153、さらば家電達
153、さらば家電達
「……ヴェ」
「……ォ」
「……ボー」
天界の大広間で、様子を見守っておられた三種の神器のヒエール様、ブラウン様、ペタンコ様は、深いため息をつかれ爆発の起こった方向を見つめて呟いた。
「あの爆発がもし地球上で起こっていれば……」
「そうダォ、地球は深刻なダメージを受ておったォ」
「暴走したタマシールにこれほどの威力があるとはボッ」
ブラウン様はそう言って、レイちゃん達の最後の様子をブラウン管に再生した。
レジャズベ+5を担いだダイトコは猛スピードで上昇し、大気圏ギリギリの高さまで上昇したところで停止し、振り返った。
「フーッ、わしの力ではここで精一杯だぜ……わ、わたしこんな高い所は初めてで、ちょっと怖いです」
「悪いね、ダイトコちゃん……道ずれにしてしもて……もういいよー、私たちをおいて逃げてー」
「バッキャロー! てめぇらだけにいい恰好させてたまるかってんだ、最後まで付き合せてもらうぜ」
そう言ってダイトコは、フッと笑った。
それに
もしもここでレジャズベ+5を放り出してしまうと、いつ爆発するか分からないレジャズベ+5の体が落下して行き最悪、地表近くで爆発してしまったら元も子もない。
レジャズベ+5は穏やかな笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。
「さよなら、リーちゃん、みんな……リーちゃん達は忘れてしまうやろけど、オレ達は忘れへんで……あ、もうそろそろ、だな」
ビシビシッ
ズーーーーーン!
レジャズベ+5の体に亀裂が走り、大爆発を起こした。閃光が夜明け間近の町を昼間のように照らし、衝撃波が大地を揺らす。
レジャズベ+5とダイトコは跡形もなく吹っ飛び、松下家にある本体も木っ端微塵に砕け散ってしまった。
ヒエール様とペタンコ様はブラウン様の画面から目を外し、深いため息をついた。
「レイ太は体内からこみ上げてくる異常なエネルギーを感じ、決断したのであろう、みんな、よくやってくれたヴェ」
「ダイさんは最後、わざとあんな風におどけたふりをして飛び去って行ったのかのォ?」
「おかげで、子供達も泣くことなく別れることができたボ」
ダイさんが、リーちゃん達に別れも告げずに冗談を言って飛び立っていったのは、子供達を一瞬でも悲しませないため。
自分らが消えてしまった後は、すべての人の記憶から家電達の記憶が消えてしまうので悲しむ心配はない。
と、ダイさんが考えてやったのかは分からないが、おかげでみんな泣かずに……ん?
「わーん! がーちゃーん、どこ行ったんだよぉ、家燃えちゃったし、パジャマだしどうしたらいいんだよぉぉ」
サンヨーはたまらず泣き出してしまった。やっぱり子供にはこの状況は過酷すぎるようだ。東芝とソニーも唇をかみしめ、今にも泣きだしそうだ。
「ほらほら、男がめそめそしてるんじゃねえよ。オレはちょっと家を見てくるから、お前らひとまずリーちゃんの家で大人しくしてろ」
そう言っておっちゃんは、自宅のゴミ屋敷の方へ歩いて行った。
「おっちゃんの家もサンチ様が元の場所に戻されているはずダォ」
「夜が明ければ、町の住民らも戻ってくるボー、後始末は人間に任せるボ」
「さて、我らもそろそろ迎えに行くヴェ。リーちゃんの約束もあるからのう」
天界の大広間にいたヒエール様達は、何やらぼそぼそ話しをしながらどこかへ飛び去って行かれた。
はて? 「約束」と言ってもリーちゃん達は、ヒエール様のことをすっかり忘れてしまっているはず。
約束も何もないはずなのだが……?
「おおっ! 無事だっ! オレの家も無事だぞ! よっしゃぁぁ」
焼け野原になった町をトボトボ歩いていたおっちゃんは、まったく無傷な自分の家を見つけ、ガッツポーズをしながら駆けだした。
「何で燃えずに助かったのか分からんが、あれ? このいっぱいある家電はなんだ? 型はちょっと古いが新品ばっかりだ……いや、オレが運び込んだ、ぞ? 誰かと」
おっちゃんの記憶の中からも、家電達との記憶が綺麗さっぱり消えていた。おっちゃんは必死で思い出そうとオデコを人差し指でぐりぐりしながら考えた。
「……リアカー? カポカポ、デジデジ? メエェーくそっ、思い出せねえ!」
おっちゃんは気合で、おぼろげながらも地デジカと家電を運び込んだ記憶を絞り出した。しかし、あまりにも現実離れした記憶なので、夢なのか現実か区別がつかない。ヤギさんになっていた記憶も邪魔して訳が分からなくなった。
「まあ、いいや。どっちにせよオレの家の中にあるものはオレのもんだ。売っぱらって……あれ? これは?」
おっちゃんは、新品の家電の中に古ぼけた冷蔵庫、洗濯機、そしてテレビがあるのに気づいた。そう、それはヒエール様、ペタンコ様、ブラウン様。三種の神器様達の本体だ。天界に帰る前におっちゃんの家においていったのだろう。
「これは、店に展示していたものだな。店は全焼したのに、なんでこいつらここに? わ、気色悪うー」
外では人の声や、パトカーのサイレンが聞こえ始めた。町の住民が戻ってきたようだ。




