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コボルトクリエイトマイスター  作者: 黒いきつね


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第3話 日常探索終了

どちらが岩に描いた的の中心に多く当てられるか、コボアとコボイの二匹は石投げに夢中になっていた。


俺が即席の訓練場所にお邪魔しようとしたところ、


「わん、わん」

「うわん、うわん」


まるで本物の子犬みたいな鳴き声を上げながら、二匹は石つぶてを握りしめて振り向いた。


「練習、邪魔しちゃうけど、混ぜてもらってもいいか?」


俺が声をかけると、


「わん!」

「うわん!」


今度はさっきより一段高い声で吠えてみせる。どうやら歓迎らしい。


二匹は的の前から少し下がり、真ん中の場所を譲ってくれた。


俺が何か新しいことを始めようとしているのを察したのか、二匹とも「ハッ、ハッ、ハッ」と犬特有の荒い息を漏らしながら、期待の目を向けている。


「学校では嘲笑の的、コボルトからは師匠目線。

このままじゃ、俺の進む先はコボルト道一直線になりそうだな。

……まあいっか」


このコボルト二匹からの絶大な信頼だけど……いまからやるの、コボルト呪術 Lv.1 の実験だから、そんな期待の目で見られても困るんだけど。


俺だってまだ手探りなんだから。


まあ、あまり気にしないように、ステータス画面をタップして、新たなウインドウを開き、詳しく調べてみると、このコボルト呪術、今すぐ使えるのは一種類の呪術だけだった。


もし呪術の種類を増やしたいなら、スキル SP を消費して二つ目の呪術も習得できるらしい。だけど、とりあえずは最初の一つを使ってみてからにする。


呪術の詠唱文だが、どうやら結構な中二病チックなものだった。


だが、これもダンジョンで生き残るためと考えれば、どうということはない。


今日から俺も中二病患者の一員になるだけだ。


せいぜい、痛い人間になってやるさ。


さて、やるか。


「いでよ。万象に宿りし悪戯好きの洞窟精霊よ。

我が命に従い事を成せ――陽気な悪戯念動コ・テレキネス・ボルト


呪文を詠唱し、最後に呪術名を叫ぶと、辺りに魔力だまりが出現したような、ピリピリした空気が、頬を冷たく撫でる。


同時に、目に見えない何かと俺とのあいだに、細い魔力パスがつながったような感覚が走った。


その存在に向けて、足元に転がっている石を浮かせてみろと念じると、俺が見つめた小石が、よろめくように宙へと浮かび上がっていく。


今度は、その宙に浮いた小石を岩に描いた的の中心に当てろと念じる。


次の瞬間、中心部に命中した小石は、乾いた「ガツン」という音とともに弾かれ、岩肌を何度もはね回りながら、どこかに落ちた。


コボアもコボイも、目を皿のように大きく見開いてこの現象を見守っていたが、すべてを見届けると、一斉に吠えだして俺のももにしがみついてきた。


「わんわん、わんわん、わんわんわん」


「うわんうわん、うわんうわん」


この二匹の「教えて! 教えて!」とせがむ行動は、子供が親におねだりするときと一緒だ。


そう思ったちょうどそのとき、魔力パスがぷつりと途切れる感覚があった。


「きゃんきゃん」

「くーん、くーん」


「時間にして十秒くらいか……っていうか、分かった、分かったから! そんなに強くズボン引っ張んなって」


できるかどうかはさておき、ここまで期待の目で見られたら教えないわけにはいかないだろう。


とはいえ、二匹ともライバル心むき出しなのは、正直めんどくさい。


「いでよ。万象に宿りし悪戯好きの洞窟精霊よ。我が命に従い事を成せ――陽気な悪戯念動コ・テレキネス・ボルト


そんなピリピリした空気の中、二匹にじっと観察されながら、俺は呪文を何度も詠唱してみせた。


そのたびに、的が描かれた岩に小石がぶつかる。どうせならと動かす小石の数を増やしてみたところ、今のレベルだと二個同時に動かすのがせいぜいだった。


「あー疲れた。主に精神的に。中二病に侵され始めたら心がズキズキ痛むんだ。初めて知ったよ。……じゃあ、はい、これくらいでいいでしょ。あとは二匹ともやってみたら。無事に発動するかはわかんないけど……」


