おまけ1
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世界を裏から動かす最強のハッカーである治臣が、愛する妻の「幻の苺タルトを食べたい」という願いを叶えるためだけに、国家機密レベルのサイバー技術を全力で無駄遣いする甘々コメディ回です。最強の主人公の圧倒的すぎる愛の暴走をお楽しみください!
休日の昼下がり。西園寺家の広大なリビングで、英美里はスマートフォンを見つめながら、ひどく落ち込んだようにため息をついた。
「どうした?」
隣で分厚い洋書の経済専門書を読んでいた治臣が、視線を上げずに尋ねる。
「あのね、銀座の有名なパティスリーが、今日からネット限定で『幻の苺タルト』の予約を受け付けていたんだけど……開始一秒でサーバーがダウンして、復旧した時にはもう完売だったの。ずっと楽しみにしていたのに……」
その言葉を聞いた瞬間、治臣のページをめくる手がピタリと止まった。
愛する妻の小さな悲しみ。それは、彼にとって世界の経済危機よりも優先して解決すべき重大インシデントに他ならない。
「……五分だけ待っていろ」
治臣は本を閉じると、静かに立ち上がり、最奥のプライベート・ラボへと姿を消した。
ブルーライトに照らされた室内で、治臣は冷徹な眼差しでキーボードを叩き始める。標的は、銀座のパティスリーの脆弱な予約サーバーと、そこに群がる無数の転売屋の自動購入プログラムだ。
「愛する妻のタルトを、小賢しい転売屋どもに奪われるわけにはいかない」
治臣は自ら構築した裏のネットワークと「アルカトラズ・プロトコル」の技術を、たかがケーキ一つの予約のために容赦なく発動させた。数千もの転売用botのIPを瞬時に特定してブラックリストへと放り込み、パティスリーのサーバーを保護する独自の暗号バイパスを構築。さらに、決済システムの裏口から直接アクセスし、キャンセル待ちのトップ枠に「西園寺英美里」の名前をねじ込んだ。
わずか三分後。
リビングに戻ってきた治臣は、何食わぬ顔で再びソファに腰を下ろした。
「英美里。もう一度、君のスマートフォンのメールボックスを確認してみてくれ」
「え? メール?」
不思議そうに画面をリロードした英美里は、目を丸くして立ち上がった。そこには『不正アクセスによるキャンセル分が出たため、特別枠でご予約を確定いたしました』というパティスリーからの公式通知が輝いていたのだ。
「うそ、どうして!? 治臣さん、魔法でも使ったの!?」
「ただの運だよ。君がいつも頑張っているご褒美だろう」
国家機密をハッキングできるレベルのサイバー技術を「ただの運」で片付け、治臣は涼しい顔で紅茶を一口すする。世界を牛耳る絶対的な力は、今日もこうして、愛する妻の笑顔と甘いタルトのためにひっそりと無駄遣いされているのだった。
おまけエピソード「幻の苺タルト事件」をお読みいただき、本当にありがとうございました!
全14話の外伝シリーズに続き、最後にほんの少しクスッと笑える日常の一コマをお届けしました。どんなに強大な敵をも一瞬で葬り去る治臣ですが、英美里の小さなお願いの前では最強のチート能力がすべて「愛妻家のご近所トラブル(?)解決」に使われてしまう、そんな二人の温かくもシュールな日常を感じていただけたなら幸いです。
これにて完全完結となります。これまでお付き合いいただき、心より感謝申し上げます!




