151、サンチ様のえこひいき
151、サンチ様のえこひいき
町はずれに身を隠していたサンチ様が、相変わらず陽気な笑い声を響かせ、突然駐車場にズーーン! と現れた。
いきなりだったのでみんなビビったが、現れたのがサンチ様だと分かり、リーちゃん達はドドーッと駆け寄った。
「サンチ様ぁ! やっつけたよ、魔人オカマをやっつけたよ!」
「見せたかったな、オレ達のかっこいいところ」
「そうかそうか、よくやったイェイ。さあみんな入るイェイ」
サンチ様はそう言って玄関のドアを開き、みんなを招きいれた。
「サンチ様、ほらオレの家、元の場所に戻すの忘れないでくれよ」
おっちゃんは適当に置かれほったらかしになっている自分の家が心配になり、サンチ様に訴えた。
「了解じゃイェイ。さあ、おっちゃんも入るイェイ」
全員が中に入ると、玄関ドアがバタンと閉まる。みんなが2階のリビングに上がると、そこには買ったばかりの50インチ液晶テレビ……五重丸が穴だらけになって倒れていた。
魔人オカマの攻撃で五重丸が倒れたその時から、新しいタマシールで再び五重丸の魂が定着されるその間、五重丸に関する記憶が飛んでしまっているリーちゃん達は、何でこんなことになっているのか分からず、悲鳴を上げた。
「キャーッ! テレビが、五重丸がボッコボコに? 何で?」
「おかしいよ、本体が壊れたら家電達は死んでしまうんじゃないの?」
「ちょっと待てよ、何か忘れているような、オカマをどうやってやっつけたんだっけ」
やっとこさ魔人オカマをやっつけたというのに、その記憶が所どころおかしい。そう思ったリーちゃんは、レイちゃん達の状態を確かめようとカミテレコンを取った。
「あ、あれ?」
リーちゃんはカミテレコンを見てみた、が、手触りがいつもと違ってふにゃふにゃしている。裏についていたボタンなどもなくなり、普通のリボンにしか見えない。
「変だな、壊れちゃったのかしら」
「リーちゃんよ、故障じゃないヴェ」
「あっヒエール様? 故障じゃないなら何なの?」
突然ヒエール様の声が聞こえた。その声はカミテレコンからではなく、サンチ様を介した神眼コンタクトでリーちゃん達の心の中に話しかけた。
「よくぞ魔人オカマを倒してくれた。あっぱれぱれぱれじゃヴェ」
「ヒエール様、見える? ほら、ボタンも無くなってふにゃふにゃに」
リーちゃんはそう言って、手に持ったカミテレコンを振り回した。
それを聞いたヒエール様は、申し訳なさそうな声で答えた。
「リーちゃんよ、カミテレコンは壊れたのではなく使えなくなったのじゃヴェ、レイ太らを見てみるがよい」
「えっ?」
リーちゃん達がベランダの窓から外を見てみると、さっきまで元気そうだったレジャズベ+5が地面に膝をつき苦しそうにしている。
「きっとバタンキューになりかけてるのよ、早く戻してあげないと」
リーちゃんは、窓を開けて外へ出ようとした。が、窓が開かない。鍵がかかっている訳でもないのにビクともしないのだ。
「神技『外出禁止』じゃイェーイ」
サンチ様が神技「外出禁止」で家中の窓やドアを固め、外に出られなくしたのだ。こうなってしまうと人どころかハエ一匹さえも出入りすることはできない。
「クソッ! それなら仕方ねえ」
サンヨーは窓をたたき割ろうとアイスブレードで斬りつけた。が、その瞬間、アイスブレードはフッと消えた。
勢い余って窓にぶつかりコケたサンヨーの体から戦闘スーツも消え、サンシャインレッドからパジャマ姿のサンヨーに戻ってしまった。
サンヨーだけではない、それを見ていたリーちゃん姉妹と東芝、ソニーの戦闘スーツも消えて私服の小学生に戻ってしまった。
「魔人オカマを倒した今、もうスーツも武器も必要なかろう。返してもらうヴェ」
「なんだよ、くれたんじゃなかったのかよ、ケチ」
「レイちゃーんしっかりしてっ、ヒエール様っ! レイちゃん達を助けてよ!」
リーちゃん達は窓ガラスをバンバン叩いてヒエール様に訴えた。
「リーちゃんよ、残念じゃがレイ太らはもう助からないヴェ」
「た、助からない? 何でよ!」
「どういう経緯か分からぬが、レイ太らはタマシールを手に入れ、それを自分らの体に貼りおったのじゃヴェ。前にも言ったと思うがタマシールを2枚貼ると……」
「爆発? 爆発するって言うの?」
ヒエール様の話を聞き、リーちゃんは窓ガラスにへばりついたままガクッと崩れ落ちた。
「そんな……ひどい……何とかしてよっ、あんた神様でしょ! タマシール剥がしてレイちゃん達を人間にしてあげて! 電気釜さんを連れ戻したらご褒美くれるって言ったじゃない!」
「すまぬ、それはできないのじゃヴェ。サンチ殿に汝らをえこひいきで守ってもらうのが我らが出来る精いっぱいじゃヴェ」
「オレ達DSも何もいらないから、その代わりに人間にしてやってくれよぉ」
「レイちゃんやダイさんは大切な友達なんだ、頼むよー」
リーちゃんら子供たちは、必死でヒエール様にお願いをした。その叫び声は外で倒れているレジャズベ+5とダイトコちゃんにも届き、レジャズベ+5は最後の力を振り絞り、ダイトコの肩を借りて立ち上がった。
「リーちゃん、みんな、心配してくれてありがとう。でも……ボクは……」
「グスッ……?」
「ただの冷蔵庫や」