「うーっ、わん」

「くーん、うわん」


二匹とも、やる気がみなぎったように元気よく吠える。


この瞬間から、ここの即席練習場はガラリと演目が変わった。


今から、この空間は、トイプードル型コボルトによる発声練習会場と化した。


そうなると当然、コボルト犬の遠吠えにつられ、低級とはいえ魔物が次々に客席に集まりだす。


「マジか。結局こうなるのかよ。照明ライト以上の集客効果。

もうさ、これ満員御礼じゃん」


整理券ならぬ、地獄への招待券つき投げナイフがこの場を、一気にカオスな空間に変えていく。


現れる魔物が一匹から多くて三匹ずつだから、まだ一人で対処は可能だが。


「こいつら、ちょっとは手伝おうって気が起きないかね。ライバル心むき出しで、競い合うのはいいことだけどさ……少しは周りを見てほしいわ」


俺は戦いの合間を見ながら、ついつい愚痴をこぼした。


二匹揃って、真正面から順番に吠え合う姿に微笑ましさも覚える反面、周りに目を向ける様子はまだ見られない。


まあ、先制の遠距離攻撃の一撃で、サクッと音も出さずに討伐する練習にはもってこいか。


大ガエルやら、一角兎やら、スライムの魔石が、時間が経つごとにこの洞窟フロアに溜まっていく。


拾っては投げてを繰り返しても、見つけるのに手間がかかり、すぐに手元の投げナイフが尽きてしまった。


こっちに向かってくる魔物出現数と比べると、こちらの人的総数が足りてない。


ならば次は、あの痛い呪文を詠唱し続ければいい。


「精神がガリガリ削られるけど、しょうがない……

いでよ。万象に宿りし悪戯好きの洞窟精霊よ。我が命に従い事を成せ――陽気な悪戯念動コ・テレキネス・ボルト


コボルト念動呪術で二本の投げナイフを宙に浮かべるイメージをしてみたら、さっきまでどこにあるかも分からなかったナイフが、自分から手を上げるみたいに浮き上がってきた。


