八十七話 壁、激震……?
「のわあ!」
足を払われたプールウェルはそのまま思いっきりこけてしまった。
「隙あり!」
「バコーーン!」
すくいあげるようなミヤビの一撃。しかし、それを間一髪でプールウェルはかわして、そのまま跳び起きた。たいした身体能力である。
「ふう、危ない危ない。なめてかかるといけないな、君たちは。いままで来た中で一番かもしれないな。」
「へえ、それはうれしいですね。ちなみに今まで何組くらいあなたに挑戦したんですか?」
「ええと……三組かな。君たちを含めて。」
三分の一じゃねえか。
「え、なんか期待外れ。てことは、あなた、強いは強いですけど、ぜんぜん歴戦の猛者とかじゃないんですね。」
痛いところをミヤビに突かれてしまったのか、急にプールウェルは不機嫌になってしまった。
「だって仕方ないだろう! こんなところまで上ってくるようなもの好きがいままで三組しかいなかったんだよ!」
俺たちも物好きってことか。
開き直ったプールウェルは、体勢を立て直して、またミヤビに襲い掛かった。
「スパンスパンスパンスパン!」
さっきよりも勢いを増した連撃に次ぐ連撃。
「カチンカチン、ヒュン、バチン!」
ガードと回避を織り交ぜながら、ミヤビはうまくさばいていく。
「そろそろロータスさんにいつものアレで決めてもらいたいんですけどね。」
「さっきからそれが何なのか僕には分からないけど、そんなことさせる隙はあげないよ!」
くそ! 攻撃できない。ミヤビにプールウェルがべったりくっついてしまっている。いつもなら彼女ごと吹っ飛ばしてしまっても、ミヤビが不機嫌になってしまうだけなのだが、今回はそうもいかない。
ここは雲の上だ。下手に攻撃してミヤビごと下に落としてしまえば、落下ダメージがミヤビに入ってしまい、彼女がゲームオーバーになってしまう。
だから、ミヤビとプールウェルが離れているタイミングを探らなければならない。
だが、それは向こうだって分かっている。ミヤビに距離を取られないように、びったりと詰めたまま戦っている。
「どうにか離れろ!」
「無理ですよ、動きが速いんですよ。」
重い攻撃で弾き飛ばしても、凄い速度で復帰して、またミヤビに襲いかかってくる。ミヤビと戦いながらも、ミヤビを人質にしているようなものである。
トルクくんは、もはやなすすべないようす。仕方ない、彼が悪いわけではない。ハンマーにできることなんて、今のこの状況では一つもないのだから。
ミヤビだけが一生懸命に戦っている。彼女はかわしながら要所要所で攻撃している。
上手い立ち回りをしている。むしろ、連撃を重ねているプールウェルのほうが消耗しているはずである。それなのに、全く動きは鈍っていない。
「君たち、もしも僕の体力が尽きるまで待とうなんて考えているんだったら、無駄だよ?」
考えが読まれてるみたいで嫌だな。
「僕には天使の血が入っているんだ。天使の特性は君たちも知ってるだろう?」
「いや、全く知らない。」
「知らないのかよ! もう、仕方ないな。じゃあ教えてあげるよ。」
戦闘をしながら、プールウェルは説明を始めた。
「天使は、天からエネルギーを得ているんだ。天が近ければ近いほど、その恩恵を受けることができるということだな。」
「なるほど、ここは雲の上、地上よりも天に近いからあなたのエネルギーは強くなるってことですか。」
「その通りだよ。飲み込みが早くて助かる。早い話、そのエネルギーのおかげでスタミナが切れることはないのさ。」
彼は得意げになっていた。
まずいな。ということは、少しずつでも消耗しているのはミヤビのほうじゃないか。このままだとジリ貧になってしまう。
と、そのときだった!
「ガタン!」
「え!」
床が急に揺れはじめたのである。
「ゴゴゴゴ……!!」
凄い揺れだ。
「くそ! 君たちがさっきガンガンめちゃくちゃやったせいで、ガタがきてるじゃないか! この壁、結構古いんだぞ!」
うわ! マジか! 壁の一部が崩壊し始めてしまったようだ。
「ガタガタガタガタ!!」
トルクくんの攻撃の威力は思いの外強かったようだ。
「ちょっと! これは厳しいですよ!」
「もうめちゃくちゃじゃないか!」
ミヤビとプールウェルは立っていられなくなってしまった。
僕とトルクは、持っている武器を支えにしているというのもあり、立つことができた。
揺れは収まらない。
「ロータスさん、これってチャンスじゃないですか?」
「そうだな、プールウェルは動けない。一撃でも当てたら勝負が決まる。」
トルクが僕の体をがっしり掴んだ。
「さあ、いっちゃってください!」
「オーケー。……うぉりゃあ!!」
「ズドドドドドド!!」
「な、なんだそれは! ちょ! うわぁぁぁ!」
突き抜ける竜巻はプールウェルを飲み込んでしまった。
吹き飛ばされた半天使は、なすすべなく巻き上げられて、そのまま床に真っ逆さまに落ちてしまった。
「当ててしまえば、あっけなかったですね。」
「なんで飛ばなかったんだろうな?」
「飛べない、とかじゃないですか?」




