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リヴァ・アルカ ―特殊部隊は、一人のアンカーを檻に乞う―  作者: Ilir Noct
第十二章「閉鎖系の外乱 ― Disturbance in a Closed System」

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別棟の通信室





 車は、旧拠点から南へ向かった。



 ヴィクトルがマセラティを運転していた。


 助手席で、アルノは端末を膝に置いていた。


 後部座席では、真ん中でユキナガがルカのノートパソコンを開いていた。


「結局マセラティから拠点に移動させてる」


「五人乗れるのがこれしかなかった」


「なんでだよ」ユキナガが言った。


 リヴァは左側で、窓の外を見ていた。


 カイは右側で前方を見ていた。


「煽るだけ煽って」アルノが言った。


「……あんなの相手に交渉すらしたくなかった」


 ユキナガは両腕を上に伸ばして背中を鳴らした。手が天井についた。


「大丈夫だよ、あいつ終わったらケロっとしてるし」


「あんな泣いててか?」ヴィクトルが言った。


「それでいて根深くて怖いのなんの」


「本当にお前らは似てないな」


「……俺は他人に労力割きたくないの」


 リヴァは窓に頭を預けてユキナガを見ていた。



 車は石畳を外れ、住宅区へ入った。


 新拠点のセーフハウスは、旧市街から離れた住宅区の端にあった。


 二階建ての石造りの建物と、隣接する細い塔。正面の低い塀に沿って、九月の乾いた蔓が残っていた。


 フィンの車が先に停まっていた。


 門は開いていたが、姿はなかった。


『内部クリア。地下も空だ』フィンの声が端末から入った。


 ヴィクトルは車を敷地へ入れた。


「城よりも現実的だ」ユキナガが言った。


「俺はシャワー入ってくる」ヴィクトルが言った。


 エンジンを切ると、ボルドーのシャツの背を一度引き、建物へ入っていった。


「カイ。リヴァ」


 二人がアルノを見た。


「奥の二部屋を使ってください。緊急時は起こします」


「了解」カイが言った。


 カイとリヴァは荷物を持ち、廊下の奥へ向かった。


 ユキナガは通信機器とルカのノートパソコンを抱えた。


「別棟が通信室だよな。俺はそっち行く」


「お願いします」


 灰色のバンが門を通った。


 後ろから、ジュリオの乗った車が続いた。


 アオイが先に降りた。


「三名、状態変化なしです。押収品もあります」


「地下へ。別室に分けてください」


「はい」


 ジュリオが車から降り、首を回した。


「残り八人も警察筋のとこ入れてきた。朝まで動かさないように伝えてる」


「ありがとうございます」


「コーヒーある?」


「中にあるんじゃないですか」


「ちょっとは労ってよねぇ」


 アルノは何も言わずに捕虜の一覧を開いた。


 ジュリオが車の方に戻った。


 フィンが裏手から戻ってきた。


「東の屋根から一階が見える。北側は塔からも死角だね」


「裏口は」


「開けたら廊下まで一直線。内側に家具を入れて、もう一度止められる場所を作るよ」


「お願いします」


「車は正面へ置かない方がいい。裏の路地へ二台回して」


 ジュリオが車の鍵を持ち上げた。


「任せろ」


 フィンは灰色のバンを見た。


「じゃあ俺は外で警戒してる」


 装備を取り、再び裏手へ回った。


 捕虜は目隠しをしたまま、一人ずつ地下へ運ばれた。


 アオイは押収品を番号順に並べ、各室へ記録端末を置いた。




 別棟、二階。


 ユキナガは仮設モニターを三枚並べていた。


「こんだけ移動してると慣れるもんだな」


 旧拠点のログを一枚目へ、セーフハウス周辺の映像を二枚目へ出した。


「膝枕されるまでもなくなってきた…」


 扉が開いた。


 ヴィクトルが入ってきた。


「膝枕ってなんだ」


 黒いシャツへ着替え、濡れた髪を後ろへ流していた。


「こっちの話」ユキナガは口角を上げた。


 ヴィクトルは不機嫌な顔をしていた。


 腕を組んで、指先で腕を叩いていた。


「ヴィクトル、どうしたの」


「アルノにトムフォード取られた」


「香水?」


「いつ敵襲あるかわからんからって」


「ちょっとの間我慢しろよ」


「そのまま戻って来たことがない」


「いつも捨てられてんのかよ」


「いくらすると思ってんだ」


 ヴィクトルは隣の椅子へ座った。画面を見た。


「…旧館側の保守盤は落としたか」


「落とした。でも外向きだけ止まってない」


「図面出せ」


 ユキナガが画面を送った。


「ここ?」


「違う。一本下。またハッキングされるかもしれない。三番を切っとけ」


 ヴィクトルが画面を拡大した。


 ユキナガが入力した。


 一枚目の画面から、送信の表示が消えた。


「切れた」


「次。急ぐぞ、尋問が始まる」


 二人はそのまま作業を続けた。

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