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リヴァ・アルカ ―特殊部隊は、一人のアンカーを檻に乞う―  作者: Ilir Noct
第十一章「情熱の死角 ― Blind Spot of Desire」

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ローマの夜

閑話です。ごめんなさい。




 ローマ 午後十一時二分。


 観光客向けの店ではなかった。


 バーの奥は、真鍮の取っ手がついた硝子扉で区切られていた。


 扉が閉じると、換気設備の低い音がした。


 壁際には深い色の木製棚があり、酒瓶が間隔を揃えて並んでいた。大理石のカウンターには真鍮の縁が入り、銀色の灰皿が一席ごとに置かれていた。


 照明が低く、革張りの椅子と、曇りの入った古い鏡が壁を覆っていた。


 緑色のシェードを被せたランプが、グラスと指先だけを照らしていた。


 スタッフは、ヴィクトルに名前を聞かなかった。顔を見て、奥の席へ案内した。


 ユキナガは後ろからついて行った。


 カウンターにいた女が、ヴィクトルを見た。目が合うのを待つように、少し長く視線を置いた。


 ヴィクトルはそちらを見なかった。


 その隣にいたアジア人の女は、ユキナガを一度見た。視線はすぐに、手元のグラスへ戻った。遅れて、ユキナガが一瞬見た。


 ヴィクトルは席に着く前に、入口と、鏡の位置を一度だけ確かめた。それから座った。


 店員が、チェレットのバローロをヴィクトルに運んできた。


「好きなの選べ」ヴィクトルは言った。


 ユキナガはカウンターの奥のボトルを一通り見て、リモンチェッロ・スプリッツを頼んだ。


 注文を取りに来た女の名札を、一度だけ見た。グラスを受け取る時には、その名前を呼んで礼を言った。


 女が少し笑った。


 さっきユキナガを見たアジア人の女が、もう一度こちらを見た。


 ユキナガは気づいて、軽く笑った。


 細身の緑のドレスを着た女が、ヴィクトルの席へ来た。二十五歳前後で、よく手入れされた長い金髪を肩へ流していた。


「Victor」女が呼んだ。


「Ciao」


 ヴィクトルは短く応えた。イタリア語だった。


 女が何か言い、ヴィクトルは静かに首を振った。女は表情を崩さず、ハグをして頬へ軽く口づけて去った。


 ユキナガが、その背中を見た。


「綺麗な人」


「そうだな」


 ヴィクトルは頬についた口紅を親指で拭いた。


「好みじゃないの」ユキナガが言った。


「好みだけで選ぶほど暇じゃない」


 ユキナガが、煙草の箱を指先で回した。


「面倒くさ」


「お前が雑なんだ」


 しばらくして、女が二人近づいてきた。


 一人は三十代の半ばに見えた。濃紺の細身のドレスを着ていた。黒髪で、耳には金のピアスが一つだけあった。香水は、近づかなければ分からない程度だった。


 派手ではなかったが、通り過ぎる時に、近くの男が一度見た。


 女はヴィクトルを見て、迷わず来た。


 ヴィクトルは、その夜初めて女を正面から見た。


 もう一人は、その連れだった。二十代の後半くらいの金髪で、店の中を一度見渡してから来た。入口と、鏡の位置で一度ずつ視線が止まった。笑顔が少なかった。


 三十代の方が、ヴィクトルをハグして頬に軽く口づけた。


「クラウディア」ヴィクトルは言った。


 髪を見た。


「切ったな」英語で言った。


「二か月前ね」女は笑って、英語で返した。


「似合ってる」


「遅いわよ」


 クラウディアが顔を少し近づけた。


 ヴィクトルの視線が、彼女の首元へ落ちた。


「変えたな」


「何を?」


 ヴィクトルは答えず、香りを確かめるように、わずかに顔を寄せた。


「前の方がよかった」


「じゃあ次はあなたが選んで」


 ヴィクトルは少し離れると、ユキナガの方へ手を向けた。


