一方サヴァとギャバスのほうを見ると町中から押し寄せたであろう大量の美女がいた。
サヴァとギャバスは、いやらしい目をしながら鼻の下を伸ばして
「えっ?今日?夜ならいけるよ。」
と話している。
その光景を横目にミラは、多くの人男の人に囲まれながらもその隙間から、機嫌が悪そうにサヴァたちのほうを見ていた。
ランスターはというと、いつも通り謎のオーラを出して人を寄せ付けなかった。
俺たちは急いでで野次馬を押しのけていつものホテルに向かった。ホテルまで行くと、あれだけいた野次馬もいなくなっており、いつも通りだった。
ホテルに帰ると、6日ほどしか空けてないのにやけに懐かしいような気がした。少し休憩した後に俺は、ランスターと一緒に借金を返しに行くことにした。
ランスターについていくと、はじめに捕らえられていた牢屋のあった建物についた。その建物に入ると、ランスターが
「社長ー。借金返済できるぜ。こいつ」
と社長を呼んだ。
すると奥からよぼよぼの社長が出てきて一言
「やっとか…よかったよかった。もし返せなくて、永遠にこの子の生まれたところに帰れなくなるのはかわいそうだと思っていたんじゃ。さあ、500万マーラ返してくれな。」
と言われ、
(そう思うなら最初から許してくれよ。500万マーラだぞ!日本円で約50億の大金を普通こんな少年に返しきれるわけないだろ)
と思ったが我慢しておいた。
俺は、左手に持っていた大きな袋から500万マーラを取り出すとその袋はすっからかんになった。
すると、社長が
「さあ、早く帰りなさい。この辺は夜になると変な輩が多い。お前さんのような子供はすぐにつかまるぞ。」
と言われた。俺は、ランスターと別れて、一人でホテルへ向かった。
3日が経った。今日は俺が神聖マーロに帰る日だ。
外にはサヴァたちやランスター、酒場のオーナーやツェネガー教授までもが来てくれた。
俺が別れの言葉を告げるとサヴァたちが
「じゃあな。元気でな。5年間楽しかったぜ。お前のおかげでこのパーティーもAランクだ。お前がいなかったら俺たち…」
と言って泣いてくれた。その言葉を聞いた俺も泣いた。
ツェネガー教授が俺に話しかけると。
「結局王級魔術はできなかったが、グレイス。お前さんに初めて会ったよりも、確実に成長している。これからも頑張ってくれ。」
と言ってくれた。最後にランスターが、
「じゃあな。もう会えるかわからないから。」
と言った。
俺は、
「どうして?」
と質問すると
「グリバッツ国と聖ロースの情勢が最近悪化してきている。戦争が起こるかもしれない。いやな世の中だ。」
と言った。俺は、戦争が起こる前にいち早く神聖マーロに帰るため、馬車に乗った。
馬車に乗ると、窓からサヴァたちが手を振ってくれた。俺も見えなくなるまで振った。
見えなくなると俺は、眠りについた。
神聖マーロまで6,7日かかるそうだ。
気長に待っておこう
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