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八十六話 エルフ?天使?

 エルフの見た目なのに、翼が生えているからややこしい。一体こいつは何者なのか? ここにいるってことは俺たちの敵であることだけは間違いない。しかし、そんな緊迫した感じを見せないし、いきなり襲ってくる気配もない。


「ん? ああ、これかい? そうだね、下から来た人たちにとっては珍しいだろうね。」


ソイツは翼を大きくはためかせた。


「何者ですか、あなたは。」


反対側に逃げようとしていたミヤビだったが、相手の見た目が思いのほか怖くなかったからか、急に興味を持ち出してそんなことを聞いた。


「やれやれ、自己紹介をするような間柄でもないと思うのだけどね。まあいいだろう。僕の名前はプールウェル。この翼のことを聞きたいようだから教えるけど、これは天使の羽だよ。」


「天使の羽? ってことは、あなた天使なんですか?」


「違う。いや、半分正しいな。よく言われるんだけどね。僕は純血の天使じゃない。」


俺たちはこの世界に天使がいること自体が初耳なのだが。


 「母親は天使、父親はエルフらしいよ。まあ僕も母親のことはよく覚えていないんだけどね……」


めっちゃしゃべるなこいつ。自己紹介だけで終わるかと思ってたら自分の生い立ちまでしゃべり始めてしまったぞ。


 正直、敵なのだから、どういうやつなのかはさほど問題ではない。ただまあ天使の血を引いているというのは少々厄介かもしれないが。


「あの翼、飛んでくるかもしれませんよ、ロータスさん。」


飛ぶとなればかなり厄介な相手となる。


 身の上話がようやく終わったのか、プールウェルはしゃべるのを止めた。


「スラーー。」


剣を腰から抜いて構えた。


「来るぞ!」


「僕の話を散々聞かせた後で申し訳ないけど、ここを守るのが僕の仕事だからね。死んでもらうよ。」


プールウェルは駆け込んできた。


「結構速いぞ! 気をつけろ!」


ここの守りを任されているだけあって、かなりの手練れと見える。一番近くにいた俺に素早く間合いを詰めてきて


「ガン!」


と一発。大剣で防げば決して重い攻撃ではなかったが、キレがすごかった。


「スパーン!」


もう一発きた! 手数で押してきている。これは大剣だと不利か。


「ロータスさん! 援護しますよ!」


反対側にいたミヤビが駆け込んできてプールウェルに一撃浴びせた。


「ガン!」


パワーはミヤビの方が勝っている。プールウェルは後ろに下がった。


 しかしプールウェルはまったくひるまない。すぐに今度はミヤビに狙いを定めた。


「なかなかやりますね、お嬢さん。けれど甘くはみないことですよ!」


「スパンスパンスパンスパン!!」


恐るべき連撃だ。剣がつまようじの様に軽やかに振られている。


「うわっ! よけきれませんよこれは。」


ミヤビは何発かかすってしまっていた。


 たまらず下がった彼女は作戦を変えて杖を振りかざした。


「毒はどうすることだってできないでしょう?」


杖から猛毒の塊が飛び出してプールウェルに襲い掛かった。


「シュパパパパパ!」


「ええ!」


「そのくらいのこと、想定していないわけがないでしょう。」


プールウェルは剣を扇風機の羽のように回転させて毒を振り払ってしまった。


 まあそんな簡単にはいかないよな。


「ドスン!」


「ふぇ?」


「ドスン!」


大きな揺れと音が響いている。


「ちょっとトルクさん! 今度は何をしようとしてるんですか?」


「こういう攻撃さ。」


「くっ! 確かに厄介だな。平衡感覚を失くしてしまいそうだ。」


でもそれはこっちも同じだろう。体幹の強いミヤビはちゃんと立てているが、俺の方はといえば、生まれたての小鹿の様になりながら大剣を支えにしがみついているような状態だ。


「やめてくださいよ! ここが壊れちゃったらどうするんですか!」


床は砂埃やチリを巻き上げながらミシミシといっている。


「そうだぞ! 共倒れになってしまっては君たちの方としても困るだろう?」


敵味方から止められてトルクはたたくのを止めた。


「じゃあハンマーの僕、もうできることなくないですか?」


「仕方ないさ。相性ってもんがある。あいつと戦えるのはミヤビしかいない。」


 揺れが収まり、再び接近戦になっていた二人だったが、なかなか勝負はつきそうにない。


「スパンスパンスパンスパン!!」


「ガチン! バチン!」


ミヤビは距離を若干遠めにして、かわしながら攻撃を挟んでいる。


「上手いですね。」


「本当、運動神経はいいんだよな。」


ミヤビは、このゲームを始めてから、もともと持っていた火力に加えて、そもそも戦うのが上手くなっている。


 ゲームバイアスもあるだろうが、剣を持った相手と上手く渡り合っている。


「ロータスさん! 最後はやっぱりあれ頼みになると思いますから、よろしくお願いしますよ!」


俺にもまだ役割は残ってたか。


「君たちがどんな作戦を持っているかは知らないが、僕のことは倒せないよ。さっさとあきらめて引き返せば突き落とすようなことはしない。」


「今更そんなことできるわけないでしょ、是が非でも向こう側に行かせてもらいますから。」


「ヒュン!」


ミヤビが身をかがめてプールウェルの剣をかわした。


「ドン!」


「うわっ!」


よけたそのままの低い姿勢で、プールウェルの足を払ってしまった!



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