「ユキ。日本人」


「ユキ」クラウディアは繰り返した。ユキナガの顎に人差し指で一度触れた。「かわいい」


 ヴィクトルが顔を顰めた。


 連れの女が、ユキナガを一度見た。笑顔がなかった。それだけですぐにクラウディアの方へ身体を向けた。


「ルチア。後輩」クラウディアが紹介した。


 クラウディアは、ヴィクトルが椅子を引くのを待ってから座った。


 彼女の分のワインを頼んだ。


 クラウディアが、テーブルのSobranieの箱から一本抜いた。ヴィクトルが火をつけた。


 クラウディアが一度吸った。


 ヴィクトルは彼女の指から取った。同じ場所へ口をつけて吸った。


 それから、またクラウディアの指へ戻した。


「いつ来たの」クラウディアは言った。


「三日前くらい」


「いつまで」


「決まってない」


 クラウディアは煙を吐いて、ヴィクトルを見た。


「あなたは、疲れてる時しか私を呼ばないわ」クラウディアは言った。


「アマルフィ行っただろ」


「あれは三年前よ」


「じゃあ、あれが最後に取った休暇だ」


 クラウディアが、小さく笑った。


 ルチアは、ユキナガの方をあまり見ていなかった。


 ルチアの視線が、ヴィクトルの指先へ一度落ちた。


「日本、来たことある?」ユキナガがルチアに言った。


「ない。アイドルがすごく有名よね」


「韓国じゃないかな、それ」


「ああ…」


 ルチアは目は合わせなかった。時々、手元の携帯を見た。





 少しして、ルチアがトイレに立った。


 姿が見えなくなってから、ユキナガはテーブルに額をつけて倒れこんだ。


「戦えねえよお」


「同じユーラシア大陸だ」


「島国だからつながってないの」


 突っ伏したユキナガの頭を、クラウディアが撫でた。


「こんなにかわいいのに」


 ヴィクトルがクラウディアを見た。眉間に皺が寄っていた。


「あの子、何の仕事してるの」ユキナガが言った。


「後輩よ。あなたは?」


 ユキナガは黙った。言葉を飲み込んだ。


 クラウディアがもう一度撫でた。


「ヒール履いたら俺より身長高いじゃん……DNAが違あう」


「クラウディア」ヴィクトルが撫でている手を取った。そのまま指を絡めた。


 ユキナガは二人のつながった手を見た。


「あの子最近彼氏と別れたのよ」


 ユキナガが顔を上げた。


「…そう、なんだ」




 しばらくして、ルチアが戻ってきた。


 ルチアが、クラウディアの飲みかけを一口もらった。


 眉が、わずかに寄った。


 すぐに戻った。


「苦いのじゃなくて、匂いが駄目って感じ?」


 ユキナガが言った。


 ルチアがユキナガを見た。


「……どうして?」


「そういう顔してたから」


 ユキナガは立ち上がって、カウンターへ向かった。


「ジン・リッキー。プリマスで」


 バーテンがボトルへ手を伸ばした。


「ライム、少し多め。皮は潰さないで。ソーダも少なめで」


 バーテンがユキナガを見た。


「注文が多いな」


「飲む人が難しそうだから」


「君が作るか?」


「俺がやったら金取れないでしょ」


 バーテンが鼻で笑った。


「誰が飲む」


 ユキナガはルチアを一度見た。


「まだ俺のじゃない人」




 届いたグラスを、ルチアの前に置いた。


「嫌なら俺が飲むから」


 ルチアはグラスを取らなかった。


 ユキナガの手と、カウンターにいた店員を一度見た。


 ユキナガがテーブルに肘をついて、笑った。


「平気だよ。作ってるところ、見えてたでしょ」


 ルチアの視線が、ユキナガへ戻った。


「私が見てたの、気づいてたの?」


「うん」


「それで、なんで私に話を振るの?」


「俺のことも見たから」


「一度だけよ」


「最初に一回。ヴィクトルと話してる時に、もう一回」


 ルチアは何も言わなかった。


 ユキナガは椅子へ座り直した。


