シーズン2 第1話:黄金の鎖と、二つの顔
読者の皆様、大変お待たせいたしました!
『没落貴族から大企業の御曹司に転生した俺、前世の知識と裏工作で裏金(年22億円)を稼ぎつつ、冷徹な婚約者を捨てて純愛を掴み取る』待望のシーズン2がスタートします!
シーズン1では、前世の知識と圧倒的な裏工作スキルを駆使し、表向きは「冴えない御曹司」を演じながら、年間22億円という途方もない裏金ネットワークを構築してきた晃。そして、闇から救い出した最愛のメイド・結衣との絆を深めてきました。
シーズン2の開幕となる第1話では、冷徹な高慢婚約者・西園寺エリザとの対決がいよいよ本格化!
表では従順な婚約者の振りをしつつ、裏ではすでにエリザの実家である西園寺グループの喉元に刃を突きつけている晃。高慢なエリザをどん底へ叩き落とし、結衣との真の自由と純愛を掴むための「第二幕(反撃編)」がここから始まります。
権謀術数が渦巻く華麗なる逆襲劇を、どうぞ最後までお楽しみください!
「——一条晃様、今年度の『調整金』、予定通り完了いたしました」
重厚なオーク材のデスク越しに、男が恭しく頭を下げる。差し出された暗号化端末の画面には、常人なら眩暈を覚えるような数字が並んでいた。
2,200,000,000円
「ご苦労。相変わらずの手際だな」
俺——一条晃は、グラスのウイスキーを傾けながら冷徹な笑みを浮かべた。
表の顔は、国内有数の巨大財閥「一条グループ」の気弱で冴えない若き御曹司。だが裏の顔は、前世である「没落貴族」時代の泥臭い知略と政財界の弱みを握る暗黒のネットワークを駆使し、巨額の裏金を動かす影の支配者だ。
前世の貴族社会で俺が学んだのは、「清廉潔白では誰も守れない」という過酷な真実だった。力なき善はただの無能。大切なものを奪われないためには、圧倒的な資本と、誰も抗えない裏の支配力が必要不可欠なのだ。
俺はその教訓を胸に、転生後のこの世界でも着実に「裏の帝国」を築き上げていた。年間22億円。この誰も追跡できない巨額の暗黒資金こそが、俺がこの世界で無敵でいるための武器だった。
「……晃様、お飲物の準備が整いました」
静かなノックとともに部屋に入ってきたのは、可憐なメイド服に身を包んだ少女——白石結衣だ。
彼女は一条家の元使用人の娘。かつて親の作った借金により、闇組織に売り飛ばされそうになっていたところを、俺が前世の裏工作技術をフル活用して救い出した。それ以来、彼女は俺の専属メイドとして、そして何より俺が唯一「本当の自分」を見せられる心の拠り所となっていた。
「ありがとう、結衣」
端末の画面を素早く消去し、俺は柔らかな笑みを向ける。結衣は洗練された手つきで紅茶をカップに注ぎ、そっと俺の傍らに置いた。
「また遅くまでお仕事ですか? あの……お体、無理なさらないでくださいね」
結衣の透き通った瞳には、純粋な心配の色が宿っていた。
表向きの婚約者である西園寺エリザからは、「一条家の男として恥をかかせるな」「使えない男」と冷たい言葉ばかりを投げつけられてきた俺にとって、結衣の温かな気遣いは何よりも心地よかった。
「結衣が淹れてくれた紅茶があるからな。これさえあれば、どんな疲れも吹き飛ぶよ」
俺がそう言って微笑むと、結衣はぽっと頬を赤らめ、恥ずかしそうに視線を落とした。
「も、もう……晃様は、いつもそうやって私をからかわれて……」
「からかってなどいないさ。本心だ」
俺は彼女の華奢な手に、そっと自分の手を重ねた。結衣は一瞬身体を強張らせたものの、拒絶することなく、申し訳なさそうに俺の手を握り返してきた。
(冷徹で高慢なエリザとの政略結婚を破棄し、この純粋な結衣との幸せを掴む。そのためにも……俺はこの手を生み出す裏金で汚し続ける)