これで、わざわざ投げナイフを探す手間が省けた。


なら、次は、投げナイフが自動で浮かび上がり、敵が現れたら、そいつの急所に刺さるように念じてみれば、そのイメージもすぐに現実のものとなった。


結果として、仲間を呼ぶ鳴き声を出す前に、大ガエルの命が刈り取られた。


少しずつ呪術の要領がつかめ始めると、なんだか単純作業みたいに思えてきた。


そう気が抜けかけていた次の瞬間、投げナイフが俺のすぐ目の前を、右から左へスパッ……と剛速球以上のスピードで駆け抜けていった。


もう一メートルほどズレてたらと思うと、サーッと肝が冷えた。


「うわっ、ヤバヤバ。自分の呪術で真横から頭に刺さるって、さすがにアホすぎるわ。気を付けよ」


気を引き締めると、魔物討伐にまた励む。


地面に魔物素材のホーンラビットの角が落ちてたので、それも投射武器として使ってみたら、見事、ホーンラビットの腹に突き刺さり、次の瞬間には息絶えた。


運がよかったのか、もう一つホーンラビットの角が出現した。


「ラッキー!」


投射武器が一つ増えたから、また少し、討伐作業が捗ることだろう。


この調子で、呪術効果が切れるまで念力操作を行使し続けていたら、自ずと分かったことがある。


陽気な悪戯念動コ・テレキネス・ボルトを一回行使した時の消費 MP は五。


しかも使っているうちに、十秒だった持続時間が十一秒へと、本当に微々だけど伸びているような気がする。


そうして何度も投げているうちに、いつしか、一切魔物と接近戦をすることなく遠距離攻撃を繰り返し、立ちどころに葬り去っていく、爽快な戦闘光景が広がっていた。


たくさんの魔石が転がれば、それはやがて二匹の目に映るのも時間の問題だろう。


その結果がロクなことにならないのは分かり切ったことだ。


そんな二匹に目の前には、美味しいご馳走の魔石の山が……

自分たちの歌で、こんなにおひねりが会場に投げられる状況は、きっと、夢にも思わなかったはずだ。


二匹は、歓喜の涙を浮かべて、感謝の遠吠えを上げる。


「わおーーん」

「きゃいーん」


それからというもの、この二匹の食いしん坊コボルトは、挨拶もそこそこに、とっとと演奏会を終了させて、幕を下ろした。


その後は、またもや魔石早食い競争に移行してしまった。そこから先が完全にこっちの想定する範囲外だったのは、もはや言うまでもなかった。


「頭痛っ」


身体のポテンシャル以上に継続的に魔力を使い続け、精神疲労度がピークになる症状のひとつの指標として、頭痛が出始めると新人研修で教わった。


二匹の魔石強奪要因も重なり、頭痛がしてきたので、今日の探索を終えることにした。


ちなみにここ数日、こいつらは基本ダンジョンの中で放し飼いにしている。


そのほうが餌代がかからないし、今のところはテイム手続き料とかいう名目で金をむしり取られるのも回避できている。


初日は送還して帰ったはずなのに、次の日にダンジョン探索を再開したら、気がついたときには、俺の討伐素材の魔石を美味しそうに食べていた。


それからは、基本ビビリ体質のこいつらなら、危なくなったらすぐに自分で送還するだろうと考え、自由にさせている。


いろいろ前置きが長くなったが、


「コボア、コボイ、今日はもう探索終えるから、あとは好き勝手にしていいからさ」


大好物の魔石を食べるのに大忙しだった二匹は、途端に後ろに振り返ると、俺のほうに一斉に駆け寄ってきた。


「くーん、くーん」

「きゃん、きゃん」


まだ一緒に遊ぼうという鳴き声が耳に届くが、愛情を込めて首回りを撫でてやると、「ハッ、ハッ、ハッ」と尻尾を振って甘えてきた。


と思ったら、コボアとコボイの二匹は、自分の胸を必死に叩いて、何かを主張してきた。


……胸を叩くって、何が言いたいんだ。


……って、そうか。分かった。


「そういや、こいつら二匹のステータス更新、新人研修の時に一度更新してから、あれからずっとやってなかったわ。ごめんごめん。でも、実際、お前らただのお荷物だったし、やる気起きなかったからだけど、まあいいや。いい機会だし、やっとくか」


――コボアとコボイのステータスオープン。


----------------------------------

■ステータス

名前:コボア(0)

種族:トイプーコボルト(新種)

属性:【家】【鉱山】【森林】【地下】

ジョブ①:コボルトマイスターの眷属 Lv.5(+4UP)

ジョブ②:〈NEW〉トイプーコボルト兵士 Lv.5(+5UP)

生命力:150(+120UP)

魔力総量:150(+120UP)

基礎体力:100(+80UP)

基礎魔力:80(+58UP)

筋力:85(+60UP)

器用:65(+55UP)

敏捷:90(+80UP)

運:40(+4UP)

SP(parameter):90 SP(job):18 SP(skill):9

スキル:〈NEW〉コボルト格闘術 Lv.2/〈NEW〉コボルト気闘法 Lv.1/〈NEW〉咆哮 Lv.2/〈NEW〉暗視 Lv.1/〈NEW〉嗅覚 Lv.1/コボルト召喚 Lv.1/コボルト送還 Lv.1/〈NEW〉コボルト呪術 Lv.1/〈NEW〉投射 Lv.1/

----------------------------------

■ステータス

名前:コボイ(0)

種族:トイプーコボルト(新種)

属性:【家】【鉱山】【森林】【地下】

ジョブ①:コボルトマイスターの眷属 Lv.5(+4UP)

ジョブ②:〈NEW〉トイプーコボルト魔法師 Lv.5(+5UP)

生命力:110(+70UP)

魔力総量:250(+220UP)

基礎体力:80(+65UP)

基礎魔力:155(+120UP)

筋力:65(+55UP)

器用:75(+55UP)

敏捷:70(+60UP)

運:42(+4UP)

SP(parameter):90 SP(job):18 SP(skill):9

スキル:〈NEW〉生活魔法 Lv.1/〈NEW〉土魔法 Lv.1/〈NEW〉金属魔法 Lv.1/〈NEW〉咆哮 Lv.2/〈NEW〉暗視 Lv.1/〈NEW〉嗅覚 Lv.1/コボルト召喚 Lv.1/コボルト送還 Lv.1/〈NEW〉コボルト呪術 Lv.1/〈NEW〉投射 Lv.1/

