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一球入魂 ~二刀流のタイムリーパー、最高の1試合を求めて~  作者: とまCo
第6話 ラクラン・リード

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33/40

第19話 収束点

 「さあ、いよいよこの瞬間がやってきました!

  ワールドシリーズ第七戦、運命の最終決戦です!」


 アナウンサーの声が、球場の空気を震わせた。


 「19時ちょうど、プレイボール!

  歴史に残る一戦となるでしょう!」


 きおのチームは、アウェイ先攻。

 きおは六番。

 ラクランは五番。


 本来なら四番を任される男が、

 きおの一言で五番に移動した。


 「……お願いします」


 その一言だけで、監督は打順を動かした。

 理由は誰にも分からない。

 ただ、ラクランだけが理解していた。


 きおの“調整”は、攻撃にも及んでいた。


 *


 プレイボールの声が響く。


 1番が初球を軽く叩き、内野安打。

 2番は粘って四球。

 3番は送りバントを決め、ワンアウト二・三塁。


 球場がざわつく。


 (……これ、まさか……)


 4番は浅い外野フライ。

 ランナーは動けない。

 ツーアウト。


 ここでラクラン。


 相手バッテリーは警戒している。

 だが、ラクランは迷わなかった。


 (きおのために……)


 初球、外角ボール。

 二球目、インローにストライク。

 三球目、ファウルで一・二。

 四球目、外へ逃げるボールで二・二。

 五球目、わずかに外れて三・二。


 フルカウント。


 ラクランは深く息を吸った。


 六球目。

 外角低めのスライダー。


 ラクランは、わざと泳ぎ気味にバットを出し、

 ボテボテの内野ゴロを転がした。


 三塁手が焦り、

 握り直して一瞬遅れた。


 セーフ。


 満塁。


 球場がどよめく。


 (……これでいい)


 ラクランは静かに息を吐いた。


 そして、六番・きお。


 きおは静かに打席へ入った。

 バットを軽く握り、

 呼吸を整える。


 ラクランは一塁からその背中を見つめた。


 初球、外角ボール。

 二球目、インハイのストレート。

 きおは動かない。


 三球目、外角スライダー。


 その瞬間、きおの目がわずかに細くなった。


 ラクランは気づいた。


 (……来る……)


 きおは、静かにバットを振った。


 音が消えた。


 次の瞬間、

 打球は一直線に左中間スタンドへ吸い込まれていった。


 満塁ホームラン。


 アウェイ球場が一瞬、沈黙した。


 きおは走りながら、

 表情を変えなかった。


 ただ淡々と、

 ベースを踏んでいく。


 (……これが……)


 ラクランは震えた。


 *


 七番がヒット。

 八番も続いた。


 きおはダグアウトに戻り、

 投手用グラブを手にしていた。


 ラクランが戻ってくると、

 きおは静かに言葉を紡いだ。


 「ラクランさん。

  攻撃の流れはこうします」


 投球準備をしながら、

 きおは淡々と続けた。


 「1番から4番で満塁になったら……

  ラクランさんはアウトでいいです。

  ツーアウトで、ぼくに回してください」


 ラクランは息を呑んだ。


 「2人出塁してツーアウトの時は……

  ラクランさんが満塁にして、ぼくに回してください」


 「……できなかったら?」


 きおはミットをはめながら、

 淡々と答えた。


 「戻します。

  また同じ形を作ります」


 その言い方は、

 まるで天気の話でもしているかのように静かだった。


 ラクランは言葉を失った。


 (……こいつ……

  本当に……)


 九番が凡退し、

 チェンジのコールが響く。


 きおは立ち上がり、

 マウンドへ向かって歩き出した。


 その背中は、

 静かに、確実に、

 “収束点”へ向かっていた。

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