その時、デスクの上に置いていた「表」のスマートフォンが、無機質な振動音を響かせた。画面に表示された名前に、俺の瞳が冷たく光る。
『西園寺エリザ』
「……俺の可愛い婚約者様のお出ましだ」
雰囲気が一変したのを感じ取った結衣が、すっと表情を引き締めて手を引き込もうとする。俺はその手を優しく引き留め、スピーカーモードで通話ボタンを押した。
『……晃? 今どこにいるの』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、氷のように冷たく高圧的な声。西園寺グループの令嬢であり、俺を所有物として見下す女だ。
「部屋で書類の整理をしていたところだよ、エリザ。こんな夜遅くにどうしたんだい?」
俺は意識して、少し気弱な「愚鈍な御曹司」の声を演じる。
『明日の一条・西園寺両グループの合同パーティのことよ。あなた、まさかまたあの冴えない挨拶をするつもりじゃないでしょうね? 私の顔に泥を塗ったら承知しないわよ』
「善処するよ。でも、俺は父さんの敷いたレールの上を歩いているだけだから……期待されても困るな」
『本当、情けない男ね。あなたが一条家の長男じゃなかったら、視界にすら入れないわ。……それと、またあの貧乏臭い使用人の娘を近くに置いているそうじゃない?』
エリザの声に強い侮蔑が混ざる。結衣の肩が小さく震えた。俺は結衣の手を強く握り締め、大丈夫だと目配せする。
「結衣のことか? 彼女は優秀なメイドだよ。エリザが気にすることじゃない」
『不愉快よ。私の婚約者がそんな低級な人間を侍らせているなんて。明日のパーティが終わったらすぐに追い出しなさい。いいわね?』
「……考えるよ」
『返事は「ハイ」だけでいいの。じゃあ明日、遅れずに来ることね』
一方的に電話が切れる。静寂が戻った部屋で、結衣が申し訳なさそうに頭を下げた。
「晃様……申し訳ありません、私のせいで……」
「頭を上げてくれ、結衣。お前が謝る必要は一切ない」
俺の口元には、エリザには決して見せない凶悪な笑みが浮かんでいた。
「エリザは明日、自分がこの世界の中心にいる気取りで会場に来る。だが……彼女が誇る西園寺グループのメイン事業、あれの資金繰りを裏で支えているのが誰か、彼女はまるで分かっていない」
俺は「裏」の端末を操作し、西園寺グループの粉飾決済データと、海外ダミー会社を経由した買収資料を表示させた。
西園寺家は華々しい巨大IT企業だが、その実態は歪な砂上の楼閣。そして、その首輪を実質的に握っているのが、俺の作ってきた「年22億円の裏金ネットワーク」なのだ。
「明日から始まるシーズン2では、あの高慢な女をどん底に叩き落とし、俺たちの本当の自由を手に入れる。……結衣、俺についてきてくれるか?」
「はい……! 晃様となら、どんな暗闇の中へでも!」
結衣は涙を浮かべながら、深く深く頷いた。
俺は彼女を優しく抱き寄せ、窓の外に広がる眩い夜景を見下ろした。
没落貴族の逆襲劇、その第二幕が今、静かに幕を開ける。
第1話をお読みいただき、ありがとうございました!
高圧的な態度を崩さないエリザと、裏で着々と「西園寺家詰み」の盤面を作り上げている晃の温度差を楽しんでいただけていれば幸いです。22億円の裏金パワーと前世の暗黒智略が、ついにエリザとその実家へと襲いかかります。
そして、健気に晃を支える結衣ちゃんとの甘い(?目論見の詰まった)純愛の行方にもぜひご注目ください!
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次回、第2話「華やかな宴と、張り巡らされた罠」。
合同パーティの会場で、晃の罠が静かに動き出します。どうぞお楽しみに!