「……聞かないの」ルチアが言った。


「何が」


「仕事とか」


「俺も答えづらいし」


 ユキナガは少し考えた。


「それに警戒してる人が、危ない人とは限らないでしょ」


「危ない人かもよ」


「それなら、もっと入口の近くに座るんじゃない?」


 ルチアが、初めて少し笑った。


 ルチアは一口飲んだ。


 今度は眉が動かなかった。


「どう?」


「悪くないわ」


「よかった」


 ユキナガは椅子へ座り直した。


「あと、ヴィクトルが触ったものだけ確認してるけど」


 ルチアの手が止まった。


 ユキナガは声を落とした。


「警戒するの、間違ってないよ」


「あなたの連れでしょ?」


「俺も警戒してる」


「信用してないの?」


「信用はしてる。安心してないだけ」


 ルチアがまた一口飲んだ。


「よかった。外してたら、かなり恥ずかしかった」ユキナガが言った。


「自信があったんじゃないの?」


「飲んだ時の顔見たかっただけ」


 ルチアの口元が止まった。


 ユキナガは、言ってから自分のグラスを飲んだ。


「あなた、いつもそんなふうに人を見るの?」


「仕事では、もっと嫌な見方する」


「今は?」


 ユキナガは、ルチアの手元から目を上げた。


「口説いてる」


 ルチアが携帯を伏せた。


「あなた、いくつ?」


「二十四」


「私より年下ね」


「それでやめる?」


 ルチアがグラスを持ち上げた。


「やめてほしいの?」


「全然」


 身体が、ユキナガの方へ向いた。


 テーブルの下で膝が触れた。


 ユキナガは退かなかった。


 ルチアも退かなかった。


 ルチアが細い煙草をポケットから出し、火をつけた。


 ユキナガが灰皿をルチアに寄せた。


「日本人って言ったっけ。中国じゃなくて?」ルチアが言った。


「日本だよ」ユキナガが笑った。


「ソウル…じゃなくて、なんだっけ」


「東京?」


「そう。それ」


 ユキナガは笑った。


「俺もヨーロッパ全然わかんない」


 少しルチアの膝が動いた。離れなかった。


 ルチアがグラスを置いた。縁に、薄く口紅が残った。


 ユキナガはそこを一度見た。


 それから、ルチアの口元へ目を移した。


「何?」ルチアは言った。


「別に」


「見てたでしょう」


「見ちゃ駄目だった?」


 ルチアが小さく息を吐いた。


 ルチアが、膝を退けないままユキナガを見た。


「さっきから、あなた女の人ばかり見てる」


「男も見てるよ」


「同じ目で?」


「まさか」


 ユキナガの視線が、ルチアの口元へ落ちた。


「今みたいな目?」


「今のは、ルチアにだけ」


 ルチアがグラスを持ち上げた。


 ユキナガの指先が、ルチアの指へ一瞬触れた。


 膝は、まだ触れていた。


「わざとやってる?」ルチアは言った。


「どっちが」


 ルチアは答えず、酒を飲んだ。


「Mi sa che mi sono innamorata di questo qui.」


 ルチアがクラウディアに言った。


 二人が顔を見合わせて笑った。


「なんて言ったの」


 ヴィクトルは笑ってユキナガを見ていた。


「Si vede che sei il mio allievo.(流石俺の弟子だ)」ヴィクトルがルチアに聞こえないように言った。


「おい、わかんねえよ」


 ヴィクトルは満足げだった。煙草に火をつけた。


 クラウディアが、ヴィクトルとユキナガを見比べた。


「あなたたち、似てる」クラウディアは言った。


「やめて」


「どこがだ」


 声が重なった。


 ルチアが笑った。


「今の」ルチアは言った。「そっくり」


 テーブルの端で、クラウディアのグラスが空いた。ヴィクトルとユキナガが、同時にカウンターの方を見た。


 ヴィクトルが、手を止めた。ユキナガに顎で示した。



 

