第十七話 「新たなメンバー」
俺たちがアルマダ山脈に向かってから、一日が経った。
馬車に揺られながら、のんびりと外の景色を楽しんでいると、突然、御者が声を上げた。
「……馬車の後ろに、誰かついて来ています」
そう言って、御者が馬車を止める。
俺たちが後ろの窓を覗くとそこには、俺をグリバッツ国へ連れてきたあの男が、歩いてこちらを追ってきていた。
げっ。なんでいるんだよ……。
俺が外に出ると、男は開口一番、怒鳴りつけてきた。
「お前! 街から逃げられると思うな。逃げるつもりなら、この場で殺す」
あまりに唐突な殺気に、一瞬息を呑む。
だが俺は落ち着いて、事情を説明した。
俺たちは『宝石聖竜』を狙って、アルマダ山脈へ向かっているのだと。
すると男は呆れたようにこう言った。
「馬鹿かお前?死ぬぞいいのか?コスパ悪いぞ」
と言われたため俺は
「借金を返すためだ。多少は仕方がない。それに魔術には自信があります」
まっすぐと見つめるとその男はため息をついた。
「……はぁ。俺もついていく」
「えっ!?」
「これも仕事の一つだ。それに、逃げられたら俺が上司に怒られるからな。やむを得ん」
そう言って、当たり前のように馬車に戻っていく。
俺はほっとしたと共に新たなメンバーがついて来てくれて嬉しかった。
馬車に乗って少し経ってから、俺はふと思い出して聞いてみた。
「そういえば……名前、なんて言うんですか?」
「俺はランスター・サラバスだ。ランスターでいい」
意外にも、素っ気ないが普通の返事だった。
もしかして、案外いい人なのか?
さらに、1日経つと外は一変した。
一面、白銀の世界。
雪と氷に覆われた大地が、どこまでも続いている。
馬車の中まで冷気が入り込み、防寒具を用意していなかった俺たちは震えていた。
「さっ...寒い…」
その様子を見たランスターが言う。
「おい。馬車を止めろ」
そう言うと、外へ降りていった。
何をするのかと窓から見ていると、近くにいた羊の群れに向かい、しばらくして戻ってくる。
両手いっぱいに羊毛を抱えていた。
「おい、グレイス手伝え」
言われるまま羊毛を受け取った、その次の瞬間。
ランスターが無詠唱で魔術を発動した。
羊毛が淡く光り、みるみるうちに形を変えて、防寒具へと変化していく。
無詠唱!?
驚いている俺たちに、防寒具を投げ渡しながら言った。
「着ろ。凍え死にたくなけりゃな」
俺たちが身に着けるのを確認すると、
「よし。行くぞ」
とだけ言って、再び馬車に乗り込んだ。
さらに1日後
「着きました。アルマダ山脈です」
御者の声で、俺たちは一斉に目を覚ました。
外に出ると、そこには大きなキャンプ場があり、多くの冒険者たちが集まっていた。
俺は御者に尋ねた。
「……なんで、こんなに人がいるんですか?」
「あなた方と同じく、『宝石聖竜ジュエリードラゴン』狙いですよ。そのおかげで、我が社は儲かっているんですが…」
やはり、狙っている冒険者は多いか…。
ライバルが多いということは、それだけ『宝石聖竜』が、とんでもなく金になるということだ。
胸の奥が、期待と不安でざわつく。
早く、あのドラゴンを捕まえたい。
その思いが、抑えきれずに込み上げていた。
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