----------------------------------


「はー、そういうことか……」


色々と謎が解けた気がする。


眷属だから、自分自身でステータス更新することができない。


ステータス更新してなかったから、本来の力がだせてなかっただけ。


これでステータスを更新したから、次からは戦力になるのはいいとしよう。


冷静に見ると、真面目に育てたら普通にヤバい戦力になるのも頷ける。


問題はだな、なぜ、今になって言ってきたかだ。


もっと早い段階……そう毎日帰り際に言ってくれても良いようなものだよな。


やっぱりこいつら、俺のこと、舐め腐ってるわ。


「……おい。お前ら。ちょっと、そこに正座。……って言っても分からんか。だけどな、このステータスあるのに、俺の手伝い一切しないってどういうつもりだ。説明して」


「くーん、がう、がう、がう」

「きゃいーん、ふが、ふが、ふが」


「うん、何言ってるか分からん。まあいいや。明日から、前線で戦ってもらうからな。分かったら、一回返事して」


「わん」

「うわん」


「じゃあ、罰として、このフロアに落ちてる魔物素材の回収手伝って。はい、作業開始。さあ、行った行った」


反省した二匹の協力もあって、思ったより早く素材回収は終わった。散らかった魔石は、ものの見事に全部食べられたけど……そこは餌代だと思って割り切るしかない。


ただ、自分で集めた魔石は全部で三十個近くバッグに入っている。


これは、これまでの探索の中では最高値を更新したかたちだ。


素材もホーンラビットの角五本、スライムの表皮七枚、スライム液瓶五本、大ガエルの舌四枚と、そこそこ集めることができた。


「はあ、今日は精神的に疲れたよ。じゃあコボア、コボイ、二匹ともくれぐれも怪我だけはしないように。また明日。おやすみ」


「わんわん」

「うわん、うわん」


そう言い残すと、この場をあとにした。


魔素の薄い地上ではステータス更新ができない。だから、魔素濃度が高いダンジョン内で、ひとまず確認は後回しにしてステータス更新だけを済ませておく。


終わったらダンジョンゲートを通り抜け、この初心者ダンジョンから地上へと帰還した。


◆◇◆◇◆◇


ダンジョンゲートから地上に出ると、そこはもう府中探索者ギルドの中庭の一角。


基本、国から委託を受けてダンジョンを管理する探索者ギルドの建屋は、建築基準法上、魔物が溢れ出す事態を必ず想定して建造するという制約が設けられている。


そのため、たいていの探索者ギルドは、中庭か地下空間のどちらかにダンジョンゲートが設置されるよう、あらかじめ設計されている。


ここ府中探索者ギルドはいわゆる前者で、周囲をぐるりと囲む建物の上部から、地面に向けてライトがあちこちから照らされている。


この中庭は、夜だというのにかなり明るい。


辺りを見渡すと、ダンジョンゲートの周囲で立哨している職員の中に、気だるげそうな中年ギルド職員の姿が見えた。


この人とは何度か話をしたことがある。俺のほうから声をかける。


「ごくろうさまです」

「お疲れ。調子はどうだ」

「今日はボチボチでした」

「そりゃよかったな。この時間帯の受付は、まだ込んでるぞ」

「そうですか。もう少し潜っててもよかったかもですね」

「いや、慢心はやめておけ。自分の命を軽く考えるな。身体の調子が悪いと思ったらすぐに出てこい。引き際を誤るとひどい目に遭うからな。初心者ダンジョンだと思って甘く見てると大怪我して、回復ポーション代で首が回らなくなるぞ」


実際、そういう人たちを大勢見てきた経験者からの忠告だ。


確かに、この魔物の間引き作業、気の緩みが身体の負傷に直結する。


こういう言葉を投げかけられると、探索者って奴は、下手な格闘家やスポーツ選手よりも、比較にならないくらいヤバい職種だと、改めて実感してしまう。


「そうですね。気をつけます。じゃあ俺そろそろ行くんで、お仕事頑張ってください」

「おう、またな」

「じゃあ、失礼します」


別れの言葉をお互いに掛け合い、中年探索者はこの場から離れていった。


まだお互いに名前も名乗り合わない、簡単な世間話しかできない関係性だけど、こういう人がギルド関係者の中にいれば、役に立つことがあるかもしれない。


少しずつ距離感を縮めていけばいいと、頭の中で考えを示しておく。


中庭から、建物内に入ると、そこはもう市役所の住民サービスコーナーと同じ仕組みだ。


今日の仕事を終えた初心者に毛が生えた未成年の学生たちが大勢、詰めかけている。


その新人たちでほとんどの席が埋まり、待合スペースの空席のほうがまばらだ。


新人たちは、今か今かと受付番号が表示される掲示板を見つめながら、自分の順番が来るのを、ひたすら待ち続けていた。


 応援よろしくお願いします!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


 と思ったら


 下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

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