 ユキナガが席を離れると、隣の席から女が紙ナプキンを渡してきた。


 ユキナガは開いた。番号が書かれていた。


 女を見て、軽く笑った。紙ナプキンをポケットへ入れた。


 ルチアが、その動きを見ていた。


 ユキナガが戻ってきたら、ルチアがグラスを飲み終えたところだった。


 ユキナガは、ヴィクトルから渡されていたカードキーを、テーブルの上に置いた。


 ルチアが、それを見た。少しの間そのままだった。


「明日は」ユキナガは頬杖をついて、ルチアをまっすぐ見ていた。


「休み」


 テーブルの上に置かれていたルチアの手を、ユキナガが上から包んだ。


 親指がゆっくり手の甲を撫でた。


「……誰にでも、こんなふうに話すの?」


「相手を見て変えてる」


「私には?」


 ユキナガはルチアの目から、口元へ視線を落とした。


「まだ帰したくない感じ」


 間があった。撫でていた親指が止まった。


 ルチアは何か言いかけた。


 ユキナガの顔と、親指とカードキーを見ていた。


 カードキーをルチアが取った。


「部屋見せて」ルチアは言った。


「俺でいいの?」


「今さら?」


 ユキナガが立った。


 カウンターにいたアジア人の女が、もう一度ユキナガを見た。


 ユキナガも見返した。


 小さなメモを差し出してきた。そこには番号が書かれていた。


 ルチアは、それを見ていた。


 ユキナガはそのメモをポケットに入れて、ルチアを先に歩かせた。


「あした七時」ヴィクトルが言った。


「ん」ユキナガは言った。


 ルチアと、先に店を出ていった。





 ヴィクトルは、ワインを飲んでいた。


「やっぱり俺の目に狂いはなかった」


「何言ってんのよ」


 クラウディアが笑いながら、ヴィクトルの肩を叩いた。


 二人はカウンター席へ移動した。


「いい部下ね」クラウディアがイタリア語で言った。


「部下とはまた違うな」ロシア語で返した。


「……ロシア語苦手だって」


「甘えてもいいだろ」ヴィクトルはクラウディアの頬を一度撫でた。


 二人は同時に赤ワインを飲んだ。


 ヴィクトルの端末が鳴った。


「……」


 裏返してカウンターに置いた。


「とらなくていいの」


 ヴィクトルはしばらく端末を見ていた。コール音は止まらなかった。


 仕方なく耳に当てた。

 

