四十七話 森の出会いです!
くそ、慢心していたな。今まで苦戦もせずに敵を倒せていたもんだから、一撃でぶっ飛ばせると思い込んでいたが、このウィッチは耐え切ってしまった。
もしかしたら、俺たちが漂流したのはW3よりもレベルの高いエリアなんじゃないか? 敵の強さが一気に跳ね上がり過ぎている。
ウィッチはまた魔法を撃とうと準備を始めたので、俺たちはその隙に『隠密』で身を隠した。
いくら相手のステータスが高くとも、こうしてしまえば有利になる。
ところがだった。次にウィッチが展開した魔法は、攻撃ではなく防御の魔法だった。俺たちが姿を消したので、使う魔法を変えたのだ。
「なんだあれは?」
ウィッチを包み込むように、光の壁が円筒状に広がった。
このまま突っ込むのは危険だと判断した俺は、ドームに入らずに、ドームそのものを大剣で攻撃した。
「オラ!」
「ビイイイン。」
「な!」
勢いよく振った大剣は魔法の壁に弾き返されてしまったのだ。
防御魔法っていうのはそんなに強いのか。驚いていると、ウィッチがこちらを見ている。
「くそ! 魔法を攻撃しても『隠密』は解除されるのか!」
急いで距離を取ったが、ウィッチは俺に狙いを定めている。
また魔法陣が展開された。
「ホホホホホホ!」
今度は雷だ。ウィッチの杖からピリピリと稲妻が走り、雷の玉が飛び出した。
相手からは俺しか見えていないのだから、当然雷の玉は俺に襲いかかってくる。
「チッ!」
横にとんで避けることは出来たが、ちょっと掠って左腕が痺れた。
しかし、どうしたらよいのやら。あの防御魔法をどうにかしない限りは、倒すことができない。剣を弾き返すのだから、あの中に侵入するのは不可能だろう。
二人はどうしているかと見ると、後ろの方で二人集まっていた。
「何やってるんだ?」
突然ミヤビがジャンプした。
飛んだ彼女を今度はトルクが下からハンマーで叩き上げた。ハンマーを足で受け止めて、ミヤビはさらに高く跳び上がった。
ミヤビは高い壁のさらに上を越えてしまった。
「なるほどな……。」
魔法の壁は、唯一上だけが開いているのだ。ミヤビは、そこを乗り越えてしまった。
ミヤビは真上からウィッチに襲いかかった。
「面倒くさいことしてくれましたね!」
自分の体重も乗せて、上から一撃。見事にウィッチの脳天を捉えた。
ウィッチは怯んだが、まだ倒れなかった。相当しぶといやつだ。
しかし、厄介だった魔法の防御壁は、ウィッチが攻撃を受けた拍子に消えてしまった。こうなればやられっぱなしになんてならない。
ウィッチがまだ立て直す前に、俺は大剣を振り上げていた。まだ少し左腕が痺れているが問題ない。
「これで終わりにする!」
「ズバァ!」
走り込んでウィッチを直接袈裟斬りにした。周囲の土を巻き上げて、また竜巻が起ころうとしたが、そんなものを待たずして、ウィッチは倒れた。
それにしても苦戦したものだ。誰も深手は負わなかったものの、手こずってしまった。
「また人間キャノンを使うことになってしまうとは。」
あの技、そんな名前をつけていたのか。
ミヤビとトルクが戻ってきた。
「勝ったのはいいですけど、まったく問題は解決していませんよね?」
トルクの言う通り、まだ俺たちは遭難したままだ。
また途方に暮れてしまうのかという、俺たちの前に、一つ影が飛び出してきた。
正体は、モンスターではなく人間だったので一安心だ。
「声がしたと思って来てみれば、驚いたね。あんた方、旅の人かい? N2に何か用でも?」
突然出てきた男はそう俺たちに話しかけてきた。って、
「ノース2! エリアどころか、地方をまたいじゃってるじゃないですか!」
何が起きたらそんなことが起こるのだろうか? イベントなのか、それとも何かしらのエラーが起きているのか。ともかく、正規ルートじゃないのは確かだ。
男はプレイヤーという見た目ではなかった。
「誰なんでしょう? ゲーム内のNPCだとは思うのですが。」
システム上必要なNPC、例えばギルドの受付のお姉さんや、武器屋のおじさんのようなのには何度も会ったことはあるのだけど、この男のような、ぶらついているタイプは初めてみる。
男は勝手に話し続けた。
「それにしてもあんた方は行く当てがあるのかね?」
「はい、W3に行きたいのですが……。」
「ないならおいらについて来なよ!」
話し聞けよ! いや、NPCだから仕方ないのか。
「ついていくしかなさそうですよ。」
どうやら強制イベントなようなので、三人で男の後を歩いた。
男は迷うことなく何度も曲がりながら歩いていく。NPC特有の不気味さが否めなかったが、おかげで早くも目的地に着いたようだ。
男は洞窟の入り口の前で立ち止まった。
「さあ、ここだよう。入っておくれ。」
男は指差し、自分が先頭で入っていくが、怪しい。
俺は入るのを少し躊躇ったが、背中をミヤビに押された。
「ちょ!」
「どうせ入るしかないんですから、さっさと行きましょ。」
なすがままに入り口に入った。
洞窟は下へと続いていた。中はひんやりとして暗く、声を出すと響いた。
足場は少し悪かったが、それでも男は止まらない。
しばらく進むと、突然洞窟の坑内に門が現れた。鈍色の金属門だ。
「ここを入れば、もう安全だよ。」
男がそう言うと、門は内側から開いた。
門から光が漏れた。
「うわ! すごい!」
「これは想像できませんでしたね。」
二人も仰天している。もちろん俺だって腰を抜かしそうだ。
門の先に広がっていたのは、巨大地底都市だった!




