九十話 スカイダイビングです!
プールウェルは、なすがままに運ばれながら、ミヤビとトルクを下の扉を開けるためのスイッチのもとまで案内している。
「違う! そこじゃない、もうひとつ向こうだよ!」
「ああもう! ややこし過ぎますよここ!」
「そりゃそうだろう! そんな簡単に突破されてもいけないしな。」
同じようなものが四方八方にあるせいで、盛大に惑わされている。
白い建物に入るのはこれで何度目だろうか? 見た目がどれも同じせいで、全く同じ建物に繰り返し出入りしているようで頭が痛くなってくる。
プールウェルも根気強く案内を続けている。
「違う! その二つ右の扉をまたいだところだ、そう、そこだ!」
「あ! なんか今までと違うところに出ましたよ。」
扉の先には機械室のような場所が広がっていた。
スイッチなりレバーなりが大量に設置されている。
「さて、ここからが本番だな。といっても今度は手順通りやって貰えばいいだけだから迷うこともないだろう。まずは右の壁にある上から二段目の青いスイッチを押してから……」
今度は、プールウェルを抱えているミヤビとトルクに代わって、僕が作業を行うから、すぐに終わるだろうと彼は見ていたのだろうが、そのプールウェルの予想は裏切られた。
彼の言うことを覚えることにかなり苦労してしまったのである。記憶力が減退していくというのはどうやら本当らしい。
結局、僕がプールウェルの指示通りに手順を行うことができるまでに三十分を要した。
そして、ついに扉が開こうかというところまできた。
「よし、よし! さあ、最後は真ん中のレバーを手前に引くだけだ。それで下の大門は開く。」
「合点! さあ、開け!」
勢いよく最後のレバーを引いた。
「ガゴゴゴゴゴ!!」
「うわっ! また揺れましたよ!」
門が開いている振動が上にまで届いた。
揺れは激しかったが、でもこれで門は開くことができた。
「これで、下にいるカティーヌさんと王女さまは通ることが出来たはずですね!」
とりあえずは、これで二つ目の関所も無事に突破することができた。誰一人として欠けてはいない。
そして、あとは俺たちがここから脱出するだけである。
「ねえ、あとは私たちを下に降ろしてください。どこから降りたらいいんですか?」
「ああ、それなら今の手順で階段が出ているはずだよ、門の中央に行ってみたらいい。」
というわけで、プールウェルの言葉通りに、中央までやってきた。中央には、一つだけ大きな建物がある。
「その中に入れば、下へと続く階段が出ているはずだよ。そこを降りていけばそのまま地上までいける。」
そう言うので、彼に従って扉を開けたのだが……
「ええ! 階段、ないじゃないですか!」
ミヤビが思わず叫ぶのも頷ける。
プールウェルは嘘はついていなかった。たしかに階段らしきものはあった。しかし、とても下に降りられるような状態にはなかった。
ボロボロなのだ。というか、途中からもう抜け落ちてしまっている。早い話、壊れて崩れてしまっているのである。
何が起きたのかを悟ったミヤビは後ろを振り返った。
「トールークーさーん?」
トルクは後ろで冷や汗を流している。
そう、犯人はこいつなのだ。さっきトルクがめちゃくちゃに揺らしまくったせいで、中にあった階段が崩落してしまったのだ。
「どうするんですか! 降りられなくなっちゃったじゃないですか!」
自業自得と言えばそれまでだが、これはかなりまずいな。
階段から楽々と降りて突破かと思われたが、退路を自ら絶っていたとは。
「プールウェルさん! ここの他に外へ出る方法はないんですか!」
「うーん、ないな。」
「なんでないの! 一つしか方法ないなんておかしいでしょ!」
「仕方ないだろ! 敵を阻むためにある関所なのにそんなにたくさん経路が用意されてたらおかしいじゃないか!」
プールウェルの言う通りだが、それにしても緊急避難路くらいは設置しておいてもらいたかった。
「降りますよ。」
「え? どうやってさ?」
「飛び降りたらいいでしょ!」
ヤケになってないか?
しかし、ミヤビにも考えがあるらしい。
「今頃カティーヌさんたちは門を突破しているはずでしょう?」
「でも矢の雨が降ってきてるんじゃないの?」
「いや、もうバリスタたちは動かないようにしてあるよ。」
プールウェルの一言で安心した。
「ともかく、門の向こう側にカティーヌさんたちがいるはずですから、彼らのところに飛び込めば、どうにかしてくれるでしょう!」
また他力本願だな。
「危なすぎるよ! どうにかできる保証なんて一つもないじゃないか!」
「それでも! ここにいたってしょうがないじゃないですか! それなら、さっさと腹をくくって賭けに出た方がいいでしょ?」
それはそうだが、簡単に言ってくれるなよ。
ミヤビはプールウェルを抱えたまま、どんどん反対側へと向かっていった。
「おいおい! 正気か君は! 大体下に君たちの仲間がいるのかどうかさえ分からないんだぞ!」
下には雲の海以外何も見えない。
「それでも、やるしかないでしょ! いきますよ!」
ミヤビはプールウェルと、それからトルクと俺の袖を取ると、雲の中へと身を放り出してしまった!