「……アルノ、何だ」


 ロシア語で話した。クラウディアを一度見てから、バーの奥へ移動した。


『…何故ロシア語なんですか』アルノもロシア語で返した。


「あてつけ。で、なんだ」ロシア語で続けた。


『ユキナガを返してください』


「女と寝てる」


 電話の向こうが、三秒黙った。


『そんなことをしてる時間はないはずです』


「必要な時間だ」


『ユキナガの端末の位置はホテル四階で停止しています。生体情報は取れていますが、音声がないので』


「お前な」


『では女性の身元を送ってください』


「今、休暇中だ」


『三年前のアマルフィ以来の休暇を、申請された覚えはありません』


 ヴィクトルは周りを見回した。ポケットの中を確認した。


「……お前、ここの音拾ってんのか?」


『さあ』


「拾ってるなら今すぐ切れ。切らないなら、お前が聞きたくないものまで聞かせてやる」


『とにかく、今すぐ連れ戻してください』


「もう部屋に入った頃だろ」


『扉壊してでも回収しろ』


「成人男性だ。好きにさせたらいいだろ」


『通信担当だ』


「今夜は別のものを担当してる」


『下品な報告をするな』


「聞いたのはお前だろ」


『交戦も起きてる、もし何かあれば』


「大丈夫だ」


 ヴィクトルはクラウディアの方を見た。


『……なぜ』


「お前は今夜、随分と好奇心が強いな」


『帰ってこい』


「アルノ。恋しくなったか?俺が」


『夜に帰る気がないなら、六時半までに帰れ』


 通話が切れた。


「かわいいな」


 ヴィクトルは端末の電源を落とした。


 カウンターに戻ると、隣の席の男がクラウディアに何か話しかけていた。


 クラウディアはイタリア語で返した。ヴィクトルとの会話より速度が速かった。男を笑わせ、自分も笑った。


 ヴィクトルは見ていた。


 男の手が、クラウディアに少しずつ近づいた。


 ヴィクトルが動いた。


 男の方は見もしなかった。


 クラウディアの手首を取り、自分の方へ引いた。もう片方の腕をクラウディアの腰へ回して、身体ごと自分の前へ入れた。


「ちょっと、ヴィクトル」


 クラウディアが顔を上げた。


 その唇をヴィクトルがふさいだ。


 それを見た男が退散した。


「触らせたくなかった」


 クラウディアの目が、少し細くなった。


 ヴィクトルが、もう一度引き戻して唇をあわせた。


 クラウディアの腰がカウンターについた。ヴィクトルのシャツを指で掴んだ。


 唇が離れた。


「子供みたい」クラウディアは言った。


 ヴィクトルはクラウディアのグラスを取り上げて、飲んだ。


「…先に行くわ」クラウディアが言った。


「クラウディア」


 ヴィクトルの声を気にせず、ドアの方に歩き出した。


「待て」


 ヴィクトルは、バーテンの男に首で合図してカウンターに紙幣を置いた。釣りは確かめなかった。上着を片手で掴んで、追いついた。


 街灯の下で、クラウディアが顔を上げた。


 ヴィクトルは、彼女が振り返りきる前に抱きしめた。


「部屋まで、待てないの?」クラウディアは言った。


「待った」


「待ってないじゃない」


「お前が店に入ってきてから、待ってた」


 クラウディアが、ヴィクトルの首へ腕を回した。


 少し前。


 エレベーターの扉が閉じた。


 ルチアが、カードキーを指の間に挟んでいた。


「初めからこうなるって思ってた?」ルチアは言った。


「ううん」


「どうして?」


「綺麗すぎて、俺じゃダメかと」


 ユキナガは、カードキーを挟んだルチアの手首を握った。


 ルチアが、ユキナガのシャツの襟を掴んだ。


 ユキナガは、そのまま口を塞いだ。


 カードキーが、床へ落ちた。


 ルチアの指が髪へ入って、ユキナガを引き寄せた。


 ユキナガは、唇を離さないまま四階を押した。


 頭上で、数字が一つ上がった。


 ローマ拠点 通信室 朝。


 卓の上に、ホテルのカードキー、ライター、硬貨、煙草、折れたレシートが並んでいた。


 ユキナガは、空にしたポケットの内側を指でなぞった。


 ヴィクトルは昨日と同じ服で、隣の画面を見ていた。


「楽しめたか」ヴィクトルは笑った。


 ユキナガはカードキーを差し出した。


 ヴィクトルは受け取らずに言った。


「別の女にもらった番号は?」


 ユキナガはテーブルにカードキーを戻した。


「これでポケットは全部…」


「捨てたのか?二枚あっただろ」


 ユキナガが、レシートを裏返した。


 何も書かれていなかった。


「……ルチアに捨てられたみたい」


「あーあ」


「……一緒に住もうって言われた。もう会わない方がよさそう」


 ユキナガは首を搔いた。


「クラウディアが困る?職場の後輩だっけ」


「問題ない。そんな関係じゃない」


「そうなんだ?」


「クラウディアは手配屋だ。ルチアは、人を消す方」


 ユキナガが止まった。


「は?」


「そのうち消されるかもな」


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