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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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152、空の彼方へ

152、空の彼方へ

 ただの冷蔵庫? 違うよ、レイちゃんはあたしがタマシールを張り付けて、しゃべれるようになって、

 それから、それから、ヒエール様と出会って、みんなで一緒に戦って、今やっと魔人オカマをやっつけた……


 「あたしの大事な友達なんだよっ」


 リーちゃんはドスドスと階段を駆け下り、玄関から外に出ようとした。が、やはりサンチ様の神技でロックされており、いくらガチャガチャやっても開かない。


 「あーもうっ」


 悔し(まぎ)れにドアをバーンと叩き、玄関横の部屋に行ったリーちゃんは、カーテンをめくって外を見た。

窓の外、地面にうずくまっているレジャズベ+5の表情は苦しそうに(ゆが)み、とても辛そうだ。


「レジャズベちゃん! しっかりして! 五重丸! 最後は全員助かるシナリオになってるんでしょっ!」

 「リーちゃん、すまない。今回のシナリオ、ハッピーエンドは無しだ」

 「そ、そんな……」

 「まさか幽体のレジャズベに、タマシールがこんなにしっかり張り付くとは思わなかったよ。大チョンボだ」


 五重丸は、レイちゃんにタマシールを貼り付けさせ、魔人オカマのタマシールを追い出した後、自らも()がれ、消え去ろうと考えていたようだ。


 「魔人オカマが最後に言ってたことの意味が分かったよ。結局ぼくらは消えてしまう運命だったんだ」

 「ダメーッ! 絶対ダメーッ」

 「五重丸ドッキリなんだろ?」

 「いい加減にテッテレー♪って看板出せよっ」


 知らない間にリーちゃんの後ろには、みんなが集まり口々に声援を送っている。

 その声を聞いたレジャズベ+5はプルプルと震えながら体を起こし、精一杯の笑顔で答えた。


 「リーちゃん、みんな、心配してくれてありがとう‥…悲しいけど所詮オレ達は家電製品、ずっと友達でおられへんねん‥…そうなのー壊れてしまったらおしまいなのー……キューン」


 ふたたびレジャズベ+5はバタッと倒れて動かなくなってしまった。

近くにいたダイトコが(ひざまず)き、顔を寄せるとレジャズベ+5は弱々しく手を動かしながら、一言二言何か話しているようだ。


 「ボ、ボクはもう飛ぶことはできない……だから……」

 「おぅ、分かった、まかせとけ……承知しました」


 ダイトコは、倒れているレジャズベ+5をおんぶしてスッと立ち上がり、リーちゃん達の方を見てピースサインをした。


 「リーちゃん、ミーちゃん、東芝、ソニー、えーっと後、誰だっけ」

 「オレだ、サンヨーだよっ! お前っわざとだろ」

 「ヘヘッ、バレちまったか。おめえら、短い間だったけど楽しかったぜ……お役に立てたか分かりませんが、わたしも楽しかったです」

 「ちょ、ちょっと何言ってんのよ」

 「じゃあな、シュワッチ!」


 そう言ってダイさんはぎこちないウインクをし、ウルトラマンのような掛け声を発しながら、夜空へと飛び去ってしまった。


 「あー行っちゃったよ、どこに行ったんだろ」

 「ヒエール様のところじゃないかな? タマシールを何とかしてもらうのにさ」

 「で、でも、もうお別れみたいな事言って……」

 「家内安全! イェーイ」

 「へ?」


 突然サンチ様の声が響き渡った。すると部屋の壁が鋼板のように変化し、リーちゃん達は中に閉じ込められた。


 ボーン! バババーーン!


 リビングや洗面所の方から大きな爆発音が聞こえ、驚いたリーちゃん達は床にうずくまった。


 「何? 何が起こってるの?」


 ビリビリビリ……ズーーーーーン!


 「うわー! 地震だぁ!」

 「キャーッ! いやぁぁー」


 今度は空気が震え、立ち上がれないほどの大きな揺れが起こった。リーちゃん達は悲鳴をあげ、部屋の真ん中に身を寄せ合い、頭を抱えた。

 激しい揺れにもかかわらず家具は倒れない。いやそれどころかタンスの上に置いてある写真たてさえも倒れようとしない。サンチ様の神技の効果か?


 長く感じたが時間的にはわずか十数秒、地震のような揺れは治まり、リーちゃん達はゆっくりと顔を上げて様子をうかがった。


 「あーびっくりした、すごく揺れたねえ」

 「ホント、死ぬかと思ったー……? ところであんた達、何であたしの家にいるの」

 「あ? えーっとなんでだろう。みんなで遊んでた? いや、何かすごい事になってさ、それで……」

 「サンヨー、おまえ何でパジャマみたいな服着てんだよ」

 「みたいじゃなくってパジャマだよ、あれ? オレパジャマで出かけた?」

 「いくらお向かいの家でも失礼過ぎない?」

 「しょうがないだろ、オレの家燃えちゃったし……えっ? 燃えた? 家が?」


 いつの間にか壁も元通りになり、玄関や窓も開くようになった。我先にと外に出たリーちゃん達の目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。

 辺り一面焼け野原となった町に、ポツンと無傷の松下家。


 「みんなどこに行っちゃったんだろ、お母さんは? お父さんは?」

 「この景色見たことあるぞ? ついさっき、あー思い出せない!」


 リーちゃん達の記憶の中から、レイちゃんら家電達のこと、ヒエール様以下三種の神器様達のこと、そして魔人オカマと戦ったことなどの記憶がきれいさっぱり消えてしまっていた。

 リーちゃんは不安に押しつぶされそうになり、ミーちゃんに抱き着き泣き出してしまった。

 そして松下家の室内に目をやると、部屋の中には洗濯機や液晶テレビ、それに冷蔵庫がなぜか2台、あと炊飯器や扇風機、掃除機とかが、無傷の家の中でぐちゃぐちゃに壊れて転がっている。


 東の空が徐々に明るくなってきた。

 リーちゃんと家電達の長い夏の一夜が終わろうとしている。


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