第二十話 「フローズンドラゴン2」
俺たちはまだ、『氷結聖竜」と戦っていた。
「くっそ、強すぎだろ…」
今まで戦ってきた魔物なんかとは比べ物にならないほどに強い。
猛吹雪の中での戦闘は、体力も魔力も容赦なく削っていく。
このまま消耗戦になれば、死ぬのは確実だった。
「なんで、炎属性の攻撃が通らない……!」
焦りと苛立ちをぶつけるように叫んだ。
近くで戦っていた別パーティーの兄貴分らしき男が、叫ぶように言った。
「おそらく、炎属性無効のバフがかかっている!『氷結聖竜』のブレスには、自身に炎属性の攻撃魔術を完全に無効化する効果がある、と!」
俺はその言葉を信じ、即座に魔術を切り替えた。
「『岩石砲』!」
放った岩弾は見事に命中し、『氷結聖竜』がわずかに体勢を崩す。
それを見た他のパーティーの魔術師たちも、炎属性を止め、岩や風、水属性の魔術へと切り替えていった。
だが、それでも、ドラゴンは氷のブレスを吐き続け、次々と人を氷漬けにし、砕き、殺していく。
気がつけば、生き残っている人数は最初の半分ほどにまで減っていた。
俺は歯を食いしばり、ギャバスに叫んだ。
「ギャバス!剣で攻撃してくれ!」
今まで壁のように立ち、様子を見ていただけのギャバスは、周囲の視線と状況に押され、しぶしぶ前へ出た。
「はぁ。しょうがないな…」
ギャバスの放った一太刀は、『氷結聖竜』の眉間を正確に捉え、深い傷を刻んだ。
ドラゴンが大きくひるんだ、その瞬間。
「今だ……!」
俺は、最近ようやく使えるようになった上級魔術を解き放つ。
「『聖水牙』!」
鋭い牙の形をした聖水が、獲物を引っ掻くような速度で、一直線に眉間の傷へと突き進み、命中した。
『氷結聖竜』の動きが、ぴたりと止まった。
次の瞬間巨体が、地面へと落下した。
「……やった…?」
俺たちは歓喜の声をあげ、互いに抱きしめ合い、勝利を喜んだ。
俺はすぐに、倒れた『氷結聖竜』の死骸へと近づいた。
その時、ランスターが低い声で言った。
「……おい。このドラゴン、体に傷があるぞ」
「当たり前だろ。今さっき倒したんだから」
「違う。背中だ。さっきの戦いで、誰一人として背中を攻撃していない」
ランスターは、背中に残る深い傷と、そこに付着したキラキラと輝く欠片を指差した。
「……間違いない。この傷は『宝石聖竜』のものだ。しかも、かなり最近についた傷だ」
一瞬の沈黙。
そして、ランスターが顔を上げた。
「気をつけろ!まだこの近くに『宝石聖竜』がいる可能性が高いぞ...」
だが、他のパーティーは浮かれていた。
「何を証拠に言っているんだ?」
そう言った男の背後に吹雪の中、巨大な影が映った。
「あっ...…!?」
俺たちが息を呑む中、その男が振り返る。
次の瞬間。
男は、きれいに四つに分かれた。
飛び散った血は、なぜか光を反射し、キラキラと輝いていた。
美しいと、思ってしまった自分に、吐き気がした。
そして、吹雪の中から姿を現したのは、先ほどの『氷結聖竜』を遥かに凌ぐ巨体。
全身が虹色に輝く『宝石聖竜』だった。
登場生物紹介
【ジュエリードラゴン】
種族:ドラゴン族
全長:20m~35m
ドラゴンの中でも大きい方で、知能や防御力、攻撃力も非常に高い。生息域は非常に広いが、個体数が非常に少ない。ジュエリードラゴンの骨は魔法薬学で非常に重宝されており、非常に高価で取引されている。
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