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第6話:「水面下の交渉と、最初の『契約』」

第6話をご覧いただきありがとうございます!


松岡物産の幹部たちを完全な詰み状態へと追い込み、年間五千万円の裏コンサルタント契約を結ばせた治臣。圧倒的な交渉力と冷徹な手腕で、自らの絶対的な基盤を作り始めていきます。

逆らう者を容赦なく服従させる治臣の「悪辣にして華麗なビジネス」の第一歩をお楽しみください!

都内の一等地に佇む、完全会員制の高級料亭。洗練された日本庭園を臨む離れの個室に、重苦しい静寂が満ちていた。


畳の上に座布団を敷き、膝を折り揃えて座っているのは、松岡物産の常務取締役をはじめとする幹部たち数名だ。彼らの額からは脂汗が滲み、顔色は土気色に変色している。目の前の座卓に置かれているのは、治臣が用意させた一枚の薄いタブレット端末だった。


その画面には、彼らが長年ひた隠しにしてきた暗部――政治家への違法な献金ルート、他社製品の不正な盗作設計図、そして今回西園寺グループへ仕掛けたハッキングの全通信ログが、事細かにリストアップされていた。


「こ、これは……一体どこで手に入れたのだ……!?」


常務の男が震える声で絞り出す。彼らの視線の先に座っているのは、西園寺グループの総帥・重光ではなく、その傍らで優雅に茶を口に含む若い御曹司、西園寺治臣だった。


「どこで、などは重要ではありません」


治臣は茶碗を静かに座卓へ置くと、洗練された動作で足を組み直し、冷徹な双眸で役員たちを見つめた。


「重要なのは、このデータが今この瞬間にでも、検察庁および主要報道機関へ送信できる状態にある、ということです。もしこれが公になれば、松岡物産という名が社会から消滅するのに三日もかからないでしょう」


「ひっ……!」


幹部の一人が短い悲鳴を上げた。彼らが西園寺グループの技術を盗もうと画策した結果、逆に自らの喉元に刃を突きつけられる形になったのだ。自業自得とはいえ、その手際の鮮やかさと一切の隙のなさに、彼らは目の前の青年に言い知れぬ恐怖を覚えていた。


「わ、わかりました……! 我々の敗北です! どんな条件でも飲みます! 損害賠償と和解金として……そう、年に五千万円をお支払いします! ですから、どうか手を開けていただけますか……!」


常務は床に額を擦り付けんばかりの勢いで頭を下げた。


治臣は口元にうっすらと微笑を浮かべた。前世の自分が、どれほど頭を下げても、どれほど涙を流して乞うても、親戚や債権者たちは一切の容赦をしなかった。しかし今、力を持つ立場となった自分の一言で、かつて見上げるような大企業の幹部たちが必死に許しを請うている。


世の中は実にシンプルだ。力がある者が制し、力がない者が虐げられる。それだけの話なのだ。


「ええ、いいでしょう。提示された年間五千万円という額で示談に応じます。……ただし」


治臣は一呼吸置き、声を一段と低く沈めた。


「それはあくまで表向きの取り決めです。裏では、貴社の情報漏洩対策およびリスクマネジメントとして、私個人がコンサルティングを行います。その『個人的な指導料』として、年間五千万円を私の指定する口座へお支払いいただく。……よろしいですね?」


「コンサルティング料……? 個人口座に、ですか……?」


「不満ですか?」


治臣の鋭い眼光が射抜くように注がれると、幹部たちは背筋に氷を叩きつけられたように身震いし、慌てて首を横に振った。


「い、いえ! 喜んでお支払いいたします! 異論はございません!」


「賢明なご判断です」


治臣は満足そうに微笑み、タブレットを引き寄せた。


「これで交渉成立です。今後は我が西園寺の良き『パートナー』として、せいぜい真面目に事業へ励んでください」


料亭を後にし、黒塗りの高級リムジンの後部座席に収まった治臣は、流れる夜景を静かに見つめていた。


松岡物産との契約は、単なる始まりに過ぎない。彼らのように弱みを抱えた企業、あるいはセキュリティに不安を抱える企業は、この業界にいくらでもあるのだ。


(年に五千万円……。これを数十社と結べば、年間数十億の資金が誰にも知られず私の手に転がり込む)


西園寺グループの資産とは別に、自分だけの絶対的な隠し口座を作ること。それが、前世の貧困というトラウマに対する、彼なりの完全な回答だった。


治臣の胸の内で、静かな野望がさらに大きく膨らんでいくのだった。

第6話「水面下の交渉と、最初の『契約』」をお読みいただき、ありがとうございます!


前世の理不尽な絶望を知るからこそ、相手の弱みを完璧に握り、自分に有利な状況を一切の情け容赦なく作り上げる治臣。ただの「いい子ちゃん」ではない彼の凄みが存分に発揮された回となりました。

次回、第7話では、この「契約」がさらに拡大し、四十五社を巻き込む年間二十二億五千万円という途方もない裏金ネットワークへと成長していく過程が描かれます。どうぞご期待ください!

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