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一球入魂 ~二刀流のタイムリーパー、最高の1試合を求めて~  作者: とまCo
第6話 ラクラン・リード

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38/40

第22話 最高到達点の裏 ~秒針の裂け目~ [3/5]

 23時59分06秒。

 日付まで54秒。


 きおの寿命は295秒。


 ロペスが打席に入り、バットを構えた瞬間——

 球場全体の空気が、わずかに震えた。


 きおは、ゆっくりと帽子のつばに触れる。

 その動作だけで、観客席のざわめきが一段階静まる。


 ラクランがサインを出す。


 ◆ 1球目:外角低め


 きおはわずかにうなずき、深く息を吸い込んだ。


 実況席が息を呑む。


 『さあ、まずは初球……!』


 腕が振り下ろされる。

 ボールは外角いっぱいへ吸い込まれるように伸び、

 ストライクゾーンの端をかすめた。


 審判の右手が鋭く上がる。


 「ストライク!」


 ロペスは動かない。

 完全な見逃し。


 球場がどよめく。


 「うおおおおおおお!!」

 「今の取るのかよ!」

 「いや、完璧だ……!」


 実況席も興奮を隠せない。


 『外角いっぱい!

  これは……完璧なコントロールです!』


 23時59分19秒。

 日付まで41秒。


 ラクランはスコアボードを見て息を呑んだ。


 ——きおの寿命:201秒


 (……この1球に……84秒……)


 視線を外した瞬間、

 世界が揺れたような感覚があった。


 だが、今はそれを考えている余裕はない。


 (……あと2球……

  間に合う……はずだ……)


 ラクランはボールを返しながら、

 ミットに視線を落とし、

 グーパンチを入れる。


 視線を上げる。


 ——23:59:19

 ——寿命:201秒

 ——日付まで:41秒


 (……まだ……いける……)


 ◆ 2球目:外角(再び)


 ラクランは高めの速球を要求した。

 だが、きおは首を振る。


 もう一度、外角。


 実況席が反応する。


 『おっと、首を振りましたね……!

  これは……?』


 きおはセットポジションに入り、

 わずかに体をひねる。


 投げた瞬間、

 ロペスのバットが空を切った。


 ブォンッ——!


 空振り。


 スコアボードに

 0-2

 の文字が灯る。


 観客の声がさらに大きくなる。


 「キーオー! キーオー! キーオー!」


 実況席は声を張り上げる。


 『さあ、ツーストライク!

  あと一球で……

  きお選手は、前人未到の“全打者三球三振”を達成します!』


 『こんな試合、二度と見られませんよ!

  いや、今日が野球の歴史の終点かもしれない!』


 23時59分39秒。

 日付まで21秒。


 ラクランはボールを返しながら、

 ミットに視線を落とし、

 グーパンチを入れる。


 視線を上げる。


 ——きおの寿命:34秒


 ラクランの心臓が止まった。


 (……34秒……?

  さっき201秒あったのに……

  167秒……消えた……)


 理解が追いつかない。

 だが、まだ“死”という言葉は浮かばない。


 (……でも……あと1球だ……

  間に合う……はずだ……

  きおなら……)


 胸の奥に、説明できないざわつきが広がる。

 だが、それが何なのか、まだ形にならない。


 ラクランは自分に言い聞かせた。


 (……大丈夫……いける……)


 きおは静かに帽子のつばに触れた。


 汗が一筋、頬を伝い落ちる。


 観客席のざわめきが、

 まるで海の波のようにうねり続けている。


 実況席が息を呑む。


 『時刻は——23時59分。

  今日が終わる、その瞬間です……!』


 『さあ……運命の三球目です……!』


 ラクランがサインを出す。


 そして、

 3球目が始まる。


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